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63.激戦の店

ラミエルさんの実家のお店は、なんのお店でしょうか??

 アクセサリー屋の店長をやっているラミエルさん。彼女の相談に乗るため、会いに行ったところ――

 フォルと千秋による尾行(と言うには、距離が近すぎるけども)や、目的地に既にデメテルがいるという愛ゆえの行動(ハプニング)に見舞われてしまう。


 ラミエルさんやお母さんのルミエルさんはとても気の良い方たちで、僕たちを快く迎え入れてくれたのだった。

 でも、天使の鉄槌技について、詳しく説明を聞かされたのはちょっと怖かったな。千秋が特に熱心に聞いていたのは意外だったけど。微かに聞こえた、浮気防止に役立つかも、って声がしたのは何かの間違いだと思いたいよ。


◇◇◇


「自己紹介も済んだところで、早速、本題に入りたいんですが、よろしいですか?」

「えぇ、お願いします」

「どうかうちの店で思ったことは、何でも忌憚(きたん)なく意見を聞かせてちょうだいな」


 僕の言葉に、ラミエルさん親子が揃って頭を下げる。


「そちらのお嬢さんたちも遠慮なくお願いするよ」


 デメテルたちを見渡しながら、ルミエルさんが再度、頭を下げていた。


「分かりました。とは言っても、僕も素人ですし偉そうなことは言えません。でも、お役に立てるよう頑張ります」


 ルミエルさんがいま言った『うちの店』。何の店かと言うと――


「それにしても、良い香り!焼きたてパンのこの感じ、なんだか久しぶりー!どれもとっても美味しそう!」


 千秋が店内をぐるっと一回りし、嬉しそうに声を上げる。


「ありがとうね。うちは代々、パン屋を営んでるんだ。それなりに評判も良かったんだよ」

「千秋さん、パンがお好きなんですか?」


 笑顔の千秋に、ルミエルさんもラミエルさんも嬉しそうだ。


「大好きです!私と流星、実は生きてた時にパン屋さんでアルバイトしてたんです。彼は作る方専門で、私は接客をやってました。でも、私も少しの間、厨房にいたんですよ」

「まぁ!そうなんですか?それは助かります!地球からいらしただけでなく、パン作りの経験もおありになるだなんて!ぜひ、話を聞かせて下さいね」


 千秋と僕が経験者だと知って、子供の様に無邪気な笑顔を見せるラミエルさん。


「そうそう。おば様?二人は地球の日本という食文化がとっても発達しているところから来たんです。彼は謙遜するんですけど、パン以外のお料理の腕もすごいんですよ!」

「そうなんです!アタシも料理はできる方だとは思うんですけど、流星には敵いません」


 デメテルとフォルがまるで、自分のことの様に嬉しそうに話している。でも、褒められ慣れてないから、ちょっとこそばゆいな。嬉しいんだけどね。


「おやまぁ!そうなのかい?流星さん、千秋さん、どうかよろしく頼むよ」

「はい!こちらこそよろしくお願いします」

「私も頑張りまーす!」


◇◇◇


 その後、まずは詳しい話を聞く前に、この店がどう見えるのか教えて欲しいとのことだった。特に、異なる世界から来た僕と千秋から見て、どう映るのか知りたいのだそうだ。

 皆で建物の外観や店内、パン棚やパンの種類などを観察する。


「あれ?レジカウンター横(こんなところ)にワインが並べてある。この瓶の形とラベル……これって、もしかして――」


 疑問に思ったその時、突然、フォルが声を上げた。


「そうか、分かった!すぐに行く。来れる奴がいないか、他に聞いてみてくれるか?もう二人程でいい。でも、休みなんだし無理強いはしなくていいからな?……あぁ、また連絡する」


 どうしたのかと尋ねると、新たな迷子の魂が現れたとの一報が管理局より入ったとのことだった。そして、現場から一番近くにいるという理由で、そのまま彼女が駆り出されることに。


「しょうがねぇ。ちょっと行ってくる。後でアタシにもどうなったか教えろよな」


 少し寂しそうな表情のフォルに、お昼に食べようと思って多めに作っておいたピザをコソッと渡す。思いもよらなかったのか、すごく嬉しそうに喜んでくれたのが印象的だった。

 皆から見えない角度で、サッと頬にキスをする彼女。かなり恥ずかしそうにしてたけど、僕も顔が真っ赤になってたと思う。デメテルや千秋から、どうしたの?と聞かれたけど、誤魔化すのが大変だったよ。


「フォル、気を付けてね」

「ヘーキさ。危ない仕事じゃないしな。じゃあ、また後で。千秋!デメテル!流星を頼むぞ!」


 声を掛けられた二人が、がってんだ!と息ピッタリに声を合わせる。なんで、そんな江戸っ子言葉を知ってんのさ。特に、デメテル。



――十五分後


 一通り見終わった僕らは、ラミエルさんに促されるまま、厨房奥にある一室へと通された。


「あの、お店に誰もいなくなっちゃいますけど……いいんですか?」

「僕たち、立ち話でも平気ですし、もし良かったらお店の方でも構いませんよ?」


 千秋と僕が思わず、声を掛けるも――


「いいのいいの。もう昼のピークも過ぎたしね。そのピークも昔に比べたら随分、減っちゃったけどさ。ラミエル、表に休憩中の札を掛けておいてくれるかい?」

「はい、母さん。そういう訳ですので、大丈夫なんですよ。こちらで座って話しましょう」


 ラミエルさんたちは笑顔だったけど、明らかに悔しそうな寂しそうな、そんな雰囲気を醸し出していた。僕と千秋はそんな彼女たちに何も言えなくなり、ちょっとしんみり……。

 そんな中、ただ一人、テーブルにいそいそと亜空間から出したティーセットを並べて、お茶の用意をし始めるデメテル。


「皆、そんなにしんみりしてたら、出るアイデアも出なくなっちゃうわよ?早い話がお店を盛り上げたいんでしょう?それなら、まず、温かいものでも飲んで気持ちを落ち着けましょうよ。ね?」


 ニコッと微笑む彼女に、ラミエルさんたちが慌てた様子で謝る。


「せっかくいらして下さった方にお茶の用意をさせてしまって、すみません!」

「ほんとだよ。気が利かなくてすまないね。うちの自慢のパンをいま持ってくるから、良かったら食べとくれよ」

「ルミエルさん、私も手伝います!」


 千秋が声を掛けると、嬉しそうな顔で二人共、店の方へ。そして、ラミエルさんも先程、頼まれた札を掛けに部屋を出て行ってしまった。


「デメテル、ありがとね。ラミエルさんたちが落ち込んでたから、ああやってくれたんでしょ?」

「あら、私はただ、紅茶が飲みたかっただけよ?」


 澄まし顔でしらを切る彼女が途端に愛しくなり、艶やかな黄金色の髪をそっと撫でる。彼女もそんな僕のもう片方の手を取り、愛しそうに優しく包み込む。


「ここのお店もかなり売り上げが落ち込んでるみたいね。私たちでまた大勢のお客さんが来るようにしてあげられたらいいのに……」

「そうだね。昨日、話してくれた食事事情の改善の一環として、まず、ここから始めてみるよ」

「いいわね、それ。そうしましょう!そうと決まれば、なんだか急にお腹が空いてきちゃったわ!」


――ぐぐるううぅぅぅ~~~~っっっ!!


 出たね!このお腹の音、最初はびっくりしたけど、聞き慣れてくるとなんか味があって癖になりそうだよ。


「恥ずかしいわ。流星ったら、そんな笑顔にならなくてもいいでしょう!?」

「ごめんごめん。デメテルがあんまり可愛いからさ」

「……もぅ、ばかね」

「ちょっとぉ!私もいるんですけど?」


 ……っ!?


「ち、千秋!?戻ってくるの早いね!?」

「ほ、ほんとね。てっきり、まだお店の方にいるのかと思ってたわ」

「ふーんだ!そうやって、二人だけでイチャイチャしちゃってさ!」

「千秋、ごめんなさいね。そんなつもりじゃなかったのよ」

「なーんてね!ウソウソ。そんなに怒ってないって。嫉妬はしてるけど。恋のライバルなんだから、私だって、流星と二人きりになったら甘えちゃうし。だから、流星、今度は私にも甘えさせてね?」

「う、うん……僕で良かったら……その、頑張るよ」


 頬を染めて猫撫で声で寄り添ってくる千秋。デメテルとはまた違った可愛さにドキドキしちゃうな。


「あっはっは!あんたたち、面白いねぇ!やけに仲が良いと思ってたら、そういう関係だったのかい?ラミエル(あの子)もそれくらい積極性があれば、今頃、彼氏の一人や二人いたのにねぇ」

「ちょっと、母さん!?お客さんの前でそういう話はしないでよ!恥ずかしい!」

「おや、いたのかい?随分、ご立腹じゃないか」

「本気で怒るわよ?」


 スチャッという効果音が似合いそうな程、自然と鉄槌を手に取るラミエルさん。あれ!?よくよく見たら、壁のあちこちに鉄槌が飾ってある……これって飾りじゃなくて、まさかの実戦用!?


 止めなくちゃ!そう思い手伝ってもらおうと、ちらっとデメテルと千秋を横目で見る。しかし――


「わくわくしちゃうわね~!」

「うん!さっき言ってた技、見られるのかなぁ?」


 なんで、そんなにキラキラなお楽しみオーラ出しちゃってんのーっ!?


「久しぶりに鍛えてあげようかね……!今日は何分でギブアップするんだい?」

「母さん、その言葉そのまま返してあげるわ!但し、分じゃなくて秒よ!」


 こっちはこっちで戦う気満々かーい!二人共、喧嘩っ早いな!?しかも、タイトルの『激戦』ってこういうこと!?競合店がひしめき合ってる激戦区って意味じゃなかったのかーいっ!!

今回もご覧頂き、ありがとうございます。

とんでもない戦いが今まさに始まろうとしています!?


次回『戦いの果てに……!』(仮)

ご期待ください(笑)

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