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#ハードボイルド探偵X FILE.2『謎の手紙』  作者: 釈 余白


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4.予想外の行動

 二人ともハンバーガーを食べ終わり、冷えたポテトをいやいや口へ運んではもそもそやっているとようやくチャンスが訪れた。かれこれ三十分は経っていただろう。


『こっち向いてるよっ! 今がチャンス!』


『別にこそこそしなくても向こうまでは聞こえやしねえだろ』


『でも探偵さんだってこそこそしてるじゃん』


『こりゃ釣られただけだ。それじゃあの娘の様子をしっかりと見ててくれよ?』


 ルナの合図でオレはわざとらしく振り向いた。カウンターの誰かを見るとあからさまに怪しいので、あくまで頭上のメニューを確認する振りをする。


 もちろん視線がずれているので対象者の様子はうかがえないわけで、そのために二人で来ることができたのは幸いだった。


『どうだ? オレに気が付いたみたいだったか?』


「なんか一瞬見たと思ったけどすぐ裏に入って行っちゃった。誰かに呼ばれたか何かなのかな? 探偵さんを見て焦ったとか逃げたとまでは言い切れないけど、怪しくない動きとも言い切れないかなあ」


「うーん、まさかとは思うが、オレの姿を見つけて早退しちまったんじゃねえだろうな。んじゃこの辺で種明かししとくとするか」


「そうだよ、なんでそんなにもったいつけるわけ? ケチ!」


 いつの間にかひそひそ話ではなくなっていたオレたちは、トレイの上にゴミを丸めながら帰り支度を始めながら話を続ける。


「実はな、昼間職質喰らって不審者騒動になっただろ? あの時の野次馬にあの娘がいたんだよ。もちろんただ近所に住んでるって可能性もあるだろうが、オレと目が合った瞬間に立ち去って行ったからな」


「なるほどね、なんとなくそうかなって思ってたけどさ。でもそれだけじゃ弱くない? それほど自分の勘に自信があるってこと?」


「そりゃ自信が無きゃこんな家業してられねえぜ。それに目が合っただけで逃げるように去っていくなんてのはやましいことがあるやつの行動だろ?」


「まあそれは一理あるけどね。じゃああの子が福橋さんちにファックス送ったって言うの? どうやって電話番号を知ったのかしら。それに耳遠いから普段ファックスでやり取りしてるなんて普通は考えないでしょ」


「それはこれから調べりゃいいことだし、差出人が間違いなけりゃ口を割らせてから直接聞けばいいだろ?」


「ちょっと? 乱暴なコトしたら今度はホントに捕まっちゃうよ? 犯罪になるようなことしたら引き受けに行かないんだからね。まあ差し入れくらいはしてあげてもいいけど?」


「おめえはオレをなんだと思ってるんだ…… レディーにはやさしいのがハードボイルドってもんだぜ?」


「うまくいかずに茹で過ぎ(ハードボイル)な赤ら顔にならないようにしてよね」


 ちくしょう、またうまいこと言いやがって。コイツの頭の良さはオレの悪口を言うために備わってるのか?


「とりあえずは裏から戻ってくるか、帰っちまったか、場合によってはやめちまうなんてこともあるかもしれねえが、もう少し様子見たら今日は引き上げるとするか」


「じゃあ私アップルパイ追加しよっと。探偵さんはコーヒーお代わりする?」


「おごりなら頼むぜ」


「まったくもう、貧乏ってやーね。んじゃ一緒に行こうよ。あの子も出てきてないことだしこ、もうそこそすることないでしょ」


「それもそうだな。レディーに遣いを頼んでばかりじゃハードボイルドがすたるってもんだぜ」


 そう言いながらトレイを片手に席を立ったオレの正面、つまりそれはガラス越しで店の外ってことだが、例の娘がこちらを見つめて立っているじゃねえか。


 思わぬ展開に、オレはルナと顔を見合わせてから思わず会釈をしてしまう。すると向こうも釣られたのか会釈を返したのだった。



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