第27話〜欲するものは〜
〜〜〜
三度目。
突然この機会が降って湧いたような形になったが前回この少女と相対したときよりも私はさらにオーラの闘法の上達を果たしている。
今度こそは憎き仇を討つ・・・!少女の顔を視認した瞬間私はそう決意し持てるオーラを全開にした。
そして、
「前の時より感じるプレッシャーが上がっている?貴方はまた強くなったのね」
少女デュカ・リーナが感嘆したようにそう言った。
「・・・私自身の力はそう上がってはいない。会得しただけだ・・・オーラの闘法の真髄を・・・!」
私はそう言うと泉から出てきたデュカ・リーナへオーラ、そしてプラーナを纏った全身で斬りかかった。
「・・・!速いっ!」
私は一瞬で距離を詰め袈裟懸けに斬った。
が、かわされた・・・!
「危ないわね・・・この速さがそのオーラとやらの真髄なのかしら?」
私が連撃を繰り返すも全てかわされる?この少女、以前より速くなっているのか・・・?
だが、私は、
「そうだ!己の力のみではない!大気の力を借りてっ!」
言いながら態勢を整え剣を正眼に構えた。
「また、お得意の突き?そんなのは通用しないと何度言えば・・・」
「ハアアアアッ!!!」
一呼吸で突きを20程繰り出した・・・!
「なっ!?く、しまっ」
ズバッ!グサッ!
手応えがあった。
「・・・痛いわね。以前よりも凄まじく速くなっているし・・・」
少女の身体に数ヵ所突きが当たっていた。
「どうだっ!今度こそ貴様を討つっ!」
「・・・龍巣を出てすぐに戦うとは思ってなかったから杖は置いて来たのだけれど・・・」
言いながらデュカ・リーナの傷がみるみる塞がっていく・・・龍巣?
・・・いや、そんなことよりも、
「ちっ!やはり魔導とやらか。即座に回復するとは・・・」
「・・・これは単に身体が再生しているだけで、別に治癒魔法を使ってないのだけれど?」
「なにっ!どういうことだっ?貴様は不死身なのかっ?」
奇怪な魔導の技を使わずとも身体を治すだと・・・
それではこいつは正真正銘の・・・
「化物め・・・!」
「・・・・・・・・・そうね。そのとおりだと思うわ・・・」
私がそう言うとその少女デュカ・リーナは寂しそうな顔をした・・・?
「だが、化物とはいえ首を落とされてはさすがに生きてはいまい・・・!」
「・・・さあ?どうかしらね?それにその言い方だと次は馬鹿正直に首を狙う、と言っているようなものだと思うのだけれど?」
「貴様が得体の知れない化物である以上、言葉で惑わす小細工や駆け引きなど必要ないっ!私の全力の速さと威力を持って貴様を倒す・・・!」
持てる限りのオーラ、取り入れることのできる最大限のプラーナ、を全身と剣に纏い、
「セイヤアアアアッ!」
首を狙った最速の一撃を放った。
ブンッ!
だが最速の一撃はかわされた。
「・・・危ないわね。でも、貴方は最初会った時よりも本当に強くなったわね。人のままにも関わらず・・・」
「貴様を倒すためだっ!私の全てを奪った貴様をっ!」
・・・癪な話だが、私がここまで強さを求めたのも初めてあったときにデュカ・リーナの圧倒的な実力を目の当たりにしたからだ。その圧倒的な実力の者を倒すために・・・
そして、オーラの闘法、プラーナの存在を知ることができ体得できたのはまさに幸運だった。
ここまで強くなれるとは・・・!
・・・感謝するぞ、トウヤ。
だが、
再度、下への斬撃の囮を織り混ぜた攻撃を繰り返したが、当たらなかった。
「貴様・・・以前よりも速くなっているのか・・・?」
それに感じるプレッシャーも増えて、いる・・・?
「そうね。以前と比べたら・・・」
「それも魔導とやらの力か・・・!」
言いつつ威力を抑えた速度重視の剣撃を繰り返す。
再度一撃当てて奴に隙を作る・・・!
「・・・本来のチカラを取り戻しただけ、というところかしら・・・?」
デュカ・リーナが私の攻撃を見切り、かわしながら言う。
あの杖がない今が好機だが、当たらん・・・!速い・・・!
「本来の力だと?私を、この国を、滅ぼした時は違うとでも言うのかっ!」
「おっとと。・・・そうね。あの時は六割から七割、といったところかしら・・・?」
「戯れ言をっ!ウオオオオオオオオオッ!?」
ドンッ!!
一瞬の隙に私は祠の天井に叩きつけられていた。
・・・攻撃が見えなかった、だと・・・?
「ガハッ!・・・貴様、今何を?」
「・・・何を?と言われても。貴方の強さに敬意を表して、」
言いながらその右手を此方に向けて翳し、
「こうしただけよ・・・!」
横に振りはらった。
ブオンッ
「グッ!凄まじい突風が・・・!」
ズザザザッ
奴の居る方向からその場に立っていられない程の強い風が吹きつけてきた。
後ろに飛ばされてしまう・・・
魔導の技か・・・!
私が正面から風を受け止めていると、
「・・・さすがに正面からの疾風だと貴方の強さなら耐えられるのね・・・じゃあ、これはどう?」
そう言うと奴は両手を合わせ、
「風刃!」
剣を持っているような構えを取った・・・?
「剣術はあまり得意じゃないのだけれど・・・ハッ!」
此方に振りかぶってきた。
魔導の技かと警戒し、私は横にかわした・・・
ズガンッ!
!?
デュカ・リーナが見えない何かを振りおろした地面が抉れている・・・?
「あら・・・やはり剣では貴方を捉えられないわね」
「剣?視認できない剣だと・・・!」
「魔導・・・無から有を造り出す技・・・貴方にはそう見えているのでしょうね?」
何だ?奴は何が言いたい?
「だけど。先ほども言ったけれど貴方の強さ・・・・・・いえ、人間が辿り着ける最高峰の場所にまで己を高めたそのチカラに敬意を表して・・・」
デュカ・リーナはそう言うと、両手の握りの部分を此方に向けた。
もし、本当に見えない剣が其処にに実在するならば・・・
「最低限の魔力で、」
言いながら此方へ距離を詰めてくる・・・
私は剣を構え直した。剣士と相対するかの如く。
「殺してあげる・・・!」
「其処だっ!」
ギィンッ
私が奴の両手から予測した場所に何かを感じそれを剣で受け止め、た?
剣と剣がぶつかり合う音だと?
「くっ。本当に剣らしきものがあるとは・・・どういう技だ・・・!」
「見えないそれを受け止める貴方も大したものだけれど・・・・・・爆裂!」
バァンッ
「グアッ!」
何かが弾ける音がし、奴の手元から大きな衝撃を感じた。
特に痛みは感じないが。
「ハアッ!」
そのまま近くに居る、筈の奴に剣を振ったが空振りし、辺りを見ると奴の姿を見失った。
「ふう・・・動きといい力強さといい悪くはないけれど。このままじゃ私には届かないのじゃない?」
後ろのほうから声がした。
「貴様、いつの間にっ?」
私が振り向くと、
「それに私にはやることがあるの。これ以上貴方に付き合っては居られないわ・・・」
「なっ!貴様!また逃げるのかっ!」
「逃げる?ふふっ。そうね。逃げるわ・・・」
「逃がすかっ!貴様を滅ぼさねば!私は・・・!」
「その激情は代えがたいものだけれど・・・それだけじゃね・・・」
「愚弄するかっ!貴様っ!貴様だけはっ!ハアアアアアッ!」
私は限界を超えてオーラを高める。
「・・・想いのチカラ、か。これも1つの可能性ね・・・」
「ウオオオオオオッ!!!」
全力をさらに超えた私の最速最高の一撃を・・・!せめて一太刀を・・・!
ガキィーンッ!!
当たった!だが・・・金属音?
「・・・凄い衝撃だったけれど、硬度は此方が上だったようね・・・」
剣の切っ先を見ると奴は両腕を交差して、剣を受け止めていた・・・!
「何故だっ?先ほどは斬れた筈だっ!」
「・・・気づいていたかしら?先ほどから貴方の戦い方の真似をしていたことを?」
「?・・・・・・・!貴様まさかっ?」
「そう、身体を魔力で強化したの。貴方のチカラみたいにね」
「魔力・・・魔導・・・」
「正確にはエーテルだけれど・・・そんなことよりも貴方は己の限界を認めるべきだと思うわ・・・」
「私の、限界だと・・・?」
「そう。というよりは人の限界、と言うべきかしら。人では、人のままでは決して届かない高みがあるということを・・・」
「知ったようなことをっ!貴様に人の力の何が分かるっ!魔物と変わらない化物の貴様なぞにっ!」
あまりに此方を見下した言い方に、私は剣を振るのを忘れ怒鳴っていた。
「わかるわ・・・」
だが、私がそう言うと奴はデュカ・リーナは何故か寂しそうな顔をし、
「・・・・・・だって、私も人間だったから・・・」
と言った。
「!?・・・貴様は生まれつき鬼族ではないのかっ!?」
「まあ、私のことはどうでもいいのよ。兎に角今の貴方程度では私に勝てない。それどころか、あの・・・」
言いながら、僅かに苦笑し、
「・・・そう言えば此処は神獣の拠点だったわね」
急に辺りを見渡してそう言った。
「貴様・・・!」
いったい何が言いたい・・・そう言おうとしたところで、
「この大陸には神獣に守護されているという逸話があったでしょう?もしかすると此処にその神獣が居るかなと思っただけよ・・・」
何故こいつは水の大陸の守護神の話を知っている・・・?
「まあ、魔力を持っているという話だし魔力も何も感じない此処には流石に居ないか・・・でも転送できたから場所は間違ってはいない・・・?・・・ということは・・・」
「何を、何を言っているっ!」
奴が1人で不明なことを喋りだしたので私はつい尋ねるような聞き方をした。
「何を?そうね・・・貴方が強くなれる可能性の話かしら・・・?」
「何だとっ!貴様人を愚弄するのもいい加減に・・・!」
「1つだけ言っておいてあげましょうか・・・願う想いの強い人間は想い続ければいつかその願いが叶うものなの・・・だから貴方が私を殺したいと願っているならば、強く。そう何よりも強くそのことを願うことね・・・そうすれば、いつの日か・・・・・・」
「貴様を殺せる、か・・・?否!それはいつの日か、ではなく・・・今この時だっ!!」
再び剣を振った。
が、
辺りに生暖かい風が吹き、
・・・見るとデュカ・リーナの姿は消えていた。
「くそっ!またしても・・・!」
いつぞや見た奴の魔導の技だろう。
いきなり現れたり消えたりするあの得体の知れない・・・
だが、此処まで強くなった筈の私の剣すら届かないとは。
これ以上どうすれば・・・これ以上強くなるにはどうすれば・・・奴を討つためには・・・
?
私が祠の中で座って項垂れていると、奴が消えたあたりの地面に何かが見えた。
私はそれに近づき手に取ってよく見てみた。
「これは一体?」
私はその拳大の黒く輝く石を見ながら、首を傾げた。
〜〜〜
〜カグツチ資料庫〜
其処では1人の少女、シエル・スサノオが書物を読んでいた。
政務を休んでまで調べてみたものの・・・
「目ぼしい資料はない、か。これは資料というか・・・裏付けにはならないわね」
私は1冊の書物に目をやり、溜め息を吐きながらひとりごちた。
この3日ずっと文字を追っていたので目も疲れている。
現政府ができて255年・・・設立当初からの資料、書類など凡そ10万点程は、全て此処カグツチ資料庫に保管されているが、それ以前のものや大陸の歴史、神話等に関する物は微々たる量しかない。
「お父様も今は居ないし、色んなことに詳しいナシラもまだ帰ってないだろうし、シバは仕事しろって五月蝿いし・・・」
聞く相手が居ないのでこうして資料庫で調べていたが、
「ああー、もうっ!こんなのあたしに合わないってのっ!」
頭を掻きながらいらついた口調でそう言った。
「でも、大昔にも魔物が居たのなら・・・」
私が疑問に思って態々政務を休んでまで知りたかったこと。
それは、
「神剣と魔物の活性化に因果関係はないと思うのよね・・・」
先日シバと話していて思ったことだが、どうもそんな気がする。
昔からそれこそ先祖の初代スサノオの時代から神剣がこの大陸にはあると言われてきて、未だに見つかってもないのに、魔物自体は昔から存在しているという記述が最近調べている多くの資料に載っている。
おかしいとは思っていたのよね。
・・・そして、政務を休んでまでそれを調べているのは、今の政府の運営の仕方に不満があるからだ。
将来的には自分が舵を取るカグツチとはいえ(既に婚姻云々に関しては既に諦めている)そもそもこの国には適性な判断をできる人物が余りに少なすぎる。
1人の学者の仮説を鵜呑みにし他に何もそれらしい意見がないからと言って、その仮説の検証をするために何故下の者達はその意見以外を出さないのか。
下の者達とは具体的には、宰相であるシバの下、大臣達である。
特に政府の予算を握っていたり、各町村との取引に直接携わったり、大臣同士の会議で議長の位置に居る、宰相に次いで実権を持っている1人の老獪な人物を思い浮かべ憎々しい顔をした。
まだ、あたしが政務に慣れてないからって好き勝手にやるもんだから・・・!
結局、現在の状況を見てみれば神官12名と警備隊1班を神剣探索につぎ込んで、折角謎の光の正体が神獣と判明したにも関わらずそちらに調査の手を割けない、という時間、人手の無駄をしている。
「はあー。でもそれらしい物も見つからないし・・・」
私は疑問に思ったこと、その仮説をひっくり返そうと今更ながら嫌いな書物の研究をし、神剣探索隊が帰ってくる前に「かつて魔物が活性化した時期があったのでは?」という自分の説の裏付けを取り、大臣どもの鼻を明かしてやろうとこうして資料庫で過去の歴史を調べていたわけだが・・・
「これは、どうなのかな・・・?少し違うか・・・」
先ほどから見ていた1冊の古い書物を見て呟いた。
そこには、
[滅んだ村]
昔に、多分100年以上は前に書かれた物だろう、その書物の題名を見て気になったあたしは中を読んでみた。
内容を大まかにいうと、何とかという今は無い村の住民が1体の魔物に襲われて自分以外の村人が皆殺しにされたという悲惨極まりないものだった。最初創作物かと思って気楽な感じで読んでいたのだが、最後の頁を見るとその書物を書いた人物の体験・・・つまり実話だと書かれていた。
命からがら隣の村まで逃げたその著者は何故そのような魔物が突如自分の村に現れたのか、何故近隣の村ではその魔物を誰1人見ていないのか、随所にそのことを不思議がっている記述が見られた。
これが実話だったとしたら、いつのことか詳細は分からないが魔物の活性化と何か関係があるのでは?と思い一応手元に置いていた。
腑に落ちない箇所は1つあったが・・・
「・・・魔物でも剣を使えるものなの?」
その書物に書かれていた、著者が見た魔物の姿は人に似通っており、黒い大鎧を身に着け黒い剣を持っていたとか。
~~~
俺はネクを宿に置いてオーラとプラーナ全開で走っていた。
一応、ネクには此処に戻ってくるから風邪が治っても待ってろよ、と言い残してきたが何か凄く不満そうな顔をしてやがった。いや、お前・・・戻ってくるって言ってるのに。
看病って言っても近くに居て話するぐらいしかできない俺が居なくても別にいいだろ?と言うと、蒲団を被って無視するし。面倒くさいからそのままほったらかしにしてきたが。
それはともかく、俺が今こうして全力で走っている方角はウォルスという国があった場所だ、と思う。
それは何故か。俺はおそらくウォルスという国があった場所の方からオーラ、そしてプラーナを感じたからだ。ウォルスがあった場所に行くと言っていたミシルの・・・
それを感じたとき、最初俺はもしかして本当に神獣が其処に居て、何らかのチカラを示せ、みたいな儀式みたいなことでもやってるのか?と思った。だが、途中でそのミシルの近くに何か嫌な雰囲気を感じたので、もしかしたら強い魔物か何かと戦っているのかと思い、こうして全力でその場に駆けつけようとしている。多分150kmから200kmぐらい離れた場所だとは思うが・・・
焦っているのは先ほどからミシルのオーラも戦っていたと思われる嫌な雰囲気も両方感じなくなったからだ。
決着がついた・・・のか?
俺は足を止めずに走りながらそんなことを考えた。
~~~
~闇の大陸の奥深く~
俺は強力な魔物でも居ないかと、1人でその辺りをうろうろ歩いていた。
先ほどから魔物は結構出てくるが、それなりに手ごたえはあるものの俺にとっては大した相手じゃない。
獣の力だけでも百獣の王と呼ばれているこの俺には。
「おっと。そう言えば此の近くだったか」
俺は闇の大陸に伝わる伝説を思い出していた。
「黒き魔神の巣・・・今の俺ならそいつも斃せそうだがな!」
ランザー・レオパルドはそうひとりごち、ガルルルルと笑った。
「逆にお目にかかって見たいもんだがなあ」
ここ数百年己に匹敵するほどの強さや魔力を持つものに出会ってない不満からそんな言葉が口をついた。
「そろそろあいつらを・・・・・・いや、まだまだ止めておくか」
闘争本能が満たされない己と互角ぐらいの強さを誇るやつらに喧嘩を売るか、と考えてみたものの、情報や奴らが得た領地を後からかっさらう、といった色んな利用価値がある同盟相手だから今手を出すのはさすがにもったいないと思い直した。
「ああーっ!強いやつでてこねえかなーっ!」
そんなことを言っていたら、
「んっ!?これはっ?」
黒き魔神の巣、と呼ばれている巨大な洞窟の中から、先ほどまではなかった膨大な魔力の奔流を感じた。
「おほっ!まさか本当に居やがるのかっ!出て来い魔神っ!」
そんな神をも恐れぬことを言い、洞窟の入り口の前に立っていると、膨大な魔力の持ち主が出てきた。
?
「?なんだあっ?ニンゲン?」
洞窟の中から出てきた者はどう見ても、大きな剣を持ち鎧を着た人間にしか見えなかった・・・




