第24話〜神剣〜
〜〜〜
〜とある島〜
カンッ!カンッ!
そこでは1人の女が作業をしていた。
そして、
「・・・こんなものか」
今まで打っていた斧の刃の部分を見てそう呟いた。
「・・・にしても、この私が精魂込めて打ったものが刃こぼれするとは・・・あの牛め、どんな使い方をしやがった?手入れも録にされてないし・・・」
女はぶつぶつ文句を言っていた。
そこへ、
「ミスミッ!治ったのかっ!」
と、女に声をかける者があった。
女、ミスミ・デンタはその者に振り向き、
「タウラッ!てめえどんな使い方をしやがったッ!なんでこの私の最高傑作がボロボロになってたんだっ!」
と、声をかけてきた者、タウラ・ミノスへ怒鳴り散らした。
「う、うむ。それがな・・・我はデュカ・リーナ様に召喚されいつもの如く目の前の生物を殲滅をしようとしたのだが・・・」
「デュカ・リーナ?・・・ああ、鬼ヶ島の。それで?お前は召喚されて鬼ヶ島の鬼の魔法でも受けとめたのか、これで?」
ミスミと呼ばれた女が先ほどまで鍛えていた2つのバトルアックス、二丁板斧を指し示した。
「否・・・我が戦った相手は人間だ。斧に傷をつけたのはその人間のカタナだった・・・」
「はあっ!?人間の刀だとっ!寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞっ!私の鍛えたこれがたかだか人間の刀如きに負けるわけないだろうがっ!」
「・・・事実だ。我の切り札すらも破られた・・・しかし、言い訳じみているが彼奴はただの人間ではなかったような・・・」
「切り札ぁ?ということはお前の鉄の身体もその人間とやらの刀で斬られたのか?」
「・・・そうだ。胴斬りに真っ二つにされたので再生するのに時間を要したのだ・・・」
「・・・まあ、刀ならば業物なら鉄をも断つ、斬鉄と呼ばれる術があるらしいが・・・ただタウラ程度の硬度はともかくこの鉄島の砂鉄を使った私の傑作に傷をつけるなどと・・・」
「我程度の硬度とは、聞き捨てならぬが・・・斬られたのは事実・・・だが、1撃は確かにその人間に入れた筈なのだがな・・・」
「なに?・・・それでも斃せなかった?・・・ということは、その人間は人間が作りし魔導の使い手、妖術師?とやらかもな・・・だが、だとすれば・・・」
「なんだ?」
「その人間は、ただお前よりも強かったというだけだろうが・・・私の斧に傷をつけるほどの刀・・・もしかすると人間の妖術師が扱うとされる神々の武具の1つかも知れんな・・・」
「ぐっ・・・しかし神々の武具とは?」
「ああ。それは、かつて神や神獣が創ったもしくは神や神獣が武具に姿を変えたモノ、とされている伝説上のモノだがな・・・しかし、
もし本当にそれなら使い手はともかく私の二丁板斧に傷がついたのも納得できるな・・・」
「貴様!この島の覇者の我に向かっての数々の暴言!・・・・・・貴様が優秀な鍛冶師でなければとっくにそのそっ首を刎ねているところだぞっ!」
「・・・まあ、落ち着けよタウラ?赤いものでも見たわけじゃあるまいし・・・・・・だが、面白い!タウラ、お前はいずれその人間とまた戦うつもりなんだろ?」
「当然だ!今度会ったときこそ彼奴をぶち殺してくれるわっ!」
「よし、分かった!これを返すのはもうちょっと待ってくれ。試してみたいことがあるんだ」
「な、なに?修復は終わったのではないのか?」
「それは終わったさ。でもお前の話を聞いてもう少し強力なモノにしてやろうと思ったのさ」
「・・・そうか。我も強力になるのなら文句はないが・・・だが、なるべく急いでくれよ。デュカ・リーナ様にいつ召喚されるか分からないからな・・・」
「まかせとけって!・・・・・・いや、三日はくれよ」
「・・・・・・」
その黒い髪の小柄な女、ミスミ・デンタは再び二丁板斧への作業を再開した。
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なんだ、この声は・・・?
私は何処からともなく聞こえてきた声に驚き辺りを見回してみたが・・・
「何も居ない・・・?」
『・・・汝、何処を見ておる・・・我は汝の下に居る・・・』
下?そんな声がして下を見るも岩しか見えない。
『・・・汝、貴様は人間じゃな・・・?』
声はすれども姿の見えないそれはそんなことを聞いてきた。
「何者かは知らんが。そうだ!私の名はガロウ・サイハ!火の大陸の首都カグツチ政府の警備部総隊長ガロウ・サイハだ!」
『・・・カグツチ?その名は知らんが・・・だが人間よ、何故我の眠りを妨げる・・・?』
「だから、何処だっ!何処に居るっ!?」
『・・・汝の下じゃと言っておろうに・・・まあ良い・・・我は火の竜、数万年の昔、悪しき者に此の場へ封印された、火の竜じゃ・・・』
「!!?なんだとっ!?」
まさか、ナシラ殿の勾玉はこの存在に反応したのか・・・
『・・・岩の姿になってはおるが・・・しかしあの悪しき者は強大すぎた・・・我は気づけば此の場から動けなくなっておった・・・して、汝は何故我の眠りを妨げた・・・?』
「眠りを妨げた?確かに私は岩の上に登ったが・・・」
『・・・汝からは強大な力を感じる・・・魔力・・・?ではないが、それに近しい強大な力を・・・それを感じ目が覚めた・・・』
私に強大な力だと?・・・・・・・・・!もしや。
「火の竜よ。お前が言う強大な力とは・・・これかっ!」
私はオーラを全開にし火の竜に尋ねた。
『・・・・・・そうか・・・汝はあの人間と何か繋がりがあるのか・・・』
「・・・あの人間?何だ?誰のことを言っているっ?」
『・・・・・・そうだな・・・もう数百年にもなるか・・・あの人間が我の魔力と想いを込めたアレを抜き去ってから・・・』
「な、なにっ!?そ、それは、もしや・・・」
『・・・我の魔力と想いが込められたソレは汝のもつ物に形を似せていた・・・いずれ自力で封印を解くためにその武器のような形を・・・』
「!!・・・・・・神剣」
『・・・抜いた人間もそんなことを言っていたな・・・』
「ということはかつて神剣は此処に在ったが、今は無い、ということか・・・?」
私は思わぬところから神剣の存在を知った。が、
『・・・250年程前になるか・・・汝と似た力の持ち主が来てから・・・人間の寿命とは精々100年程度であろう・・・?』
「・・・長生きすればそのぐらいだな。何故そんなことを聞く?」
『・・・その人間はこう言った、(自分の子にこれを受け継がす。絶えることなき魔物に対抗するために)と・・・だからあの人間の子孫なり何なりが我のあれを持っているのではないか・・・?』
!!?
私は聞いていて気づいた。
火の竜が言うようにとある人間が250年程前に火の神剣(と伝承ではされている)を抜いたとされているのに、その誰かが言うように昔から存在する魔物が何故最近になって活性化してきているのか、と。
そして神剣は最近の魔物の活性化に関係がないのか、と。
だとすれば他に何か原因があるのだろうか・・・
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神獣レヴィアタン・・・水を司る獣。水の大陸の守護神。多分でかい。
ガルディアから聞いた話をまとめれば俺の認識はこんなところだった。
そして、魚民がレヴィアタンを海神と言ったので何故、海の神と崇めるのか魚民にその理由を聞いたところ、魚民が現在のように知恵ある生物の種族になったのは、なんでもここ最近・・・数百年のことらしい。
自称天才の魚民が種族のお偉いさんから聞いた話では、当初こいつらの種族は現在も普通に海を泳いでいる他の魚と大差なかったらしい。
ところが、数百年前のある日こいつらの種族の先祖の1人(匹?)が突然頭の中に神託のようなものを受け、それから思考を音声として表すことができるようになり、生命力も寿命がかなり増え、身体の形も両生類のように水でも陸でも生活できるほどに変化していったらしい。そいつの子孫(卵)たちは生まれた時点ですでにその能力を身につけていたとか。
そして、その1番最初のやつが神託の際に聞いた声が名乗っていたのがレヴィアタン、だったというわけだ。それ以降、そいつとその子孫達は自分たちを大幅に進化させてくれた存在、レヴィアタンを海の神として崇めるようになったんだとか。
その海のほうでのレヴィアタン話をガルディアに聞かせてやると、
「やはり、レヴィアタンは実在したのだな・・・伝承通りに・・・」
と、感激した様子だった。
「でもな、ガルディア?確かに実在はしてたかもしれないが、結局魚民に聞いても何処にいるかは分からず仕舞いだったぞ」
俺は魚民と別れて再び航行を開始したガルディアの船に乗り、そんなことを言った。
「だが、トウヤ。居る場所は分からないがその魚民とやらの話から判断するには、広くとも水の大陸の領土内とは推測できる。これを踏まえて再度祈祷師に占わせれば・・・」
「今レヴィアタンが何処にいるか分かる、ということか」
「そうだ」
「それなら、どちらにしてもまずレヴィアスに帰るのが先決だな」
「そうだな・・・この速度で進めばあと1週間かからないとは思うが」
「まあ、可能性が見えただけでも今回ガルディア達が来た甲斐があったってもんだな」
「そうだな。最初にトウヤに今居る場所が火の大陸と聞いたときは祈祷師も当てにならんと思ったが・・・・・・?(祈祷師は正確には何と言ったんだったか?確か・・・『その場所に行けば神獣の力を持ったモノに会える』だったか。妙に回りくどい言い方だったな。はっきりと神獣と言ったので疑いもせずに我らはそこへ向かったが・・・)」
ガルディアが何かを考えるように黙ったので、俺はかなり後方となった魚民が居た岩を振り返ったが、魚民の姿はもう見えなかった。・・・鳥に狙われるなよ。
〜〜〜
私は火の竜に疑問をぶつけてみた。神剣の在処すなわち250年程前に神剣を抜いた人間が誰かを・・・しかし、神剣を抜いたというその人間については、おそらくオーラを取り扱っていた、というぐらいしか特徴がなかったらしい。というよりその人間はただ、何かしらのチカラを感じたその剣を抜いただけだろうから誰かは分かる筈もない・・・
タチオ殿が言っていたが、オーラを扱いしかも戦いに使用する者というのは、武器や文明が発達した現在でこそ少ないがかつてはこの大陸の戦闘方法の主流らしく、扱える者の数も相当数居たらしい。
史実に因れば、初代スサノオが大陸を平定した際には人間同士の争いはほぼ無くなり戦う術よりも様々な文化や技術を発展させるほうにスサノオが創設した政府は力を入れたとのことだが・・・・・・
魔物は現在ほどではないにしろ古来より存在していたのに何故戦う術はそこまで重要視されなくなったのか・・・?
勿論、時の妖術師とやらが大陸中の人が暮らす場所を護るため結界を張り下手な場所に行かなければ安全は保証されていた、という理由もあるのだろうが・・・最近になって魔物の活性化に伴い身体的能力に頼らずとも魔物に抵抗できる、大砲などの技術は確立されてはきているものの・・・腑に落ちない。
私が何故悠長にそんな思考に耽っていたかと言えば、
「それにしても、どうしたもんかのぅガロウ殿?」
そうナシラ殿が言うように魔物の活性化に対処するにはどうしたら良いかを、カリュウ村の宿まで戻って膝を突き合わし皆で会議をしていたからだ。
私が火の竜と話したあとで皆に合流すると、私以外の者は私が岩の上でずっと独り言を言っているように見えたらしい。
皆には火の竜の声が聞こえていなかったのか?と疑問に思いつつ、私は岩の上で火の竜の声を聞いたことやかつては神剣がありそれを誰かが抜いたこと、それを聞いた自分の見解として神剣は近頃の魔物の活性化に関係ない、という説明をした。
勾玉の反応については憶測だがその火の竜の存在だろう、ということも付け加えて。
「そうですね・・・もし神剣が見つかればどうするか、ということもそこまで詰めてはいませんでしたが、見つかれば何か分かるかもしれない魔物も何とかなるかもしれない、という楽観的な意見が多かったもので・・・」
私は唸りながらそう言った。
「そうじゃのぅ。じゃが、オーラじゃったか?儂もそのような戦う術があるのは初耳じゃの。格闘大会の時も女だてらにやたら強いとは思っておったが・・・そのニルナ・カナワの師、タチオ・ヒノカ殿とか言ったか?その御仁に色々と聞いてみるかの・・・神剣を引き抜いた者もオーラを使い、その御仁も現在この大陸でのオーラの扱いにかけては第一人者じゃろうからな・・・」
「ええ、私もそうしようとは思ってました。あの山から一番近い集落であるこの村の方ということもありますからね」
「まあ、ガロウ殿の考え通り神剣が魔物活性化に関係ないとしたら、現実的な対処方法としては警備の強化や各町村への武器の配布などかの・・・魔物の元を絶てる可能性があったための上の方の今回のこの力の入れようを考えれば、そんな意見も言いにくいとは思うが・・・」
「・・・まあ、直接シバ殿や姫様に訴えるのは私ですので・・・」
私はそう言い、そっと溜め息を吐いた。
〜〜〜
イグナを出て4日目。
俺は初めて海の魔物を見た。
最初は前方に何かでかい物が浮いているな、ぐらいにしか思ってなかったが、
ドンッ!ドンッ!
ガルディアが大砲をぶっ放していた。
「撃てっ!奴を沈めろっ!」
俺がガルディアの船に跳び乗ったらガルディアがそんな指示を出していた。
「なあ、ガルディア?あれは魔物なのか?」
俺が聞いてみると、
「ああ。奴はオクトリーチ・・・船喰いと呼ばれる大蛸だ」
「ふうん。強いのか?」
「もう2〜3発お見舞いしろっ!奴を近づけるなっ!・・・・・・あ?ああ。見ての通りだ。動きこそ遅いが異常な耐久力を持っている」
ガルディアがさらに指示を出したあと、そう言って10mぐらい先に居るばかでかい蛸みたいな奴を指した。
「耐久力か・・・見た目はフニャッとしてるのにな。食えるのかな?」
「く、食うっ?食って大丈夫かどうかは分からんな・・・以前奴と遭遇したときは十発程でようやく沈んだからな。触手を切り取ったりする余裕もなかった」
「そうなのか。でも、何だかんだ言っても蛸の一種だろ?食えそうだけどな・・・」
「まあ、食えるかも知れんが・・・次弾装填急げっ!」
「なあ、俺があいつをやっていいか?」
「何をやっている・・・!急げ!・・・トウヤ、今何と?」
「いや、だから俺があいつをやっていいか?大砲だとそのまま海に沈むだろ?」
「・・・だが、どうやってやる?」
「そりゃあ、これだ」
俺は炎斬を抜き、見せた。
「トウヤ・・・私は確かにお前の強さを知っているが、船に跳び乗ったときのように足場はないんだぞ?」
「大丈夫だ、此処からやるから!まあ見てろよ・・・」
俺はそう言い、炎斬にのみオーラを込めた。
そして、
「ヒノカ流 九天奥義っ!牙っ!」
俺がそう叫ぶと、炎斬はその姿を大きく太くし、オクトリーチへ真っ直ぐ伸びていった。
ザシュッ!
「手応えあり、だな」
オクトリーチの頭あたりに炎斬が刺さったのを確認した俺はそのまま下に炎斬を振り下ろした。
ズバッ!
「・・・・・・!」
縦に真っ二つになったオクトリーチが驚きに満ちた目でこちらを見ていた。気がしたが・・・
さらに炎斬をそのまま縦に横に振って身体を切り刻み拾えそうな大きさにした。
「よし・・・!これで確実に死んだだろ。あとは拾えそうな身を拾うか」
俺はそう言い、炎斬を引っ込め元の形に戻した。
・・・・・・?
静かだな?
と思って周りを見てみると
「・・・トウヤ」
ガルディアを始め、ガルディアの船に乗っている奴等が驚いたように俺を見ていた。
「何だ、ガルディア?早く拾わないと蛸の身が海に沈むぞ?」
「あ、ああ・・・いや、そんなことよりも!
トウヤのその剣はいったい・・・?」
「これか?いや、俺もよくわからんが何でもうちのヒノカ家に代々伝わるモノらしいぞ。剣技と一緒にな」
「ヒノカ家の家宝みたいなもの、ということか・・・しかし、いくらオーラという特殊な力があるとはいえ剣が形を変えるとは・・・」
「うん。俺も仕組みはよく分からん。でも、形を変えることを前提にして九天の奥義・・・つまり剣技も受け継がれてるからな。最初からそういうものだったんだろ」
「・・・まさか、神々の武具ではないのか・・・?」
「いやあ、それはどうだろうな?そんなに大したモノじゃないと思うぞ。
親父から聞いた話だと何百年か前からある由緒正しい剣らしいけど、神々の武具ならそれこそ何万年も前に創られたものじゃないか?」
「・・・そうか。だが、それでも珍しい・・・」
「まあ、これのことよりも今は蛸だろ。網かなんか貸してくれ」
俺は今にも沈みそうな蛸の身の破片を掬おうと急いだ。
〜〜〜
『・・・久方ぶりに訪れた人間・・・かつて訪れた人間・・・人間が持ちうる最も強大な力・・・オーラ、とかいったか・・・魔界の者や龍神界の者が持つ魔力とは似て非なるモノ・・・我の魔力と想いが込められたアレを扱うには必要なもの・・・何故、人間は・・・』
火の竜が岩の姿で思考に耽っているそのとき、山に生暖かい風が吹いた・・・
そして、
「始まりの場所・・・此処から私の偽りの生が始まったのね・・・」
そう呟く1人の少女が其処に居た・・・




