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七人の呪詛者  作者: 野原四葉
七人の呪詛者/天野市花の章
4/55

【4】失う友愛の親友(浅野憂)

 私の1つ前の席には、浅野(あさの)(ゆう)という友達がいる。

 私は、彼女を幼稚園の頃から「憂ちゃん」と呼び、憂ちゃんには「市花」と呼ばれている。昔から、何で憂ちゃんは私のことを「市花ちゃん」と呼ばないのかが疑問だった。多分、憂ちゃんにとって私は、ただ隣にいるだけの人、なのだろう。

「ッ!」

 寝ていた、悪い夢を見ていた気がする。大切な人を失う夢。

「授業中は寝ちゃダメじゃんか。ほら、ノート、貸すから写しなよ」

「あ、憂ちゃん。うん、そうだね、ありがと···」

 市花はノートを受け取ると、黒板の内容が書かれたページを開く。

 新しく、発熱反応と吸熱反応の分野に入っており、寝ていたことを後悔した。

「炭酸水素ナトリウム、クエン酸、水を混ぜると二酸化炭素が発生して、熱を吸収する···と。ん?」

 ノートの右下、吸収反応の内容が書かれた文の下に、「放課後屋上で待ってます。」と書かれていた。その字が、ノートの所有者、憂のだということは直ぐに分かった。

***

「憂ちゃん?」

 憂が市花を屋上に呼んだのは初めてだ。

 一昨日、市花は憂を止めることができなかった、だから憂は呪詛者になった。

「ちゃんと、来てくれたんだね、市花」

 憂は市花を向かずに、遠くを眺めている。その瞳が、どこを向いているのかは分からない。

「憂ちゃん···こっちを向いてよ」

「ねぇ、市花」

小さな声、憂からは信じられないような、か細い声が出た。

「もしだよ、もし私が今、泣いていたらどう思う?」

「え?」

 泣いていたらどう思う、そんな質問をされ戸惑う。

「私ね、呪詛者になって良かったと思ってる。でもさ、100%良かったとは思ってない」

「···意味が、分からない、しっかりと言ってよ、憂ちゃんは何を考えてるの?」

 何が良かった、そして何が良くなかった。そんなことは、憂の考え方次第で答えは変わる。だからこそ、憂が話してくれないと分からない。

「私ね、ずっと前、小学3年生の頃から、市花の事が好きだった」

「え···?」

 唐突の告白に市花は困惑した。自分が何をすれべきなのか分からなくなった。

「いつか、好きって気持ちを伝えたかった。でも、私にそんな勇気はなかったの」

「ちょっと待って、「だった」とか、「なかった」って、どうして過去形なの?」

 憂の口振りは先ほどから「好きだった」「伝えたかった」「勇気はなかった」と過ぎ去って、もう二度とチャンスがないように話している。

「私たちは呪詛者、呪詛者は呪詛者を殺さなくちゃいけない。だから、もう私たちは友達じゃない、ただの殺し合う仲」

 それは違う、とは言えなかった、市花と憂は呪詛者だ、エルスの言う通り、呪詛者は呪詛者を殺さなくてはならない。

「···」

 こういうとき、何と言えば良いのか分からない。ただ、憂の考えは分かる気がする。

「私の気持ちなんて分からなかったよね。私が、どうしてずっと市花のそばにいたか分かる?」

 その一言で改まって考え直す、自分が憂のそばにいたのではなく、憂が自分のそばに来てくれていたのだ。

それを市花は「ただ隣にいるだけの人」なのかもしれないと、勝手に解釈していた。

「···最後に、キスしてよ。市花が好きだったんだ、こうでもしないと、私は···市花を好きで居続けてしまう。お願い、市花」

 こんな最後で良いのだろうか。市花はずっと憂と親友でいたい、だからこそ、迷っている。

「···私は···んッ!」

 憂は市花の話を聞かずに、市花の頬を掴んで、強引にキスをした。

 たった3秒、何も考えられない、そんな時間だった。憂のことも、何もかも。

「···これでいい、これで。私と市花は、もう友達じゃない、殺し合う仲」

 そう言い憂は屋上を後にした。

 市花には見えていたのだ、憂の頬に、一筋の涙が溢れていることに。

「···ふざけないでよ、ふざけんな!」

 市花が憂にタメ口を利いたのは、これが初めてだ。10秒も経っておらず、憂はドアの奥にいた、聞こえなかったハズがない。

「私は憂ちゃんが好きなの、大好きなの!呪詛者だからって、殺し合う仲にはならない、友人がダメなら、恋人にでもなる!それほど私は、憂ちゃんが大好きなの!」

 その叫びがどこまで響いたかは分からない。ただ憂の心を動かした、それだは断言できる。

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