3.バーガーショップの怪しい二、三人?
あまり行きつけねえ明るい店内に戸惑いつつ、かと言ってキョロキョロして怪しまれることの無いように注意しながら席を確保したオレは、注文をルナへ任せて周囲を注意深く見まわした。
しかしオレの探し物は見つからない。そりゃ考えてみりゃ当たり前かもしれねえとも考えてうなだれるように振り向いてルナへ視線をやった。
するとちょうど向こうもこっちを見た瞬間だったのだが、これは以心伝心でもなんでもなく、出来上がったブツを取りに来いと言う圧を送ってきていただけだ。
もちろんオレはすべてをレディーに任せるようなダメ男ではない。さっそうと受け取りに向かうとトレイを持って席へと向かった。その瞬間に背後で甲高い声が聞こえ、振り向きたい衝動に駆られる。
「おい、今遅刻してきたらしい女の店員は黒髪で長いストレート、背丈は高めで日焼けしてる娘か?」
「えっ? 何言いだしてるの? ナンパの手伝いはしないからね?」
「なんでそうなるんだよ…… いいからあくまで自然に確認してくれ。貴重な手がかりの可能性があるんだからな?」
「それって福橋さんの件!? なんでワックに手がかりがいるってわかったの?」
「いや、まだ確定じゃねえ。だから調べに来たんだよ。んで福橋さんってのがクライアントか? ワックってのはワクナルドのことだな?」
「そうよ、そういうとこはホントおじさんって感じよねえ。しゃべらなければカッコいい部類だと思うんだけど」
「ちぇ、ホントおめえさんは口が立つよ。そう言うところがなけりゃ男がほっとかない程度には悪くねえと思うが―― うわっ、アブねえ」
同じことを言い返したのになんでオレだけ脇腹をひっぱたかれなきゃいけねえのか、まったく理不尽である。
「んで例の子だけど探偵さんが言った通りね。だけどなんで関係あると思うわけ?」
「今はまだ勘ってだけだから確かめてみたいわけだ。まあまずは腹ごしらえと行こうじゃねえか。それにしても一緒にこの店に来たのは十年ぶりくらいだな」
「え…… 一緒に来たことなんてあったっけ? 別の女の子と間違えてない?」
「いやいや、なんか変身するアニメか何かの景品目当てに連れてこられたことあったよな? 姪っ子だかなんかと一緒によ。あの子もさすがにもう変身とかやってねえだろうが」
「あー、魔法少女のセットで来たんだっけ。一人一セットまでだからって動員されたのよねえ。それと姪じゃなくていとこだってば。それがさあ、今でも変身とかやってるのよ?」
「マジかよ…… あれから十年だとしても高校生以上だろ。あれか、アニオタってやつだな? 西口にそう言う店があるのは知ってるぜ?」
「もしかして私より詳しいんじゃないの? あやしい……」
「バカ言うな、家出娘探しと言えば以前は繁華街や風俗店が多かったがな。今はマンガ喫茶が多くて調査も難しいんだがよ、出歩く先はアニメの店やディスカウント店が多いんだぜ?」
「へえ、じゃああの子も家出娘なの? 以前に調べたことある子なんでしょ?」
「いや、あの娘は違うがこのバーガー屋に出入りしてた娘を探してる時に良く見かけたから覚えてただけだ。それを今日別の場所で見かけたわけさ」
「それってまさか――」
「おっと、まだネタバレしねえぜ? まずは食いながらおめえさんはこっち向いて座ってくれ。横目ですぐに確認できるようにな。んであの娘がこっちを見てる時に合図するんだぜ?」
「それが何になるって言うの? 自分で見て確認すればいいじゃないの。こそこそするなんておかしいと思うんだけどな」
「オレが目をつけてると知られたくねえんだよ。今は、な。でも向こうには気付かせる必要がある。その時にどんな反応するかを確認してもらいてえんだ」
「なんかもったいつけてやな感じ。でもまあわかったわよ。ちょっと面白くなってきたしね」
こうして準備は整った。あとは作戦通りに事が運ぶかどうか、オレの勘が当たっているかどうか。そして当たったときのあちらさんの出方がどうかが問題になる。
うまくいくとあっけなく片付くかもしれねえと、オレは改めて心の中でほくそ笑んだ。




