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七人の呪詛者  作者: 野原四葉
七人の呪詛者/天野市花の章
52/55

【52】あなたが好きだから(天野日向、宮辺ひろ)

 夜。日向が1人でリビングにいた。

 ――眠れない。

 時計の針と、オルゴールから流れる懐かしい曲で、自分が生きているこの場所は、時間が経っているのだと分かる。

 やることがない。こんな時間に、できることは少ないのだが。

 時計を見ると、時刻は1時を回っていた。

 部屋に戻ろうと、日向が椅子から立ち上がろうとした時だった。インターフォンが鳴った。

「はぁ···い」

「···」

 返事がない。カメラに映る人影がない。不気味だ。

「···出てみるか」

 こんな時間に、誰がくる?ドアを開けたら殺されるかも···いや、でも出ないのは礼儀として······。

 日向lは5分ほど悩んだ後、ドアを開けた。――誰もいない。

「イタズラだったのかなぁ···」

 日向が呆れてドアを閉めようとした時、微かに声が聞こえた。

「······い。せ···ぱい···。『先輩』!」

 すぐ横だった。ドアの横に人影があったのだ。

「この声···『先輩』って!えっ、『ひろ』!?」

 ドアの影に、確かに誰かがいた。近付いて見れば分かる――そこにいたのは『ひろ』だった。

「どうして···ここに···なんで、来たの?」

 日向の問い掛けに、ひろは答えない。ただ俯いたまま黙り込んでいる。

「お父さんは?1人で来たの?···『許可』は?行ってもいいって言われたの?ねぇ、答えてよ!」

 ただひろの表情に戸惑いながら、日向は尋ねることしかできない。次第にひろの目から涙が溢れ落ちた。それを見て、日向はもう何も言えなかった。

「······私はただ先輩のことが好きだから···長い間会えないなんて嫌だから···でもお父さんはそれを許してくれない!私のことなんて何も考えてくれない!お父さんにはお母さんや友人がいる、でも私には···『先輩しか』いないんです···だから···――」

 日向が気付いた時、既に日向は自分自身の『手』で、ひろの頬を叩いていた。

 自分でもなぜ叩いたのか分からない。いま思い付くものは、全て日向の思い込み。ひろに暴力なんて振るいたくないのに···『どうして?』

「かっ···ぃ······あのっ、えっと···『ダメ』じゃんか!私はそれでも、ひろのお父さんが許しをくれると思って、許可をくれたら···一緒に遊ぼうって···『告白の返事』もしようって思ってたのに···」

 もしかして自分は失望しているのか?日向は自分の一字一句が後悔へ繋がると理解した。

「···『許可』なんてくれるわけ···ないじゃないですか···」

「でも勝手に家を出て会いに来るのは『違う』でしょ!?」

「――先輩はッ!私のこと···『嫌い』なんですか?私と『会いたくなかった』んですか!?」

「ッ···」

 日向は何も言い返せなかった。

 ひろのことは『好き』だ。多分、この『感情』は『先輩と後輩の仲』より、もっと、それ『以上』だと思う。

 ひろとは『会いたかった』。でも誰かを欺いて『会う』のは···『望まなかった』のだ。

「···今日はもう遅いから···今日は泊まっていきなよ···」

「······いいんですか?」

「うん···でも明日には帰ること。『私も付いて行く』から···」

 ――ひろが頷いた。


 日向とひろは、日向の部屋へ行った。

「···ひろは私のベッドを使って。私は布団敷いて寝るから」

「え、でも私は客ですし···先輩に配慮されるのは···ちょっと···」

「いいから!先輩である私が『そう』しろと言ってるの!後輩であり客のひろには『拒否権』なんてない!」

 ひろは、日向に体を押された。そのまま、ベッドに倒れ込んだ。

「···ごめんね。辛辣に接しちゃってて···なんていうかさ、ひろが来て、安心とか怒りとか···もうわけ分かんなくなってるんだ」

 日向の見つめる先には、自分が部活動で使っているラケットケースがある。青色の中に黒色で「日向&ひろ」と書かれている。

 『日向&ひろ』――これは日向とひろがダブルスを組んだ『証』だ。そして、日向とひろを結びつけてくれる物でもある。

「···私とひろは『結ばれている』から。絶対に離ればなれにはならないから」

 時計を見ると、2時を回ろうとしている。それでも日向は眠たくない。

「······『大好き』だよ。ひろのことが、私は大好き」

 ――ひろは既に、ベッドの上で眠っていた。疲労のあまりだろう。

 ひろの寝顔を見ながら、隣で日向は微笑んだ。

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