第32話〜幻・魔導〜
〜〜〜
三時間ぐらいは歩いたかな?
あたしは鬼ヶ島の険しい道を歩きながらそう思った。アズト・ミタラの報告書の道順に因れば、先ほど抜けた平原の少し先に大きな門があるということだったが・・・
森が長い!
どれだけ歩けば森を抜けるの?
生き物も何も居ないし。
そんなことを思っていると、
「姫、この方向で間違いないのでしょうか?」
ガロウが此方に尋ねてきた。
「多分」
「そ、そうですか・・・」
そう答えるも、この方角で本当に合っているのか?と歩きながら自問した。
「あれ?神官隊は?」
そして、振り返ったときに妙に人数が少ないことに気づいた。
ニルナ・カナワも居ないし。
「かなり後方に居ます」
ガロウは苦々しい顔をして言った。
「?歩くのが速すぎたかな?」
「・・・それもあります。それに神官長は連日の任務で御疲れでしょうし」
そういえばナシラは疲れていたのかあまり喋って無かった気がする。
「今のところ、生き物は居ないけど・・・後方の神官隊が鬼族と遭遇したら危険じゃない?」
「・・・大丈夫でしょう。奴が付いてますから」
奴?と思ったが、
ああと合点した。
ガロウは何だかんだ言いながらニルナ・カナワの強さは信頼してるのね、と
「まあ、方向が正しいのならこのまま進みましょう。鬼族と遭遇するかと思っていたので拍子抜けではありますが」
と、ガロウは言った。
・・・貴方は鬼族と戦いたいの?
あたしは口に出さずに思った。
「鬼族とはなるべく逢いたくはないけどね・・・無理でしょうけど」
腰に差した宝刀クニツナを見ながらあたしはそんなことを呟いた。
〜数百m後方〜
「カナワ殿はカリュウ村出身だったかのう?」
神官長ナシラ・カンダリは他の神官七名とニルナ・カナワと共にゆっくりと歩きながら喋っていた。
「そうです。格闘大会の優勝を機にカグツチで暮らし始めました」
ニルナ・カナワは淡々と答える。
「ほう。それで、今は仕事は何を?」
「主に口入屋の任務で生計を立てています」
「ふむ。あれほどの腕ならば・・・等級は甲の下から甲の中といったところかの?」
「そうです。私の今の等級は甲の下です」
やはり淡々と答える。
あまり面白くないので。ここは・・・
「ところで、カナワ殿は今18歳だったかのう?」
「ええ。そうです・・・?何故急に歳を?」
「いや、なに。結婚とかは考えておらんのかの、と思って」
「!?・・・・・・・・・いえ、今の私は修行中の身ですので・・・」
「ほほう。では恋人なども居らんということかの?」
「・・・・・・カンダリ神官長殿。この場で私的なことを答える必要があるのでしょうか?」
冷静に突っ込まれた。
「い、いや。それはないが。だが、恋人の1人ぐらいは居りそうだがのう・・・」
「居ません・・・!」
そんな怖い目で見ずとも・・・
怖いので儂はこれ以上この話題を続けるのをやめた。
「それにしても、姫様達は歩くのが早いのう」
そして、前を見ながら誤魔化すようにそう言った。
〜〜〜
悪魔・・・?
私がその者の姿を見てまず思ったのは伝承の絵巻物にあるものだった。
ランザーの話だと魔導王ゲン・マドゥは絶大な魔力を持ちあらゆる魔法を使いこなす、とのことだったので実際この目で見るまでは僅かな記憶にあるあの者のような姿を思い浮かべたが・・・
ミシェール・オルレアンは大量の屍の向こうに存在する者の姿を見てそんな印象を受けた・・・
「ランザーよ。何のつもりかの?」
その悪魔が、私が便宜上一時的に手を組んでいる獅子に話しかけた。
嬉しそう・・・に・・・?
「同盟破棄だっ!」
獅子は簡潔にそう言った。
「ふむ・・・まあそうだろうの。我の作品をそんな風に打ち捨てておるからの」
と、来る途中に私が薙ぎ倒してきた先ほどまで動いていた骸骨兵の残骸を見ながら言った。
それを挑発のつもりで獅子がこの部屋に投げ入れたのだが・・・
「はんっ!歯ごたえのねえやつらだったぜっ!ゲンよっ!あとはお前だけだっ!」
獅子が悪魔にそう言うと、
「ふふふ。我がすぐに崩れ去るようなちゃちな不死兵を造ると思うその浅はかさ・・・やはり獣よの」
「なんだとっ!てめえっ!」
「しかも、城内に散らばって配備しておいたものをわざわざ此処まで持ってくるとは・・・・・・
蘇れっ!不死闘魔魂!」
・・・!
悪魔がそう叫ぶと、倒した筈の骸骨兵の残骸が動き出した。
「なっ」
「・・・!」
驚いて獅子と私が身構えていると、
「こいつらにはランザーの相手をさせておくとして・・・・・・お主はいったい何者じゃ?」
悪魔がそう言いながら私のほうへ向きなおった。
「ちっ!ミシェール!骸骨共は俺がやってやらあっ!」
と、悪魔と私が相対するのを見て、獅子ランザー・レオパルドは数十体の不死兵の中へ飛び込んだ。
「・・・私は人間だ・・・」
悪魔の問いに私が答えると、
「ほう?そのような魔力を持ちながら人間とは・・・変わった者よのう。それにその得体の知れぬチカラ・・・闇騎士のような?お主、何処からやってきた。火の大陸か?」
?何故そのようなことをこの悪魔は私に問う・・・闇騎士とやらは火の大陸の者なのか・・・
「・・・私はウォルス王国騎士、ミシェール・オルレアン・・・!貴様に恨みはないが我が本懐を果たすため貴様を討ちにきた者だ・・・!」
「ほう、我をのう・・・・・・?ウォルス?何処かで聞いた名前かと思えば・・・」
「・・・貴様、我が国を知っているのか・・・?」
「知っている。とは言っても一度向こうから接触してきたきりだがの。王と名乗っていた者が」
「・・・!?・・・どういうことだ・・・?」
騎士道の精神や今は亡き主への忠誠心は残っている私は我が王が何故この闇の大陸の悪魔に接触したのか、そしてどのような手段を用いたのか見当もつかなかった。
あの日、私が護れなかった王がそんなことを・・・
「さあの。それきりになったからの。・・・その様子だとお主はそのことで闇の大陸に来たわけではなさそうだが・・・」
と言いながらあたりに手を翳している・・・?
「・・・ああ。その話は初耳だ・・・私は追ってきたのだ・・・我が祖国を滅ぼした魔神。そして魔導の使い手を・・・!」
「魔神?魔導の使い手?そのような者が態々ウォルスまで?・・・納得のいかん話だのう」
「・・・事実やつは我が国へ来た・・・!来て蹂躙したのだ・・・国も人も町も・・・!
あのデュカ・リーナが・・・!!」
「!・・・デュカ・リーナ!?生きておったのか?我が光を喰らって?・・・いや、まさか・・・」
私が憎しみを込めてデュカ・リーナの名を言うと、悪魔は何故か困惑し始めた。
そして・・・奴の魔力が高まっているような・・・?気のせいか・・・?
「・・・貴様、知っているのか?あの悪鬼を・・・?」
「知っておる。いや、知っておったと言うべきか・・・・・・ちなみにお主が見たデュカ・リーナはどのような姿をしておった?」
「・・・人間の少女のような・・・」
「少女?そんな筈は・・・・・・!もしや禁断の魔法を」
「・・・禁断の魔法・・・?」
「・・・ということはつまり魔力や力は・・・奴ならば転送魔法を使い素の血に居る狼も・・・我と接触しようとした人間も滅ぼすのも・・・全て・・・我らへ・・・」
悪魔が何かに気づいたように言ったかと思えば一人で何事か喋りだした。
「・・・おい貴様。奴について何か知っているのか・・・?」
「・・・そうだの。おそらく奴の肉体は別人の者だということ。そしていずれは・・・・・・いや、やめておこう・・・」
「・・・なんだ。何を言っている・・・?」
「いや、お主は知らなくとも良いことだ。それに、」
・・・?なんだ?魔力の奔流・・・?
「時間稼ぎは終わったからのっ!悪魔光!」
「・・・っ!魔導か・・・!」
ズドドドドドッ!
そう気付いた瞬間四方八方から魔力が込められた光のようなものが私へ向かって飛んできた・・・!
バーーーンッ!!
そして私へ当たると同時にその光は爆発した・・・
~~~
「・・・いくら魔力が高くてもあれを喰らえばひとたまりもあるまいて」
ゲン・マドゥは立ち昇る爆煙を見ながらひとりごちた。
「だが、時間稼ぎの為の会話とは言え有意義な情報を得ることができたのう・・・鬼婦神がロストマジックを使い、しかも100年前の・・・!!」
そこまで言ったところで先ほど己の魔法を喰らった筈の人間の魔力と何かの力が急激に増大するのを感じた。
「・・・剛剣技、断鎧・・・!」
ズバンッ!
ぼとっ
「グオオッ!」
何かを呟く声が聞こえ、衝撃とともに己の左腕が吹き飛ばされていた。
爆煙の中から、
「・・・不意打ちとはな・・・人外の輩は余程人間を陥れるのが好きとみえる・・・」
そう呟きながら現れた人間の騎士の姿があった。
あれを喰らって無傷・・・?
「・・・策略、と言ってもらえるかの?それにお主も我の見えないところから不意に攻撃してきたのではないかの?」
「・・・物は言いようだな。それに煙を巻き起こしたのは貴様だ・・・!」
「そうか。それと、どうでもよいがランザーのところへは手助けに行かんのかの?」
離れた場所で我が不死兵共とランザーが戦っているのを横目に見ながら言うと、
「・・・構わん。それに貴様は見た目通り危険なので私が此の場で抑える・・・!」
「ほう。それならば久々に全力でも出そうかの」
「・・・その腕で、か・・・?」
「こんなもの・・・フッ!」
ドシュッ
魔族特有の超速再生により吹き飛んだ腕を元に戻した。
・・・?何か違和感が?気のせいかの・・・?
「・・・やはり悪魔だな・・・」
「悪魔とはの・・・・・・そのとおりだがのっ!」
我は魔界で過ごしていた頃のように魔力を全開にした。
「・・・膨大な魔力を感じる・・・だが・・・!」
と、人間の騎士も我と同じく魔力を高めた。それに・・・?
「・・・我がチカラ、受けてみるがいい・・・!」
「お主のチカラはいったい・・・?」
得体の知れないチカラも魔力と併せてどんどん上がっていく?
「・・・大剛剣・・・!」
そんな声が聞こえると同時に眼前に巨大な剣が迫っていた。
~~~
鬼丸・・・鬼族に伝わる伝説の刀。
魔力が秘められた刀。
かつて鬼族ではなく本当の鬼と呼ばれる種族を斬ったとされる刀。
鉄や銀を斬っても刃こぼれ1つしないと言われる刀。魔法や幻で幻惑しようとも惑いなく目標を目指す刀。そして、刀に認められた主は全ての生物と意志疎通ができるとされる刀・・・
その逸話がどこまで本当か真偽の程は定かではないが、250年と少し前に少なくともその刀の主が言葉が通じない筈の生物と意志の疎通が出来ていたことを思いだし、フェニス・カハラは項垂れていた。
「はあ。神獣が・・・」
私はいっそのこと神獣を何処かへ持ち去ろうと考えた。
「いや、それこそ危険だ・・・」
と、考え直した。
「しかし、考えようによっては取引に使えるのではありませんか?」
「ノルエル?貴様は何を言っている?
私が項垂れていると、ノルエル・ハザマがそんなことを言った。
「ですからこの際此方から神獣を渡してですね、」
「ノルエル、貴様!」
「最後まで聞いて下さいフェニス様。これは好機と言えるかも知れませんよ」
「?・・・話してみろ」
「はい。というのはですねーーーーーー」
私はノルエルの話を聞いて侵入者への対応は誰が一番良いかを考えた。
〜〜〜
「俺が風の大陸に?」
俺はフェンと飯を食いながら話していたのだが、フェンが不意に俺に風の大陸に来ないか、と言ってきた。
「ああ。トウヤの持つそれ・・・俺の里では選ばれた者にしか持てないと言われているんだ」
フェンが俺の持つ炎斬と水渇刀の二刀を見ながら言うが。
「でも、なんでまた?いや、そもそも風の大陸にも何か言い伝えみたいなものがあるのか?」
「言い伝え?ああ、あるぞ。(七神の光)ってのが」
「へえ?」
その内容を聞いてみると、この世界の7つの大陸にはそれぞれ一体ずつ神様が存在しており、その神様に選ばれた人間は何か1つ物を貰えるそうだ。
そして、その物を7つ全て集めたときに何か凄いことが起きるとか。
・・・曖昧だな。
なんだ、何か凄いことって。
いや、そもそも竜は神様じゃなく竜だろ。まあ、火の大陸の七神剣物語も似たようなもんだが・・・
「いや、確かに俺はレヴィアタンにこれを貰ったけど、炎斬はどうだろうな・・・うちに代々伝わる剣ってだけで神剣かどうかもわからないぞ?」
「そうか?その剣からも何か不思議なチカラを感じるけどな」
「いや、それでもだ。その伝説の物かどうか確証もないのになんで俺をお前の里に連れてくんだ?」
「えっ。そ、それはほらトウヤは強いだろ?だから頭領も気に入るかと思ってだな・・・」
「どんな理由だよっ?意味がよくわからん・・・それよりもお前の目的、風の大陸の男探しはいいのか?」
「あ、ああそれか。いいのいいの。他にも探している奴が居るからな。
(俺・・・わたしの場合正確には婿探しだからな。トウヤなら・・・)」
「ふうん。まあいいけど。面白そうだしな。あ、でも」
「分かってるって。トウヤの仲間を見つけてからだろ?水龍の祠に行ったあと俺も手伝ってやるから」
「分かってるならいいけどな」
俺は妙に上機嫌に見えるフェンを見ながら、そう言った。
〜〜〜
魔獣の牙・・・かつての魔界での戦いの経験から我はそれと似たような技だと判断した。
魔獣の牙とは得物を持った魔物が好んで使うもので手に持った得物を自身の魔力により大きさや形、硬度を変化させる魔法の一種だ。その魔法を構築するために大した知識や知恵も要らず己の魔力のみで実現できる手軽さから、魔獣の単純で強力な攻撃方法のようだ、とそんな名前で呼ばれている。
人間の騎士は大きな剣を持っていたので魔法を使わずに魔力で身体強化を行うぐらいだろう、と思っていたが・・・
「多少の魔力で我は倒せん!魔力吸収!」
つまり魔力を吸いとれば恐れるに足りん技!
我は眼前の巨大になった剣へと手を翳した。
だが、
ブゥンッ
ズバンッ!!
「!?ギャアアア!!」
「・・・悪魔よ、何がしたかった・・・?」
そんな人間の声を聞きながら我は身体を正面から斬られ地面にうつ伏せた・・・
「ガフッ!な、何故?魔力吸収がっ?」
しかも身体の再生が遅い・・・?
「・・・魔力吸収?・・・成る程な。魔力を吸収する魔導か・・・そう言えば多少力が抜けた感覚がある・・・貴様が手を翳したのはそんな技を・・・」
そう言うと人間の騎士は吸いとられた魔力を補填するかのように得体の知れない力をさらに上げた。
我はうつ伏せたままその力を感じながら、
「こ、このチカラ・・・?このプレッシャーは・・・?」
怯えて言うと、
「・・・プレッシャーか・・・
騙したわけではないが、私はまだ魔力の扱いに慣れてはいない・・・偶々得ただけの魔力よりも使い慣れたチカラを使っただけ、だ・・・」
「使い慣れたチカラ・・・?」
「・・・そうだ。オーラという名の、な・・・奴を倒すために必死で会得した・・・」
「オーラ・・・このプレッシャー・・・ま、待て!先ほどの話の続きをする。だから、」
我は生涯二度目の敗北を感じながら必死で言った・・・
再生が遅すぎる・・・?
我が魔力が減少している・・・?
「・・・先ほどの話・・・?デュカ・リーナのことか・・・?」
だが、上手く食いついたようだ・・・
このまま時間を稼いで、
「そ、そうだ。デュカ・リーナならば間違いなく我の元に現れる!だから今我を殺すのは、」
「・・・自分が奴への囮になるとでも言うのか・・・?」
「そのとおりだ。我と手を組もうではないか?奴を倒すのにも我は協力する!」
もう少し、もう少しだ、人間・・・
我はうつ伏せの体勢のまま必死で人間を宥めた・・・
「・・・悪くない話だが・・・」
ゴォォォッ
?言いつつさらに人間から感じるプレッシャーが上がって、いる・・・?
まさか・・・
「・・・断る。先ほどのような不意討ちを再び喰らいたくはないからな・・・」
「・・・随分と信用が無いもんだの」
「・・・己の所業を省りみてみるがいい・・・」
「・・・」
遅いが魔力がある程度は回復した・・・?
これならば・・・
「・・・どうした?喋る気すら失ったか?」
しかしこれは出来れば使いたくは無かったがの・・・
この状況なら仕方あるまい・・・
それにこの得体の知れないプレッシャー・・・
「・・・ならば、消えてもらう・・・剛剣技・・・」
「消えるのはお主だ・・・神魔滅光・・・!」
我は回復した魔力と併せた残る全魔力と引き換えに我が最強の殲滅魔法を放った・・・!
「?・・・光が広がって・・・・・・」
「さらばだ・・・強き人間よ」
人間が我が全身から放出された魔力の光に呑み込まれるのを見届けた・・・
我の勝ちだ・・・!
〜〜〜
「なんだありゃ!?」
俺が骸骨どもをようやく全て叩きのめし一息ついていたら、凄まじい魔力の高まりを感じたので見てみると、ゲンの身体全体からミシェールへ向けて輝く光のようなものが放たれていた。
いつぞや見た殲滅魔法よりも強力そうなそれを見たとき俺は、
「さすがに死んだかな?」
ミシェールといえどあれを喰らってはひとたまりもないだろうと思い、呟いた。
だが、
「それならそれでいい・・・!」
俺が悪魔を倒すだけだ、とほくそ笑んだ。
だが・・・
〜〜〜
「・・・・・・ん技、絶斬・・・!」
我が勝利を確信した。
その時に・・・
そう呟く声が聞こえ・・・
身体・・・が・・・
消め・・・つ・・・
〜〜〜
剛剣技、絶斬・・・本来は全身の力を込めて敵の攻撃の後に敵の力と己の力を全て敵に叩き込むカウンター技だが。
今の私の絶斬は身体中の全オーラと魔力、そして直前に喰らった悪魔の魔力とを全て取り入れた最強の破壊技となっている。
・・・オーラと魔力を使い出して初めて繰り出した技だったため自分ですら想像もしてなかった威力となったが・・・
思ったよりもあの悪魔が最期に放った魔導の技の威力が低かったような・・・?
あのうつ伏せた状態であれほどの魔導の技を繰り出すとは恐るべき奴だが・・・
先ほどまで戦っていた悪魔の魔力を完全に感じなくなり、戦いの最中に感じた僅かな疑問の答えが見つからず、ミシェールは1人首を傾げた・・・
〜〜〜
我が最強の殲滅魔法が破られた・・・
喰らった者は例外なく消滅する我がラグナロクが、何故・・・
ゲン・マドゥは身体が消滅していく中でそんな疑問を覚えた。
戦いの最中にもいくつか違和感はあった。
何故身体が再生しなかった・・・
何故魔力が減少した・・・
何故我は・・・
消滅してゆく身体とともに様々なことが頭をよぎった・・・
・・・・・・!
そして、瞬間、
かつて魔界を出ることになった日のことを思い出した。
と同時に1つの事実に気付いた・・・
▽▽▽
『君、陽の当たる場所に行かないかい?』
と、我を圧倒した目の前のデュカストテレスは言った。
「陽の当たる場所?我が・・・ですかの?」
『そう!人間の居る地上の世界さ!』
地上・・・地底の奥深くに存在する魔界の民には永遠に手の届かない世界。我も噂ぐらいしか聞いたことはなかった。様々な魔法を試し転送魔法も使えるようにはなったがあれは行ったことのある場所にしか行くことはできない。しかも魔界と地上では別の・・・・・・
この目の前の存在は本当に地上に行くことが可能なのだろうか?
いや、我に行けと言っている・・・?
我は口に出さずにそんなことを思った。
『何を考えているかは分かるけどね!心配ご無用さ!僕の転送魔法は空間を超えることも可能だしね!』
「・・・その言い方だと、実際に行けそうだが、」
『うん!まかせてよ!・・・・・・えーっと、君名前は何?』
「名前?そんなものはない・・・」
我は名もない一匹の悪魔だ。
『えー!これから地上に行くのに!あったほうが便利だよ!』
と、言われてもないものはないのだからしょうがない。
『よし分かった!僕が名前をつけてあげるよ!・・・うーん。僕には及ばないけど多くの魔導の技を使えるから・・・・・・分かりやすくマドーなんてどうだろう?』
そのまんま過ぎる、と言おうとしたが別に悪くはない。
『いや、少しひねってマドゥにしよう!少し物足りないかな?』
正直どちらでもいいと思ったが口には出さなかった。
『マドゥ・・・これでいいかな!
あっ!人間の世界には名字と名前の二つが要るのか!マドゥ、の頭につく名前・・・』
別に必要無いのではと、いい加減口を挟もうとしたとき、
目の前の統括者は不意に顔をぐにゃりと歪め、
『ゲンにしよう!決めた!今から君の名はゲン・マドゥだ!』
何故ゲン?と思ったので聞こうとしたら、
『ゲンの意味はいずれ分かると思うから今は話さないね!』
と言われやめた。
『じゃあ、そろそろ飛ばすね!』
「地上・・・へ」
我はその日生涯初の敗北と世界を超える経験をした・・・
△△△
ゲン・マドゥ・・・
ゲン・魔導・・・
幻・魔導・・・
我の魔導は幻・・・
名の意味が・・・
あの方の借り物の・・・
かつて程の魔力を失い・・・
それを知らずに・・・
・・・あの方の気まぐれで我は数千年・・・
・・・我はあの日あの方にすでに・・・
・・・・・・滅ぼされて・・・い・・・た
そして・・・
一匹の悪魔、ゲン・マドゥは消滅した・・・




