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七人の呪詛者  作者: 野原四葉
七人の呪詛者/天野市花の章
3/55

【3】親友の呪詛者(浅野憂)

 なぜ朝は雀のチュンチュンという鳴き声が聞こえるのだろうか。今日は土曜日で学校は休み。時刻は10時というのに、市花はまだ寝ている。

「市花の友達が来たよ。母さんも起きろってさ」

 友達が来たことをいいことに、姉の日向(ひなた)が起こしにきた。

「うにゅ?う···ん。あと5分寝かせて」

 友達とは憂のことだろう。憂とは幼稚園からの付き合いで、市花の、一番仲がいい親友的存在だ。だからこそ、この様に待たせることができる。

「名前は···不知火さんって子だよ?」

「···不知火さん!?」

 市花は抜け気味の気力でベッドから立ち上がると、勢いで階段を下りる。

「室内では走っちゃだめだよ。昔父さんにも言われたでしょ、危ないって」

「今日は別なの!」

 何が別なのかは市花自身でもよく分からなかったが、琳が来るのは初めてだ。

「髪がボサボサだぁ!」

 鏡を見ると、寝癖で髪が酷いことになっていた。例えるならライオンだ。

「うん、そりゃあれだけゴロゴロしてたからでしょ。···はぁ、相変わらずだね、市花は」

 その何気ない「相変わらずだね」は、何だか心にきた。捉え方を考えると、ずっと見ていたということになる。嬉しいような、恥ずかしいような、胸がもやもやした。

「不知火さん待ってるから、早くした方がいいよ。どんな絡みの子か分からないから尚更」

「は!そうだった!」

 少しの間だが、琳のことを忘れていた。

 市花は我に返ったような反応をした、その反応が、どれ程日向の心を、動かしたかを知らずに。

「行ってきます!」

「···気を付けてね、市花」

 姉を向かずに家を飛び出した市花に、日向の思いなど伝わるはずない。

「市花遅い。20分は待ったのだけど?」

「ごめんなさい、ごめんなさい!何でも言うこと聞くから、ね?」

「···」

 そんな約束をしてもいいのだろうか。だが琳に機嫌を直してもらうのには、こうするしかないと思ったのだ。ちょっと不安があるけれど。

「···まぁいいわ。じゃ、本題に入るわね、着いてきて」

 そうとだけ言い、琳は市花の腕を掴み引っ張る。

「え?ちょ、不知火さん?え?な、え?」

 抵抗しようしたが、以外にも琳は強かった。

 身長は市花よりも低く、市花を見る時は、いつも顎を上げているのに。

 そういえば、市花が呪詛者になった日、何度か掴まれたが相当の腕力だった。

***

「ハァハァ、不知火さん速すぎ······ここは?」

「あそこを見て、小さな建物があるでしょ?あれがエルスのいる場所、そして、私たちが呪詛者になった場所よ」

 琳の人差し指がスッと、市花の後ろを指す。振り向くと、そこには一室しかないであろう小さな建物があった。周囲には何もなく、ただ不自然に置いてあるようにも見えた。

「あそこが···」

 市花が呪詛者になった場所、市花に人殺しを命じた人物のいる場所。不安な気分になる。

「不知火さん、どうして私たち、人を殺さなくちゃいけないの···?」

 なぜ、市花が呪詛者にならなければいけなかったのか、謎のままだ。

「市花···ッ!伏せて!」

「フグッ!?」

 琳は市花の口を押さえた、何があるのかまだ知らない市花は抵抗したが、直ぐにそこにいる人物が誰だか分かった。そこにいたのは憂だ。

「憂ちゃん?どうしてここに···?」

 憂がなぜ、こんな森林の中に来たのだろうか。そして、憂は辺りを警戒しているようにも見えた。その後、憂は小さな建物の中へ消えた。

「え···?ゆ、憂ちゃんダメ!」

 市花が叫んだときには手遅れで、声は憂に届かなかった。

「ッ!」

「待って市花、どうする気?」

 建物に向かおうとした市花を、今度は掴まず、訊いてきた。

「憂ちゃんを止めに行くの!お願い、今回だけは···」

「ダメよ」

「どうして!?」

 憂が呪詛者になるのを止めたい、そんな気持ちは琳にも分かっている。それなのに、なぜ、琳は市花を止める必要があるのだろうか。

「···」

 言いたくないのか、琳は何も言わなかった。ただ行かないで、という感情が伝わってくる。

「ゴメンね、不知火さん、私は大切な人を、守りたいの」

 そうとだけ言って、市花は建物へ向かった。

 ドアを開けようとした時、同時に中から憂が出てきた。

「市花!?なんで、ここにいるの?」

 驚いたのはお互い様、市花は憂の全身を見る。どこか、変わったところがないかを確認する。

「憂ちゃん、そのカードって···」

市花は憂の右手にあるカードを指差した。

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