第31話〜導き〜
〜〜〜
「やっと着いたわね」
鬼ヶ島に着いた、シエル・スサノオはそう呟いた。
「何というかこの島は・・・」
?島に入った途端ガロウが何かに驚いている。
「どうしたの、ガロウ?」
「姫・・・この島は」
「精気に溢れているわね」
今まで黙っていたニルナ・カナワがガロウの言葉を遮って言った。
「ニルナ・カナワ?貴女もプラーナを感じ取れるの?」
私が言うと、
「はい、シエル姫。わたしは何年もタチオ師匠に師事してきましたから。そこのぽっと出優男とは違います」
と、ガロウを見ながら言った。
ぽっと出優男って。
ガロウと何かあったのかしら?
「カナワ、貴様っ!」
「何、ガロウ・サイハ?たかだか1日やそこらオーラの修行をしたからって弟子面をするのはやめてよね」
「ぬぐっ。だがタチオ殿は私のほうがオーラ量が多いと仰ったっ!才能も貴様より上だっ!」
「!!?・・・ガロウ・サイハ・・・!」
ニルナ・カナワが何か凄く睨んでいる。
要はどちらがオーラの闘法の達人タチオ・ヒノカにより相応しい弟子、というか高弟というか、そのへんで争っているの?
・・・めんどくさっ
そう思ったあたしは、
「2人ともそのへんにしときなさいよっ!只でさえ危険な場所なんだから。言い争いは無事任務を果たしてからになさいっ!」
叱責した。
「はい、姫」
「・・・申し訳ありません姫」
カナワ、ガロウと素直にそう言った。
睨みあってはいるが・・・
警備隊と神官隊の連中は巻き込まれたくないもんだから遠巻きに見てるし・・・
「はぁ。戦力を揃えたまではよかったけど」
まさか2人の相性が悪いとは・・・
連携を取って襲ってくる鬼族が出てきたらどうするのよ。
口に出さずにこの任務への不安を感じた。
「とにかく。皆出発するわよっ!まずは大きな門へっ!」
そうしてあたし達はまず、アズト・ミタラの報告書にあった大きな門を目指した。
〜〜〜
失敗したかしら?
デュカ・リーナは闇の大陸の奥深くに1人佇み、そう思っていた。
水の大陸の祠の中の龍巣に転送し、そこからさらに魔力を悟られないように抑えて闇の大陸の龍巣に移動してその付近に身を潜めていた私はあのウォルス王国の生き残りの人間が自製の魔石を使い魔の力を取り入れて闇の大陸に来るのを待っていた。
あの人間の潜在能力と強さなら上手く魔の力を取り入れれば獅子や悪魔に比する力を手に入れられるのでは、という私の目論見は当たっていた。
自製の魔石も上手く使うように仕向けて初めて使用してみたがどうやら出来はよかったらしい。強くなりすぎた感もあるが・・・私を探し此の大陸に来るだろうことも考え通りだった。
そして、運よく獅子がこのあたりに居たこともちょうど良かった。
労せずして獅子を倒せるかもしれない。と思った。
結果、私を探している人間と獅子がぶつかった。そこまではよかったのだが・・・
「予想外ね。手を組むなんて・・・」
あの人間と獅子が協力するのは計算してなかった。ぶつかり合えばどちらかが消える、ぐらいに思っていたのだけれど。
あの人間の私に抱く怨みの感情今までに培ってきただろう精神力、それと獅子の野心や計算高さ・・・・・・そのへんを大まかに考えた私の失策か・・・
この100年、本懐を果たすために様々な場所へ行き多くの情報を仕入れ、かなりの知識や知恵を得たと自負している私ではあるが、どうも他者の感情とか心情とかそういったものには昔から疎い・・・それは数万年生きてきても未だに変わらない。
しかし、考えなければ・・・あの者達が手を組む、ということは、狙いは私と悪魔と・・・神人でしょうから。策を考えなければ・・・
「まずは・・・」
私は他者に魔力を悟られないよう結界を張ることにした。
〜〜〜
・・・失敗したか?
俺はネクがさっきから微動だにしない姿を眺めながらそんなことを思った。
宿に帰った俺を見たネクは案の定不機嫌な顔をしていた。
1人でやることがなかっただの、病人をほったらかして冷たいだの。
顔を見ながらそんな文句を言うネクに軽くキレそうになりながらも、大人な俺は素直に謝った。
そして、1人にさせた詫びだと言って風邪用の薬と一緒に先ほど装飾品屋で買った銀製の指輪を渡したのだが・・・
「・・・・・・」
さっきからこいつはそれを見つめたままぴくりとも動かなくなった。
物で何とか宥めようとした俺の作戦が見破られたか?まだ熱が引いてないのか顔も赤いし。いや、怒っているのか?
こんなもので誤魔化されない!みたいな。
「・・・ね、ねえ」
と、次の作戦(宥めすかした後に逆ギレ)に移行しようかと考えた時、奴が口を開いた。
「ん?何だネク?」
優しく俺が言うと、
「これ・・・私に?」
他に誰が居るんだ、と若干怪訝に思いながらも、
「ああそうだぞ。俺からお前への贈り物だ。悪かったな1人にして」
「トウヤ・・・」
俺がさらに優しく言うと、ネクは何故か俯いた。
?まあ、怒ってはなさそうだが・・・
「知ってる・・・の?」
「?なにが?」
「昔の風習で・・・・・・大人の男が大人の女に指輪を渡すのって、」
「ほう、ほう?」
ネクが蘊蓄らしき言葉を続けようとしたので、俺は続きを促した。
「トウヤーッ!まだかーっ!」
と、その時外から俺を呼ぶ声がした。
フェンを待たせてたからしびれを切らしたんだろう。
「!?・・・トウヤ今の声は?」
「ああ。さっきなーーーーーー」
俺はフェンという奴と知り合ったいきさつを手短に説明した。
風の大陸の竜に関係のある刀や、俺の持つ2本の刀について一通り話し、
「へえ。風の大陸の男の子・・・しかも同い年か」
「そう。だからそいつと一緒に水龍の祠に一緒に行くことになったんだ。あ、もちろんお前の風邪が治ってからお前も一緒にだぞ」
フェンが水龍の祠に興味がありそうだったからそういう話になった。
そしてまた機嫌を損ねたらめんどくさいんで焦ってそう言った。
「え、でも今外で待っているのはなんで?」
「うん。俺がな、」
風邪をひいた連れを待たしてるから一旦帰ってまた何日か後で会おうと言っても、フェンは何故か俺についてきて近くで待っているとか、俺の連れが治るまで色々話したり飯を食ったりしようとか言うので宿の外に待たせておいた。
いや、あとで落ち合えばいいのにわざわざついてくるなんてめんどくさくないか?と思ったが。
「そうなんだ。あんまり待たしても悪いし行って来たら?私は寝て待ってるから」
!?・・・どうしたこいつ。前とうって変わって物分かりが良くなっているだと・・・?
まさか、指輪がそんなに効いたのか?
「お、おお。じゃあちょっと行ってくる」
俺はネクの言葉に甘えて外へ出て行った。
「・・・婚約指輪・・・」
部屋を出る時にネクが何か呟いていた気がしたが。
「よお。待たせたな」
宿を出た俺は外に居たフェンに声をかけた。
「いや、大して待ってないぞ」
フェンが嬉しそうにそう言った。
お前が待ちきれずに俺を呼んだけどな・・・
軽く嘆息したが、まあいいかと思い、
「じゃあ、行くか」
「おう。旨いところなんだろ」
「まかせろ」
2人で俺のお気に入りの料理屋へ向かった。
〜〜〜
・・・・・・?
それは永年の戦いの経験からだったのか、それとも己を実力以上の腕に上げている勝利という名の栄光を引き寄せるこの剣・・・いや、刀が教えてくれたのか。
とにかく今此の場に留まるのは危険だという予感がした。
「・・・相棒、まさにそんな言葉が当てはまるな・・・」
思えば・・・・・・・・・
かつて人だった頃に育ての親がどのような経緯で手に入れたのかは未だに不明ではあるが、ある年の誕生日(正確には育ての親が私を見つけた日だが)、その育ての親から祝いの品だと貰ったのがこの刀だった。
強さに焦がれていた私はそれを受けとるとそれまでより一層の鍛練に励むようになったものだ。
純粋なる強さを求め・・・
そして、当時通っていた木剣の剣術道場の同輩や師にすら負けなくなり、道行く魔物を無造作に斬り捨てる程になった頃にはすでに強さに取りつかれていた。
火の大陸を数年1人で旅し武者修行という名目で各地の様々な争い、戦に横槍を入れたものだ・・・私がついた側は全て勝利を納めた。
そして私は自らの強さに酔いしれていた。
慢心していた、と言い換えてもいいだろう・・・
・・・だが、私は分かっていた・・・
それらの勝利を勝ち取ってきたのは私の実力ではなく手に入れた刀に因るものだということを・・・
そんなときに仲間にと勧誘された。
国を統一せんとする強き者に・・・
その者を見たときに、私はかつてこのような強さを目指していたのではないか?と自問した。
その強き者に匹敵する、いやむしろ戦いにおいてその者にすら負けないだろう、という確信めいた感情すら抱いたにも関わらず。
その者にはそういった(輝き)のようなものを感じた。
事実、後にその者は王となった。
その者を含め三名の強者と共に戦った。
そして、その戦いの中で私が感じたこと。それはこの三名の強者は私とは違い純粋に己の力だけを頼みにしており、私のように武器の力に依存しているわけではない、ということだった・・・
その戦いの日々が終わり、それぞれの道へ進んだ。
己の限界、弱さを覚った私は育ての親が住む家に戻り鍛練もせず漫然と過ごしていた。
しかし、そんなある日・・・チカラを手に入れた。
それは私自身のチカラとなった・・・!
魔のチカラ・・・!
「・・・運命とやらか」
偶々あの日あの場所に行きあの方に出逢えたことはまさにそんな言葉が当てはまった。
「・・・今にして思えばあの時もこの刀に導かれたような・・・」
そう呟いたシンド・ラギは己が持つ剣を眺めた。そして、今まで魔物を狩っていたその場所から姿を消した。
〜〜〜
「フェニス様」
「どうした、ノルエル?」
祭壇のある部屋で不死鳥の様子を見ていた私にノルエル・ハザマが声をかけてきた。
「侵入者です」
「またかっ!?だが、貴様が感じるということは、」
「ええ。プラーナの持ち主、人間です」
「この前来た奴らが出直してきたのだろうか?神獣を奪いに・・・いやしかし神獣は並の人間には扱えない。では、何故再び・・・?」
以前、ジン・ガトウとロナン・サタクが戦ったという人間達。
何故急に帰ったのか皆で頭を悩ましたが、まだ幼獣だからまた来るとしても精々一年は後だろうと結論づけた。
だが、こんなに早くまたこの火喰い島に来るとはいったい・・・
「いえ。人間のプラーナの種類までは分かりませんのでこの前の者達かどうかは不明です。ただ、」
「可能性は高いだろう。ただ、なんだ?」
「この前来た者に匹敵するぐらい巨大なプラーナの持ち主は居ます・・・」
「やはりこの前の奴らがっ!ううむ、まずいな・・・ガトウですら勝てるかどうか分からないと言っていた奴かもしれんな・・・」
ジン・ガトウはこの島では戦闘において最強を誇る。本人は侵入した人間に魔力は感じなかったと言っていたが、我等鬼族の始祖である御方に自分よりもその侵入者の人間のほうが強いと見極められたとか。
嫌な考えが頭をよぎる。今人間がこの島に来たのは神獣が目的ではなく、我等を退治しに来たのではないか、と。この前の侵入で我等の強さを把握した強い人間ならそれが可能だと思い・・・
「ノルエル!」
と、私が考えているとジン・ガトウまでもが此処にやって来た。
「ガトウさん?どうしました?今、」
「人間のプラーナを感じたかっ?」
!?こいつは魔力は感じていたが人間のプラーナは感じ取れなかったような・・・
「え、ええ。今そのことでフェニス様と話していたのですが」
「やはりな。私も前回の戦いから貴様のように人間のプラーナを感じとれるようになったのだ」
魔力を感じとれる能力の応用だから、貴様もいずれ他者の魔力も感じとれるようになれるかもな。
とひとしきり言い、
「どう対応しましょう?」
ノルエルが尋ねるとガトウは、
「確かに巨大なプラーナの人間の侵入者も問題だが、それよりもっ!」
「どういう意味でしょう?現状はそれが最重要ではないのですか?」
?ノルエルの言うとおりだ。ガトウは何を?
「私が重要視しているのは鬼丸のほうだっ!」
!!?
私は耳を疑った。
「ガトウ・・・今何と?」
「私はなフェニス・・・鬼丸の持ち主、つまりかつて闘神と呼ばれた人間が持ち帰った刀を今島に来ている人間が持ち込んでいる、と言ったのだ・・・」
そんなガトウの言葉を聞き、私は命はともかく神獣は諦めるか・・・と項垂れた。
〜〜〜
〜魔導城〜
其処でゲン・マドゥは自らの魔力を高めるため瞑想していた。
魔界・・・気がつくと我が存在していた場所。
我の故郷。
太陽の無い世界。
魔物と魔獣しか居ない荒んだクニ。
幾年前かはよく覚えていない。気がついたときには自身の膨大な魔力と様々な魔法の使い方を自覚していた。
目に入る全ての魔物や魔獣を討ち滅ぼし自身がこの魔界で最強だと思って過ごしていた。
そんなある日のこと・・・
▽▽▽
「退屈だな・・・」
よく憶えてはないがおそらくそのとき我は暇潰しに手当たり次第魔法を撃っていたような気がする。
「強いものってのは居ないもんだの・・・」
何か面白いことでもないかと考えていた。
思いつく限りの魔法を考え、その殆ど全てを実際使ったりだとか。魔法で魔物の死骸からアンデッドを造ってみたりだとか。
兎に角退屈な日々だった。
「はああ」
溜め息を吐いた。
そして、気づくと目の前に今までに見たことがない形の獣が居た。
『君!暇そうだね!』
何処からともなく現れたその小さな生き物、我の半分程度の大きさしかない獣がそう言った。
「なんだ、貴様は?そう思うなら我と戦え。我は暇だ」
我が言うと、その生き物は顔をぐにゃりと歪め、
『うん!いいよ!あ、でも上手くできるかな?』
「何をだ?」
『手加減ってやつさ!今までやったことないからね!僕は!』
「ほう・・・面白いことを言う獣だな。手加減せずとも本気でこい」
我はその時は他者の魔力を感じ取る能力が無かった。それは仕方のないことだった、というのも自分より強大な魔力の持ち主に出逢ったことがなかったから。というより出逢う者は全て討ってきていたから。
『本気だね!分かった!』
・・・・・・・・・・・・
そして、気づけば我は満身創痍になっていた・・・
四肢は吹き飛び魔力も残り僅かとなり・・・
「が・・・貴様は・・・いったい・・・」
地面に這いつくばりながら我はそう言った。
『もうちょっと楽しめるかと思ってたんだけどね。あ、君が弱いわけじゃないよ!僕が強いだけさ!』
「・・・何者だ・・・?」
『ええ!今更それを聞くのかいっ?まあいいけど!僕の名は、』
その名を聞いた時、我は直前に食らった殲滅魔法よりも、ある意味では大きな衝撃を受けた。
そして自らの死を、消滅を覚悟した。
「・・・貴様、いや貴方は・・・統括・・・」
『ほいっ』
と、魔界の統括者デュカストテレスは此方へ手を翳した。
すると、
「?治った?オオオッ!」
傷が全て癒え、我は立ち上がり咆哮した。
『やっぱり手加減はむずかしいね!』
「結局貴方はいったい何を・・・?」
我を滅ぼそうとしたり、傷を癒したり、訳がわからない・・・
『あはっ!それなんだけどねっ!』
「まさか、単なる暇潰しだとでも・・・?」
圧倒的強者ならあり得ることだ。事実我も目前の全ての魔物の始祖と言われる御方と会うまではそうやって生きてきたから・・・
『鋭いねっ!大体合ってるよ!』
「・・・」
我は困惑した。暇潰しならもしやもう一度戦えと言われるのでは、と。
だが、そんな我の心配は次の言葉で杞憂に終わった。
『君、陽の当たる場所に行かないかい?』
△△△
そうして、我は永年この世界で過ごしてきた。
あれからかなりの時が流れたが結局我は何のために此処に来たのかは未だに分からない。いや、1つにはあの方の暇潰しということは分かってはいるが。それとは別にあの方には何か別に目的があるのではないか。
というのも永年魔導を研究してきて分かったことだが転送魔法、特に世界や次元を越える程の転送というのは莫大な魔力を消費する。いくらあの方が絶大な魔力の持ち主といっても、何の見返りもなく我をこの世界へ導くだろうか?
まあ、特に制限や命令もなく自由気ままにこの世界で過ごしているので文句はないが。数千年?ぐらいはこの世界で色々とやってきたと思う・・・
それに・・・
仲間とは言えないまでも手を組んでいる、闇に堕ちた人間や戦闘狂の半人半獣、魔界では出逢いようもない輩だが、戦いにあけくれる今の状況は悪くはない。
あの頃の退屈な日々に比べれば・・・
しかし、そんな現在の状況の中でも疑問に思うところが3つ程ある。
1つは狼、アルカード・ブラッディを倒したのは何者かということ。
1つは以前我に接触してきた人間・・・水の大陸か何処だったか?の人間は何故何も言ってこなくなったかということ。
そして、
ガシャガシャガシャガシャーン!
瞑想はそんな音で中断された。
「む・・・?」
瞑想を止め目を開けると其処には、
「よおっ!ゲン・マドゥ!」
同盟を組んでいる者の1人ランザー・レオパルドが立って居た。
我が造り出した大量のアンデッド兵の残骸と一緒に。
そして、強大な魔力を身に纏う者と共に。
我が思う疑問の3つ目。何故ランザーは黒き魔神の巣あたりで戦っていた魔力の持ち主と行動を共にしているのか、ということ。
眼前の光景を見てその疑問だけはどうやら解けた、とゲン・マドゥは思った。




