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七人の呪詛者  作者: 野原四葉
七人の呪詛者/天野市花の章
9/55

【9】過去の事件(天野永梨)

 目の前に見える、炎を噴いている大きな建物の名は『ケルベリタ』、人はその建物を「希望の本拠地」と呼ぶが、実際は違う。なぜなら、ケルベリタがこのノロイアイの引き金といえる存在だからだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 ケルベリタは禁じられた儀式をやってしまったらしい。神様を召喚する儀式、そんな非現実的なことは誰も信じるハズがない。

「結城さん、ごめんなさい。メアシーさん、ごめんなさい」

 ただし、禁じられた儀式、というのが疑点だ。非現実的なものなのになぜ禁じる必要があるのか。それは、世界中の全てに100%が存在しないからだ。だから、非常識的と分かっていても禁じてしまう。

「ミシャルちゃん、ごめんね。エリーゼットさん、ごめんなさい」

 100%ではない、だから成功してしまった。神様は生け贄を糧として存在するらしい。その生け贄に、私たちは選ばれたのだ。神様は7人に殺し合いを命じて、死んだ者を食料同然の立場に、生きたもの、つまり殺し合いの勝者を『新たな魂の宿り家』とする。

「ごめんね、不知火さん、ごめんね、···市花」

 次の瞬間、ケルベリタが爆発した。一瞬の出来事で状況を理解できなかったが、目の前に転がる2つの死体が、私に現実を知らせてくる。

「私は、大切なものを守れない。不知火さん···」

 そう呟いた時、天野永梨(えいり)は夢から覚めた。

 ここ最近、何度も同じ夢を見る。とても悲しい夢、過去に起こったイーズランドの大規模な事件だ。

「あの日、私は数人の世界を造ってしまった」

 後悔してもしきれない、永梨はそれほどのことをしたのだ。人を殺し、神同然の人を殺し、数人の子供の人生を変えてしまった。具体的に誰の人生が変わったかは分からないが、分かる人物もいる。私が心から愛した人物、不知火芽吹(めぶき)の娘、名前は不知火琳といっただろうか。そして、私の大切な娘、市花。

 私のせいで市花は呪詛者になった。

「···ごめんなさい、市花」

 日本に戻ってきてから、何回同じ言葉を繰り返しただろう。何度、同じ夢を見ただろう。

「···ごめんなさい」

***

 朝、いつものように、リビングに市花の姿がない。永梨は分かっている、市花が変わったのはノロイアイの影響だと、自分のせいだと。永梨以上に日向の方が市花を心配している、空いた時間があれば日向は市花の話を始めるほどだ。

「母さん、市花は今日も···」

 日を重ねる度に日向の声は、前の姉としての威勢のある声ではなくなってきている。

「···うん、そうみたいね」

 永梨にできることは、ただ今を受け入れることだけだ。

 数秒の沈黙の途中、その空気を動かすためと言わんばかりにインターホンが鳴った。

「あ、私が出るよ。母さんは朝食の準備でもしといて」

 日向が永梨の言葉を待たずに玄関へと走る。気遣いなのだろうが、日向の方が相当疲れきっているように見えるというのに。

「···うん、そうだね」

***

「あなたは···たしか不知火琳、さん?」

 ドアを開けると、そこには琳がいた。琳の目は日向や永梨とは違い、初めて天野家にきた時と変わっていない。

「市花の姉の日向さんですね」

 表情を隠しているような口振りではない、まるで、市花が大丈夫だと断言できるかのようだ。

「···市花はまだ寝てるから、昼過ぎにもう一度来てくれる?」

 勿論、日向は市花が寝ているか、寝てないかは分からない。ただ、今の市花に会ったところで、琳に何の利益があるのかが分からないからだ。

「···そうですか、では昼過ぎ、もう一度来ます」

 そうとだけ言い、琳は呆れたかのようにその場を去った。呆れたのではなく、悲しかった、その方が今の琳の心境を表せるだろう。琳は市花のことを、ただの呪詛者として見ているかもしれない。憂のように愛してる訳ではない、生徒会長のように敵視している訳ではないとすると、琳は何が目的で市花と関わるのだろうか。

「···」

 呪詛者でもない日向に、琳の心境はよく分からない。ただ疑問に思うだけだ。

***

「正しさとは、当事者が決めるもの。

じゃあ正義とは、誰が決めるものなのか。どう思う?美恋(みれん)

「···正義は悪が決めるものだよ、生徒会長(みゆう)

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