第22話〜昔々、あるところに・・・〜
大陸の奥深くに棲息する邪悪な竜・・・私は子供のとき父や母、近所のおじさんやおばさんにだから決して村の南の峡谷には近づくな、と忠告されていた。
ただ子供というものは禁止されるとそれをやりたくなるという業の深い生き物で、結局は仲の良い近い年の子供と示し会わせて峡谷に行った、というのはむしろ必然とも言えるだろう。
そして・・・
現在は知らないがその時は確かにソレは其処に居た。緑色の皮膚、鱗、巨大な体、ソレは寝ているように見えた。
そして、それを見て興奮した私達は騒いだ。また、見るだけでは飽き足らず近づいて触った。いや、臆病な私以外が触ろうとしたときだった・・・その化物が自らの回りで騒ぐ小さな生き物に気づいたのか、徐に目を覚まし、そして無造作にその小さな生き物達を、呑み込んだ・・・そして、口を開け空気が震え、また寝た。
一瞬何が起こったのか分からずに惚けた。
だが、我に返り目の前で起こったことを小さな頭ながらに認識した私は恐怖に駆られ一目散にその場を後にした・・・
どうやって家に帰ったかも憶えていなかったが、気付くと自分の布団に居た。あれは夢だったのでは?とも思ったが親しかった子供達の親が子供の行方を探していたので夢ではなかったと思い直した。同時に忘れることにした。
やがて、年月を経て私は大人になった。
生まれ育った村を出、より大きな村に働きに出た。
新たな場所で働くうちに1人の青年と出会った。
そして、家庭を持ち子供をもうけた。
子供が歩ける年になると、私はふと幼い頃のことを思い出した。
何故か幼い頃私がされた忠告を自分の子供にもした。私の体験も交えて・・・
そんな折、夫となった男性が仕事にあぶれた。私達は私の故郷に帰ることにした。そして何年か経ったある日の朝、子供が居なかった・・・
最初は何が起こったのか分からなかった。だが我に返ると喉が千切れるほどさけんだ。探した。探して探して探しまわった。尋ねた。泣いた。懇願した。祈った・・・
しかし子供はいつまで経っても見つからなかった・・・
そんなある日・・・
私は再びソレに出会った。ソレは幼い頃見た姿の記憶と寸分違わず、其処に居た・・・
▽▽▽
「私の子供を返してっ!」
私はソレに向かって叫んでいた。恐怖に駆られながら。
『汝・・・』
大きなソレは小さな私を見つめて、喋りかけた。
「あなたでしょうっ!?私の子供を・・・」
私は口ごもった。
『矮小な生き物が我に・・・恐ろしくはないのか?』
「恐怖よりも何よりも私はあの子に会いたいのっ!お願い。お願いします、あの子を返してっ!」
『汝、何を言っている・・・?』
「私の子を返してっ!」
私は無我夢中で叫んだ。
『いや・・・愚かなる生き物と意思を通わせようとした我の過ちか・・・』
何故私の言うことを聞いてくれないのか。何故私の子供に会わしてくれないのか。何故困ったような瞳で此方を見てくるのか・・・
埒があかないと思った私は、
「○○ちゃーんっ!お母さんよーっ!何処にいるの!出ていらっしゃーいっ!」
大方精神に異常をきたしていたのだろう、なりふりかまわず叫んだ。
『やはり愚かなものだな・・・ヒトというのは・・・』
「出てきて頂戴・・・!」
叫んでいるうちに涙が溢れてきた。
『だがこれがヒトか・・・哀しみ、慈しみ、愛し、憎み、泣き、叫び・・・絶望する・・・』
と、私が絶望にうちひしがれているその時だった。
突然、あたりに生暖かい風が吹いた。
『・・・!』
その時、大きなソレがとても驚いていた。ように見えた。
「なに・・・?」
何が起こったのか理解できなかった私は泣くのを忘れそう呟いていた。
『我より強大な魔力だと・・・!?』
大きなソレが驚いた口調でそう言った。
そしてその視線の先には・・・
『やあやあ♪初めまして。僕を呼んだかい!?』
そう喋る1人の青年が立っていた。
「貴方はだれ・・・?」
『おやおや!僕を見ても驚かないの?君は変わったニンゲンだねぇ!』
?ニンゲン、という発音の処に違和感を覚えた・・・
「貴方も人間でしょう?」
『ぷぷっ。面白いなぁ、君は?確かに姿だけはこの世界で一番多い知恵ある生物に似せてるけどね♪でも、』
と、青年が大きなソレのほうを向いて、
『君は僕が何者か分かるよね、火竜くん?』
と、言った。
火竜と呼ばれた大きなソレは、
『汝は・・・魔界の・・・』
『そ♪悪魔だよ!』
悪魔・・・?
『やはり・・・汝のその魔力、この世のものではない・・・』
『へぇ、さすがだね、龍神界の落とし子は♪
でもね、自慢じゃないけど僕はただの悪魔じゃないんだよ♪』
『・・・?』
『そりゃそうだね。何を言っているか分からないよね♪
僕はね・・・魔界の統括者なんだ』
『・・・!!?』
『まあ、信じられない?もしくは何言ってんだこいつ?みたいな感じだろうけどね♪でもね事実なんだ♪』
『・・・魔界の統括者と言えば、その姿巨躯にして、無限の魔力を誇り、無数の魔法を扱う全ての魔法を作りし者・・・という伝承を龍神界にて聞いたことはあるが・・・』
『へー!僕ってもしかして有名なの?』
『・・・汝が真に魔界の統括者なら、な・・・尋常ならざる魔力ではあるが・・・』
『本当だってば!全く疑り深いな、火竜君は!』
『・・・だが、それが真だとすれば汝は如何してこの世界へ・・・?』
『うん、そこだね!重要なのは!
実はね・・・・・・・・・・・』
『・・・?』
青年がもったいぶって、
『暇潰しなんだ!』
?意味の分からないことを言った?
『・・・!!』
『驚いた?でも本当のことだよ。何しろ魔界っていうところを制覇してからこっち、本当にやることがなくなったんでね。それでこの世界まで暇潰しに出張ってきたってわけだ』
『・・・仮に汝が魔界の統括者ということが真としよう。そして魔界を統括した故に退屈しのぎにこの世界へ顕現したことも真としよう・・・しかし、では何故汝はこの場所へ現れた・・・?我の前へ・・・?』
『ほうほう!興味深いことを聞いてくるねっ?まだ疑っているふうなのが気になるけどね♪
実はね・・・』
『・・・・・・』
『適当なんだ♪』
『・・・汝』
『というのは嘘でね。本当はこの子に用があるんだ♪』
と、青年が私のほうを見て、
『君はいいね♪憎しみ、哀しみ、絶望。そういう負の感情が桁外れに大きいよ!その点、魔界の奴等なんてのはもうダメだね!自分こそが最強だとか、魔界最高!とか妙に楽しそうなやつばっかりだもん。だから君のその歪んだ心と桁外れに大きい負の感情は珍しいし素晴らしいよ!』
そう言った。
「あなたは何を言って・・・?」
『フフフフフッ。まあ理解できないだろうねっ!でもね、僕は嬉しかったんだ!・・・いい暇潰しが出来そうだっ!』
「・・・?あなたは一体・・・」
『そうだね・・・君達の世界の認識で分かりやすく言うと、神様みたいなものかなっ?
まあそれはいいとして。君は自分の子供に会いたい?』
「!!?」
『ああ、そんなに驚かなくてもいいよ!今言ったように僕は神様みたいなものだからね!君の身に何が起こったか、というのもお見通しなのさっ!・・・・・・でもね・・・残念だけど君の子供はもうこの世に居ないんだ』
「!?うそっ!うそよっそんなことっ!!」
『いいね!いいね!その哀しみの感情!・・・でもね、嘘は言っていないんだ。君の子供はもうこの世に居ない。
何故なら・・・この火竜くんが殺したからっ!』
!!?
『!?・・・汝は何を言って』
と、火竜が言いかけたが
『闇檻』
青年が火竜に手を翳してそう唱えた途端火竜のまわりを黒いモノが覆った。
『うん、今良いところなんで君は、黙っていてくれるかな♪でだ。全てを見通す僕が言うことと言えどもそうすぐには信じられない、いや信じたくないよね?もう自分の子供に会えないなんてさ』
「うそよね?うそ何でしょうっ・・・!」
『フフフ。口ではそう言いつつも本当は君ももう諦めてるんじゃない?だって、哀しみや絶望の感情がどんどん強くなっているよ♪』
「そんな、そんなことないっ!私は、私は・・・」
『でも、安心して♪1つだけ君の子供に会える方法があるんだっ!』
「ほ、ほんとうっ!?あ、会わせて!あの子に会わせて!!!」
『ただね、今すぐってわけにはいかない』
「何故!?何故なのっ!?」
『それはね・・・いや。それよりも君は本当に自分の子供に会いたい?・・・例えそれがいつの日か分からなくても、そしてどんな形になったとしても?』
「・・・会いたい。抱きしめ足りない分を抱きしめたい。愛し足りない分を愛したい。同じ時を過ごしたい・・・」
話すうちに、また涙が止まらなくなった。
『そっか♪じゃあ、これをあげるよ♪』
青年はそう言って何処からともなく黒い石を取り出した。
「・・・これは?」
『君の願いを叶える石さ!』
「ほ、ほんとう!?」
そう聞いて私はその黒い石を受け取った。
『ああ、そうさ!ただしそう簡単なことじゃないけどね・・・・・・そうだね、1つ教えといてあげよう!・・・一握りの例外を除いて、この世の生きとし生けるものは全て、一度その生命を失えば二度と取り戻すことはできない。でもその生命を失ったとき輪廻転生の環に組み込まれ時を経、その魂は再びこの世界に生まれ出ることができる』
「どういう・・・?」
『つまりだ!君の子供は今はこの世に居ないけど、いずれは、一年先か百年先か万年先か分からないけど、生まれ変わってまたこの世に現れるってことなんだ!』
「で、でもそれでは私が」
そんなに気の長い話では生きていない・・・
『そのためのものさ!』
そう言って青年は私が受け取った石を指さした。
「・・・これが?」
『そう!君がそれを自らの魂に取り込むことによって君の生命、寿命は大幅に増幅される。そうやって長い間待てばいずれは君の子供の生まれ変わりがこの世に再誕し君と再会できる、というわけさ!』
「ほ、ほんとうに!?で、でも、私の子供の生まれ変わりはどうやって見つければ・・・?」
『それも分かるようになるよ!君がそれを受け入れればね♪』
青年は再び私が受け取った石を指さした。
『さあ、どうする?子供に会えるかどうかは君次第だよ!』
本当にそんな話があるのだろうか・・・そう思った私だったが、色々な感情や理性、考える力が麻痺していたのだろう。青年の言葉を信じた。信じて、しまった・・・その意図も知らずに
「分かったわ・・・あなたの言うとおりにしてみる・・・どうすれば良いの?」
『あはっ♪簡単さ!願えば良いんだ、その魔石に!
(長生きしたい。長生きして息子に会いたい)ってね♪』
何も知らない私は素直にその言葉に従った・・・
「色々とありがとう。では、そうやってみるわ・・・」
『おっと!じゃあ、僕は邪魔をしちゃ悪いんでもう行くね!いつの日か君の子供に会えるといいね♪』
と、その顔をぐにゃりと歪めた。笑ったのだろうか・・・?
「待って!結局貴方は何者・・・魔界?神様?・・・ううん、いいわ。聞いても分からなかったから・・・」
『アハハ!そうだね!それに別に僕のことは気にしなくてもいいんじゃない?』
「でも、いつの日か私が子供に会えたら心の中でお礼を言う相手が誰だか分からないと困るもの・・・せめて、名前だけでも・・・」
『ププッ!やはり面白いね君は!まあ、いいや。僕の名前はーーーーーーー』
言いながら生暖かい風と共に青年の姿が消えた。
デュカーーーーー
名前の後半が聞き取れない言葉だった。
1人になった私が辺りを見渡すと先ほどまで火竜が居た場所が火竜共々何もなくなっていることに気づいた。
が、特に何も思わなかった・・・・・・
それよりも私は青年が魔石と呼んでいたものに願いを込めた。
そして・・・
私は人ではなくなった・・・
△△△
人から人ではないモノに変貌した私が村に戻ったとき、皆の私を見る目が変わった。夫でさえも・・・
何故なら私の姿は異形のモノとなっていたから・・・鬼と呼ばれ悪魔と蔑まれた。石を投げつけられ、恐れて逃げ出されたりもした。
子供を失ったものと違う種類の絶望を感じた私はそんな自分の状況に取り乱した。取り乱して泣いた。喚いた。叫んだ。
そして、気づけば・・・
生まれ故郷の村は無かった・・・
その時私は己のしでかしたことを悟った・・・
私がやったのだ、と
自分の手で消滅させたのだと・・・
だが、感情さえもヒトではなくなってしまったのか、一頻り哀しみにうちひしがれた私は僅かな時間で立ち直り、生まれ故郷のあった場所を後にした。
己の存在の確認、得た能力の試用、焦燥感をなくすため。
何かしら目的らしきものが自分の中にあったのだろう。
私は新しく得た自らの能力、魔導を様々な場所で行使した。
異形のチカラを私に与えた与えてしまった者への憎しみを忘れないよう、子供との再会のため人の心を何処かに置き忘れないよう、魔石を渡した者とかつてヒトだった頃の名前を合わせ、私はデュカ・リーナと名乗った。
生まれ故郷の村があった大陸、別の大陸・・・
幾年月・・・数万年・・・その間、徐々に年老いていく自らの肉体に子供との再会までに自らの寿命がいつまで持つのか、という焦りから魔導を駆使し人を拐い子供めいたものも創った。結果、その子らが人に仇なすものとなっても、子供や第2の故郷ができれば構わなかった。
鬼族は私の子供の代替品となった。
そして、永すぎた偽りの生命にある程度満足し、身体や魔力の衰えを顕著に感じ、無理やり延ばされた寿命にも終幕の足音が聞こえてきた。
そんなある日のことだった・・・
待ち望んだ子供の生まれ変わりの存在を感じたのは・・・
だがその存在は私と同じく、ヒトではなくなっていた・・・
▽▽▽
転送の魔法で辺りが闇に覆われていたその存在の元へ訪れた私はしかし、懐かしさをあまり覚えなかった・・・そう、その感情はどちらかと言えば・・・
「貴様は・・・?もしや火喰い島の者か?」
闇夜の中、その漆黒の大鎧を身に付けた青年は私を見て、そう言った。
「貴方・・・魔の力を・・・」
姿は人に見えるその青年の人に在らざる魔力を感じたとき、私はどうしようもない哀しみに襲われた。
「魔の力、だと?」
「何故。何故なの・・・?何故魔の力を・・・?」
「そうか。貴様はどういうわけか知らんが私があの方から頂いたこの力の存在に気づいたというわけか・・・」
「あの方・・・?」
「そうだ・・・偉大なる魔界の統括者、真魔の祖と呼ばれるデュカストテレス様だ・・・!」
「デュカス・・・・・・!あ、貴方・・・まさか魔石に願いを・・・」
「・・・!鬼族の老婆よ。貴様は何をどこまで知っている・・・!」
何故私は、生まれ変わった我が子に憎しみの目で見られているのか・・・
「・・・知っているわ。あれが自分の寿命を延ばしたり力をくれたり願いを叶えてくれるだけの都合の良いもの、じゃないということはね・・・」
「なに・・・?」
「・・・あれは、文字どおり悪魔の力よ・・・手に入れれば願いの代償に余程強い想い以外はヒトとしての心を失うわ。そしてヒトだった頃の繋がり・・・かつての知り合い、特に親しかった大切な家族、友人などをいの一番に目の前から消したくなる・・・・・・違うかしら?」
「・・・その話ぶりだと貴様も魔石でチカラを得たように聞こえるな・・・何者だ貴様!」
数万年このときを待ち望んだ筈なのに、このために今まで大切なものを失っても生き永らえてきた筈なのに・・・
神人・・・貴方は何故そんな目で、そんな恐怖と憎悪の入り交じった瞳で私を見つめるの・・・?
「そうね。順を追って説明しましょうか・・・私の名前はデュカ・リーナ・・・先ほど貴方が言った通り火喰い島、鬼族の者よ」
「・・・やはりそうか。だが、あの島の者は生まれつき魔力が高く魔石に頼らずともチカラを持っている筈だ・・・それにかつて私はあの島へ行ったことがあるが、貴様のような奴は見てもいない・・・!」
「・・・そうね。それは長くなるんだけど、私の生い立ちを」
その時だった。
ズシャッ!
と音がし、背中に凄まじい痛みを感じた・・・
「かはっ!」
私は背後から斬られ、突っ伏した。
「ハッハー!やったぞ!魔力が高そうなやつだと思ったらやっぱりだ!これは凄いっ!魔力が大幅に上がった!」
声のしたほうを見ると、狼の顔をした化物が剣を持って立っていた。
それを見た、私は、
「くっ!邪魔を!!疾風!」
最速の風の魔法で狼を吹き飛ばした。
「ぎゃあああっ!」
その狼が飛んでいくのを見ながら我が子に向き直ろうとしたら、
「それは油断というものじゃねえか?」
ドンッ!
声がしたと思ったら私は地面に組み伏された。
「ぐっ!邪魔をしないで・・・頂戴っ!」
魔力を全身に込めて、身体を強化し今度は自身を組み伏せていた獅子の化物を押しのけた。
「うおっ!婆のくせにすげえ力だな。
これも魔力か!?」
獅子の化物が驚いて僅かに下がった。
?吹き飛んでいない?どうもあまり力が入らない・・・私の魔力が減少している・・・?
と、私が違和感を覚えていると、
ドシュッ!
私の脇腹に漆黒の剣が突き刺さった・・・
私の子の持っていた漆黒の剣が・・・
「ガハアッ!!あ、あ、貴方。し、しん」
「・・・貴様が何者かなどはどうでもいい・・・!色々知りすぎている危険な貴様は此処で討つ・・・!」
我が子、神人の生まれ変わりが私に剣を刺しながら囁くように言った。
と、その時、
「よくやった、皆の者。そやつは悪名高き鬼婦神デュカ・リーナ!かつて様々な国や魔物を滅ぼしてきた、悪魔のような存在じゃ!」
少し離れたところからそんな声がした。
力を振り絞って見てみるとそこには、悪魔が居た・・・・・・いや、正確にはかつて見たあの青年に匹敵する程の魔力を纏った化物が居た。
そして、禍々しい魔力で魔方陣を描きながら、
「シンド殿っ!そのまま離すでないぞっ!」
と、我が子の生まれ変わりに叫んでいた。
嗚呼、現世の名前も神人なのね・・・と、今にも死にそうな頭の片隅で、そんなことを思った。
「月光!」
魔力を纏った化物がそう叫び、闇夜の月が瞬いた、と思った瞬間肉体が消滅し、何も考えられなくなった。
だが、最期に我が子に憎しみを持たれたまま消えるのはいやだ・・・!
そう思った途端、身体の奥深く、魂に火が灯った・・・気がした・・・
△△△
〜〜〜
遠く離れたとある場所、1人の青年・・・の姿をしたモノが目を瞑りその一部始終を見ていた。そして、
『やあ、中々面白い見世物だったね♪
最後は狙い通り♪でもないか・・・待ち望んだ最愛の我が子に貫かれて殺されるっていうシーンを期待してたんだけどね・・・・・・惜しかった。せっかく親子揃って力を上げたのにな。まあ、概ね満足した!』
そう、独り言を言っていた。
『それにしても・・・本当に消滅したのかな?』
自分の力を取り入れたモノがあっさりとやられたことに微妙に納得できずその青年は首を傾げた。
〜〜〜
気づくと人間の男と女が此方を心配そうに見ていた。特に額を・・・
「○○、それは?」
「○○ちゃん、一体どうしたの?」
此方を見てそう言う人間が鬱陶しくなり、無意識にその2人に手を翳していた。
人間が消えたところを見ると、魔力もそれなりに戻っているようだ。
姿見があったので見ると、どうやら私は命を拾ったらしいが・・・見た目は人間の少女になっていた。
何故か角は生えていたが・・・
すぐにでも、あの者たち・・・狼、獅子、悪魔に復讐し、我が子の生まれ変わりに会いに行きたいところだが・・・今はよそう。
この身体でどの程度戦えるかも分からないし・・・それに我が子の生まれ変わりが魔の力を取り入れたということは、考えようによっては焦らずともそう易々とは死なないということだ・・・時間をおき力を蓄え時期を待とう。
私はそう考えると人間の家を出た。
まずはこの大陸を離れて・・・そう考えると私は闇の大陸を後にした。
〜〜〜
私はどうやら寝ていたようだ。えらく懐かしい夢を見ていた気がしたが・・・
神獣のおかげで思った以上にチカラが回復したので試しにと、とりあえず狼を倒したが・・・それで気が抜けたのかもしれない・・・
誰にも入られないように此の場所には魔導結界を張ってはいるが。
「でも、油断はできないわね・・・」
そう独りごちて、出発の準備をした。
そして、
「これは、大丈夫かしら・・・?」
自らの魂に埋め込まれた魔石を参考に造ったあるモノを見ながらデュカ・リーナはそう呟いた・・・




