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七人の呪詛者  作者: 野原四葉
七人の呪詛者/天野市花の章
48/55

【48】第一回目のノロイアイの天野永梨と不知火芽吹が行った無残な殺しと悪と喜劇(不知火琳、天野日向、河東霙)

 『言葉や行動』は難しい。いつ人に不快感を与えてもおかしくないから。考えて話さなければ、大袈裟にいうと『死』や『堕落』へと繋がる。

 ただし、そんな世界なのに毎日『会話』をするのが当たり前になっている。不思議なものだ。

 誰だって一度や二度、人生で「言い過ぎた」「こう言っておけば」と思ったことはあるだろう。――『言葉は嫌い』だ。


「···永梨さん、あの、お話いいですか?」

 昼下がり、市花と憂を強引に2階へやった後。永梨と霙が椅子に座って会話していた中に、琳は割って入る。

「んー、いいよ。···『お母さんのこと』でしょ?」

「······はい」

 ――そう言うと、永梨は微かに笑みを見せた。

「···永梨さんにとって『お母さん』···『不知火芽吹』ってどのような人でしたか?」

 『不知火芽吹』――『第一回目のノロイアイの呪詛者』の1人であり、天野永梨が殺してしまった人物だ。いまでも思い出すと息が詰まる。

「そうね···不知火さんは······いつも元気で、けっこう不良で、でも本当は優しくて···」

 どうしてだろう?ただ親友を説明しているだけなのに···『涙が出てくる』。···すごく悲しくて、寂しくて、辛い。

「お姉ちゃん···大丈夫?」

 ···大丈夫なハズがない。

 この場にいるのが辛い、不知火芽吹の話をするのが怖い。でもそれだと『ダメ』だ。恐怖を克服しなくては、自分の過去を忘れなければ、前に進めない。

「···不知火さんはね···『私が愛した世界一大切だった人』なの···」

 ――ただそうと言えれば良かった。そうと伝えたかった。言葉に『嘘』はない、ありのまま自分の思う『不知火芽吹』を言ったまでだ。

「ぁ···そうですか···」

「他にも、言った方がいい?」

「――いえ。もう十分です。永梨さんにとっても、お母さんは『大切な人』だったのですね」

 琳の冷めた声が、気温は温かいハズなのに体内から冷やしているようだ。寒気がして、それでも『光』がある。

「···琳ちゃん、もう一度···だけ。もう一度だけ、『不知火芽吹の死···と第一回目のノロイアイ』について語りたいの!」

 嫌な『過去』だ。ただし『過去』に囚われた状況で『前進』できるだろうか?無理だ。忘れたいまではいかない、ただ『自分を乗り越えたい』。

「···お願いします」

 どこからかカタッと音がした。その音に気をとられなはら、琳は永梨の前の椅子に座る。

「···『第一回目のノロイアイ』は2年前に始まり、去年幕を閉じたゲームって···この説明はいいか。――私と不知火さんは最後の3人まで生きていた。私は怯えて誰も殺せなかったけど、不知火さんは『私を守るために1人殺した』。――最後の殺し合いは、諸悪の根元である『ケルベリタ』の近くで行われ、その時『呪詛符』の呪いによって『ケルベリタは爆発』した。···『ケルベリタ爆発事件』はそれね」

 琳が聞いた『ケルベリタ爆発事件』とは、真相が異なっている。『神の力』は『非科学的なもの』、一般人が解明できる訳がない。全て『虚構』でおわる。

「――ケルベリタが爆発した後···10分経たずで、私は···『死んじゃった』んだよね」

「え···『死んだ』って···どういうことですか?」

 直接死んだことがないから『死ぬ』ということは分からないが、琳は『死ぬ』ことを『生命が終わること』だと思っている。

 何も間違っていない。『天野永梨は既に一度死んでいる』のだから。

「『死ぬ』···そうね···『大切なものを喪う』ってことじゃないかな」

 霙が椅子から立ち上がり、永梨の後ろに立った。そして、琳には聞こえぬようと、永梨の耳元で軽く囁く。

 ――完全に聴き取れたわけではないが、聴こえた単語もある。「死んだ」――「神の力」――「不知火芽吹の死」――。

「···そうね。琳ちゃん、続きだよ。――私は確かに『死んだ』。その後、不知火芽吹は···『神同然の存在』になったの。『ノロイアイ』で勝利することは、『神』になること、なのよ。そして、不知火芽吹は『神の力』で、『私を蘇らせた』。神には『蘇生』なんて容易いもの。――その時だった。その時、目を覚ました私は···死ぬ前の反動で『不知火芽吹を殺してしまった』の」

 簡単にまとめると、

 1.天野永梨が死んだ。

 2.不知火芽吹は『神』になった。

 3.不知火芽吹は『神の力』で天野永梨を『蘇生』した。

 4.生前の反動により、天野永梨は『誤って』不知火芽吹を殺してしまった。

「···ッ!お母さんの『死』は···偶然が生んだ『悲劇』だったということですか?」

「『言い訳は好きじゃない』。でも、私は不知火芽吹を殺したくなかった。それだけは、琳ちゃんに解ってほしい」

 ――『信じるしかない』。永梨が『嘘』を言ったところで、琳には確かめる由がない。なら、だったら、自分自身と永梨を信じるしかない。

「···不知火芽吹とは、私もイーズランドで会いました」

 霙が躊躇いながら言った。

 瀕死状態だった河東霙を助けたのは、天野永梨と不知火芽吹だった。不知火芽吹と何度か話したことがあるし、それに――

「よ、よよ、『夜をお供したこと』もありました···」

「不知火さんと···『夜を···お供』ッ!?」

「あ、ちがっ!違います!『隣で寝た』という意味です!」

 ――なぜか、永梨が一息ついた。まぁ普通『夜をお供』なんて言われたら···琳だってね···。

「コホン。不知火芽吹は···一度、『お姉ちゃんに「私を殺して」とお願いしたこと』が――」

「霙ちゃん!···それは、言わないで」

 永梨の声に霙が驚く。琳だって、驚いたかもしれない。

「で、でも、お姉ちゃん···ッ」

「···違うの。不知火芽吹と琳ちゃんは···やっぱ家族だからかな、『似てる』のよ···不知火芽吹より不良じゃないけどね。だから···琳ちゃんだって市花と憂ちゃんに言ってしまうかもしれない!2人に私の感じた『想い』を味わってほしくないし、琳ちゃんだって、辛いのよ!」

 ――沈黙。誰も、何も言わず、ただ顔を上げられないまま落ち込んだ。

「···少しでも『第一回目のノロイアイ』のことを知れて良かったと思います」

 琳はそう言い、後ろへ下がっていく。そしてしまいに、駆け足で2階へ走って行った。

「あっ······」

 永梨と霙は何も喋らなくなった。お互いが罪悪感を抱えながら、何も言い出せず、でも何かを言いたい気分だ。

「······霙ちゃん」

「···へっ!あぁッ!な、何ですか?」

 ――所々で入る沈黙が心の傷を(えぐ)っているようだ。

「···私、どうしたらいいと思う?」

 永梨の顔は見えないが、見たいと思えないほど冷めた声だ。

「···お姉ちゃんは···『そのまま』でいいと思うよ···お姉ちゃんは、お姉ちゃん。天野市花と天野日向の母親。お姉ちゃんは元呪詛者。これは決定事項だから、『お姉ちゃんはそのままがいい』」

 ――時計を見ると、2時だった。

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