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七人の呪詛者  作者: 野原四葉
七人の呪詛者/天野市花の章
22/55

【22】愛するものの在り方(天野市花、生徒会長)

「···市花はさ、憂ちゃんと不知火さん、2人はどこで暮らすべきとおもう?」

 揺れる車の中、市花は窓から外を覗きながら永梨の話に耳をかす。

「私が決めたらダメ···でしょ」

「私は市花の意見が聞きたいだけ。2人の人生は2人のもの」

 人生、そんな重い話題は嫌いだ。しかもその人生は自分自身のものじゃない、友達の人生だ。

「決めれない···決めるのが怖い」

 市花自身でもよく分からない。自分は何を望んでいるのか、自分の大切なものは何か、考える度に答えを出すのが怖くなる。

「···市花、欲張るのも良いことだよ」

 その短い言葉が胸にきた理由は分かっている。市花は遠慮しているのかもしれない、だから自分の気持ちを言えない、言うのが怖い。

「いいのかな、欲張って、後悔···しないかな」

 確信していたのが間違いだった、その時に人間は後悔をする。それと同じ、欲張って友達の人生が間違った方向へ行ってしまうのが怖い。

「私が中学生の時、不知火さんのお母さんと友達になったの」

「えっ?」

 急に語り出した永梨に驚いたわけではなく、永梨が淋の母と面識があることに驚いた。

「知り合った切っ掛けは忘れたけどね、気があって、周りから仲が良いって言われて、凄く嬉しかった。高校も同じだったっけ」

「···それがどう関係するの?」

「いつしか私は不知火さんの人生を選んでたんだ。居場所はどこかじゃない、生きるか死ぬか、殺すか殺されるか、そんな感じ」

 永梨がいつのことを言っているのか、それはイーズランドでの出来事のことだ。イーズランドでの殺し合い、人を殺すのが選択肢のように思えていたものだ。

「それで···お母さんはどうしたの?」

 別に詳しく知りたいわけじゃない、むしろその逆、人が死ぬのなら聞きたくない。

「···いや、ショッキングな内容だからやめるよ」

 酷いネタバレだ。ショッキングということはその人は死ぬ、または重傷を負う、他にも色々と浮かぶが良いものではない。

「···そうだね、聞くのも怖いよ」

 あとどれ程で家に着くだろう。家に帰ったら何をしよう、何が待っているのだろう、市花は小さくため息をついた。

***

「···ずっとここで待ってたの?」

 そろそろ午後1時になる頃か、一睡もしていない美恋がふらついた足取りで帰ってきた。

「どう、だった?」

「そんなにしんみりしないでよ。無理だった、予想が外れたみたい」

 美恋の報告を聞いた美悠は心の中で一息ついた。

「今回はいけると思ったんだけどね、やっぱ難しいよ」

 そう言いながら美恋は服を脱いだ。美悠は近くのかごに着替えが置いてあるのを見て微笑む。

「あのさ···美恋、話があるの」

「どうしたの、改まった顔してさ」

 美恋が後ろを向いてブラを外しているとき、美悠は美恋の顔を見て話そうと深呼吸をして間を埋める。

「――美恋は家族が欲しいんだよね」

 下から覗くような素振り、美悠の方が歳上とは思えないほどだ。

「···うん、だから必死に頑張ってるんだよ」

 その強い意思に心を打たれたわけではないが、本気でそう思える根性には一目置いてしまう。

「私じゃ、ダメかな」

「え?」

「あ、いや、だから。私が美恋の家族になるのはどうかな···」

 顔を赤くして美恋から目を反らす美悠、そんな彼女でも美恋が一目置いてしまうところがある。それは優しすぎる性格だ。

「······それは···無理だよ」

 美恋は悩んだ。悩んだ末にでた答えがこれだ。

「どうして?どうして無理なの?美恋は家族が欲しいんでしょ?」

「···美悠は私の『お姉ちゃん』だから『家族』にはなれないんだよ」

 なぞなぞ染みた答えだ。意味があることは分かっている、でも美悠にはその意味が分からない。それは、美悠に家族がいるからだろう。

「どういうこと?」

 美悠の声から出たとは思えない低い声、動揺しているのだろうか、美悠は喉に手を当てて咳をする。

「···そろそろ行かなきゃ。バイバイ、美悠」

 美恋は机に置かれたカバンを取り、今さっき履いていた靴をもう一度履いた。

「どこに行くの···逃げる気?」

「逃げないよ、逃げたりなんてするもんか」

 美恋は微笑む。相手を安心させる加減で、優しく、温かく。

「じゃあどこに行くの?」

「···旅行、かな。10日間ほど遠くに行くよ」

 中学1年の女子がカバン1つで10日も旅行できるハズがない。分かっているのだけど、分かっているからこそ止めるのが難しい。

 美悠は美恋の言葉に唖然として言葉が浮かばない。

「···それじゃあ、行ってくるよ」

「ま、待って!行くのは好きにすればいい、けど、お願い、私の想いに答えてよ、私は美恋を救いたい、だから家族になろうって提案したんだよ!?」

 家族ができれば美恋は心から笑ってくれる、美悠は美恋の笑顔のためならば自害だってする。

「···嬉しいよ、家族になろうって言われて――だって望みが叶うんだもん。でも、違うの、美悠じゃダメなの」

「どうして?私は誰よりも美恋のそばにいる、悲しませたくない、なのに――どうして···」

 美悠の声が強くなる理由、そんなこと分かっている。美恋が美悠と出会ったのは1年前だ。出会って以来、毎日顔を合わせているのだから。

 元々話し合える友達が少なかった美悠からしたら、第二の家族のような存在だった。それ相当、もてなした。

「ごめん、時間が押してるから。返事は帰ってきてからでいいかな?」

 いいわけない、今すぐ答えてほしい――その反面、美恋に無理をさせるのが嫌で、美恋を悲しませる者が大嫌いで、美恋のやりたいことをやらせてしまう自分がいる。

 美悠は我慢できずうずうずする体を堪えながら、美恋の背中を見つめた。

***

 昼食を食べたあと、千冬とアリスはソファに腰を掛けた。

「最近、夜暑くて眠れないよ」

「アリスが抱きついてくるからじゃないの?」

「ん···それは関係ない、とは言えないけど一先ず置いといて、夏だねって言いたいの」

 棚に置いてある温度計を見ると29℃を指していた。

 そろそろ半袖にするべきか。生憎アリスの持っている服に半袖はない。アリス曰く肌の露出をなくすためだという。

「···半袖の服着ればいいのに」

「えー、だって人に肌とかあまり見られたくないもん」

 なら暑いと嘆くのはおかしい。解決法方が見つからないのは確かだ。

「···別に恥じるようなことないじゃん、アリスの肌を見るのなんて···私ぐらいだし」

 千冬は小さな声で呟いた。アリスに聞こえないように、でも伝えたいから口に出した。

「ん?何か言った?」

「え、いや。別に何も···」

 思わず顔を反らしてしまった。拗ねているような口調、アリスに不思議がられただろうか。

 千冬は渋々顔を上げ、アリスに目をやる。

 ――アリスは疑問を抱いたような顔をして千冬を見つめていた。

「な···なに?」

「んー、えっとね···半袖、着ようかな」

 アリスの照れた顔に千冬は見入ってしまった。

「···その方がいいよ、アリス可愛いもん」

 その後、2人で服を買いにいく約束をした。

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