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歌姫、鬼神を飼う。ー連環の計の駒?いいえ、鬼神の主は私です。未来知識で天下を操る。ー  作者: チャプタさん


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4-9:新たな駒、来たる

4-9:新たな駒、来たる

陳宮が、自らの誤解に気づいてから、数日が過ぎた。

その間、彼はまるで姿を消すように、私の前から完全に姿を見せなかった。

どこで何をしているのか、知らせもなく、ただ風のように消息を絶った。

だが、私はわかっていた。

彼ほどの知恵者なら、天幕にこもり、手元の帳簿や張遼からの報告、そして洛陽の街に静かに広まりつつある私の評判を、何度も頭の中で組み合わせ、答えを導き出そうとしているはずだ。


陳宮という男は、ただの策士ではない。

冷静な分析力と鋭い直感、その両方を兼ね備えた稀有な存在だ。

彼の中で、これまで出会ったどの人物にも当てはまらない存在――「私」という未知の存在――が、少しずつ形を持ちはじめている。

それは、ただ妖艶で主君を惑わす女でも、慈悲深い善女でもない。

もっと複雑で、もっと危うく、そしてもっと強い……そんな人間像を。


一方で、「慈愛院」の建設は滞りなく進んでいた。

打ち捨てられていた古寺は、数週間のうちに別の姿をまといはじめた。

新しく葺き替えられた屋根は、陽光を受けて温かく輝き、壁の穴は隅々まで塞がれ、冷たい風も雨も子供たちを傷つけることはない。

庭には小さな畑が耕され、やがて季節が巡れば、野菜や薬草が子供たちの糧となるだろう。

職人たちが槌を打つ音と、子供たちの笑い声が混じり合う――その響きは、戦乱の世にはあまりにも似つかわしくない、穏やかで幸せな音だった。


そして、ついに開所の日が訪れた。

その朝、空は雲ひとつなく晴れわたり、洛陽の街路にも珍しく明るい光が降り注いでいた。

風は涼やかで、春の香りを含み、まるで天がこの日を祝福しているかのようだった。


私は、完成したばかりの「慈愛院」の庭で、子供たちと一緒に過ごしていた。

小さな手が私の袖を引き、笑いながら駆け回る。

彼らの声が、新しい建物の壁に反響して、柔らかな響きをつくる。


そのとき、二つの影が、門の方からゆっくりと近づいてきた。

陳宮と張遼――二人は、肩を並べて歩いていた。

だが、以前のような警戒心や刺々しさは、その顔にはもうない。

代わりにあるのは、静かで深い覚悟の色だった。


彼らは、子供たちの笑い声が響く中、まっすぐに私の前まで進み出ると、同時に深く頭を垂れた。

その動作は、息を合わせたように寸分の狂いもない。

まるで、一つの誓いを示す儀式のように。


「貂蝉様」

陳宮が、代表して口を開いた。

その声は低く、しかし以前のような棘は一切なく、むしろ敬意に満ちていた。

「我らは、貴女様を主君を惑わす妖婦と誤解しておりました。その不明、万死に値します。どうか、この愚をお許しください」


張遼は何も言わず、ただ頭を下げ続けていた。

彼の背は広く、逞しい。

その無言の謝罪こそ、彼が本気で心を入れ替えた証だった。


私は少し驚いたように目を見開き――もちろん、これは演技だ――やがて柔らかな笑みを浮かべた。

「お二人とも、どうか顔をお上げください。忠臣が主君を案じるのは当然のこと。見慣れぬ女を警戒するのは、むしろ正しい行いです。私が気にすることではございません」


その言葉に、二人はゆっくりと顔を上げた。

そこには、もう疑念の色はない。

代わりに、絶対的な信頼と、深い尊敬が宿っていた。


「貂蝉様」

今度は張遼が、真っ直ぐな眼差しで言った。

「俺はこれまで、武人にとって強さこそがすべてだと信じてきました。ですが、あなた様の姿を見て気づきました。真の強さとは、弱き者を守るためにある――その笑顔を守るためにあるのだと。この慈愛院にいる子供たちの笑顔こそが、その証です」


張遼の言葉には、一片の迷いもなかった。

そして陳宮が、静かに続けた。

「さらに、貴女様はその慈愛を、完璧な計略と内政の才で実現されている。これは偶然ではなく、必然の働き。まさに天がこの乱世に遣わした英傑であらせられる。我らも、どうかそのお創りになる未来のために、この身をお使いください。呂布将軍のためだけでなく、貴女様のためにこそ、我らは戦いたいのです」


その瞬間、私は悟った。

二人は、もはや私を「主君の女」として見ていない。

呂布と並び立つ、いや、それ以上の――主として見ているのだ。


私は、ゆっくりと微笑み、言葉を返した。

「ええ、もちろん。あなたたちのような有能な方を、ずっと探していたのです」


私の胸の内では、静かに炎が広がっていった。

純粋な善意から始めた行動が、最も手に入れたかった人材を、こうして引き寄せた。

計略は、また一つ、新たな段階へと進んだ――。

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