↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚飾の歴史に、夢は解けて【原案準拠】  作者: はる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/25

第十二話 並ぶ居場所

「おいおい、本当に一緒にいるじゃねーか。どうすっかなぁ…」


 3日程歩いた先にある名もない村の前。乱暴な口調の大柄な神官がふたりの前に立っていた。

 ファルは、神官服を見るや否やサラの前に庇うように立ち塞がる。


「教会は相変わらずですね…。退いて頂けると助かるのですが」


「んー…後ろの穣ちゃん置いてくならお前は通すぞ。間違ってもやり合いたくねぇからな」


 大柄な神官は勘弁してくれと言わんばかりに万歳をして見せる。


「それでは、無理に退いて貰うしかないですね」


 ファルが一歩前に出ると、大柄な神官は大袈裟に後ろに下がり距離を取り、両手を前に出して大袈裟に振って見せた。


「待て!待て待て待て!頼むからやめてくれ!な!な!」


「離れても無駄ですよ?」


「だぁぁ!やめろ!やめてくれ!やめて下さい!」


「煩いですね」


 サラは、ふたりのやり取りに思わず吹き出してしまう。すると、ファルが面倒そうな表情でサラを見た。


「面白くないですからね?」


「あ、ごめん」


 それでもサラは肩を揺らしている。

 ファルはため息をついて大柄な神官に視線を戻し、神官服を眺めた。


「あなた、一応高位神官じゃないですか」


「一応じゃねーよ!」


「いえ、見えないなと思いまして」


「余計なお世話だ!」


 ついにサラの笑い声が聞こえて、ファルのため息が深くなった。

 大柄な神官はばつが悪そうに頭を掻いている。


「それで?退くのか、強制的に退かされるのか、どちらなんですか」


「どっちも嫌だし、駄目だな」


「話になりませんね」


 大柄な神官は腕を組み、目を閉じて真剣に悩みだすが、ファルは面倒そうな表情を変えないでいた。

 サラがまだ小さく笑っているせいか、ファルのため息が多い。すると、ファルが小声でサラに話しかけた。


「サラさん、迂回しましょうか」


「え?また追ってくるんじゃない?」


「相手にしなければ良いのです。放っておきましょう」


 ファルがサラの背中を押しながら、足早にその場を去ろうとすると、目を閉じている筈の神官がふたりを呼び止めた。


「おい!少しは俺に興味持てよ!」


「教会には色々な意味で興味ありますが、あなたには興味を抱く理由がありません」


「ひっでぇなおい!」


 そのやり取りで、またサラが笑いだした。


「笑いすぎですよ」


「だって…!あまりに雑だから」


「ではサラさんが決めてください。あの痴れ者を退かすか、あの痴れ者を排除するか、あの痴れ者を無視するか」


「えっと…無視で」


 ファルとサラの言葉に、大柄な神官は項垂れながら小さく呟いた。


「あぁ、神官辞めたい…」


「辞めたらどうですか?」


 ファルの即答にサラの笑いが大きくなる。

 大柄な神官は、そんなサラを真剣に見つめた。


「なあ穣ちゃん、一緒に居るそいつが何なのか、知っててそこにいるのか?」


 その刺されるような声色に、サラの笑いが止まった。サラは恐る恐る神官に視線を向けると、さっきまでの間抜けな表情ではなくなっていた。


「知らないんだな?」


 サラがファルに視線を送ると、そこにはサラの知らないファルがいた。そして、ファルの声で、ファルではない冷たい声が響いた


「そこまでにして貰おうか」


 その声にサラは一歩後退り、大柄な神官は身構えた。


「おいおい…穣ちゃんが恐がってるぞ」


「それがどうした。貴様の処理が先だろう」


 感情が無いような声で、ファルは淡々と言葉を発している。神官も身構えながら少しずつファルから距離を取っていた。しかし、僅かに風がそよいだ瞬間、ファルはいつの間にか神官の後ろから肩を掴んでいた。


「っ!…本当に容赦ねーな」


 神官は肩を掴まれたまま両手を上げて降参を示すが、肩を掴むファルの手に力が入る。


「その口を無くすのと、降参できないように腕を無くすならどちらが好みだ?」 


「俺は引くからよ…どっちも勘弁してくれ」


「貴様が引いたところで何か変わるのか?」


「いや…変わらねぇな…」


 神官は自分の言葉が失言だったことに気付き、言葉を間違えたと言うように必死に首を横に降った。


「待て待て待て!変わる!変わるぞ!色々と!」


 神官が必死にファルを説得しようとした瞬間、ファルが神官に耳打ちをした。


「騒ぐな。人間。耳障りだ」


 その後、神官の顔が恐怖に染まったのが、離れているサラでも理解できた。


「…ファル?」


 サラの呼び声が聞こえていないのか、ファルは視線すら向けてはくれない。サラは妙な焦燥感に駆られ、二人に向かって駆け出した。


「ファル!駄目だよ!」


「穣ちゃん!今のこいつは駄目だ!来るな!」


 サラは神官の言葉を無視して、自分でも訳が分からないままファルに抱き付いた。そのままファルを見上げ目が合うと、ファルの瞳は今まで一番金の円環が輝いている、


「穣ちゃん…離れろ。人じゃいられなくなるぞ」


「そんなの、見たから知ってる!」


 サラは、何故か心配してくる神官を睨み、吐き捨てるように答えると、ファルの頬に手を伸ばした。


「ファル…約束…側にいてくれるんでしょ?」


 ファルの瞳が僅かに揺らぎ、気配が落ち着いていく。すると、ファルは神官の肩から手を離し、サラの頭に置いた。


「すみません。おいたが過ぎました」


 ファルは申し訳なさそうに笑顔を作り、サラに謝ってみせた。


「…うん。私、ひとりじゃ野垂れ死ぬからね?」


「それはいけません。私が面倒みますから死なないで下さい」


 神官はふたりのやり取りを暫く眺めて、静かに離れてから口を開いた。


「俺は引くぞ!触らぬ神に祟りなしだ!触っちまったけどな…」


「はい、早く居なくなって下さい。邪魔です」


 神官は呆れたように肩をすくめて背を向けた。


「ああ、そうだ穣ちゃん、俺はグランツだ!また会うだろうし覚えといてくれよ」


「サラさん、会いたくないので覚えなくていいですよ」


「辛辣だなぁ!まぁいいや!じゃーな穣ちゃん、ファルネーゼ」


 神官は手を振り去っていく。


「まったく…余計なことを言って行きましたね」


「ファルネーゼって…ファルの本当の名前?」


「ええ。ですが、ファルのままでお願いしますね?」


「ファルはファルだからね」


 ファルが少し安心したように息を吐き、ファルの胸に額を預けるサラの肩を軽く二度叩くと、サラが顔を上げた。


「何?」


「いつまで抱き付いてるつもりですか?」


 サラは一瞬で顔が赤くなり、恥ずかしさでまたファルの胸に額を預けた。


「えっと…なんか、ごめん」


「ほら、行きますよ」


 ファルは優しくサラの肩を押し離れさせると、村に向かって歩きだす。サラは少し遅れて、小走りで追い付き横並びで歩く。

 

「ファルって背高いよね」


「あぁ…サラさんと頭二つ分ぐらい違いますもね」


「良い目印になりそう」


「それなら無駄にならなくて済みますね」


 名もない小さな村の人々は、ふたりの旅人を警戒するように見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。