溯行作戦中の苦戦①
・MGとは、重機関銃
・LMGとは軽機関銃とのこと
・督戦隊とは、軍隊において自軍の兵士を後方から監視し、命令なく勝手に退却(敵前逃亡)したり降伏したりしようとする味方兵士に攻撃を加えて、強制的に戦闘を続行させる任務を持った部隊のことです。
頃は6月のある日、部隊はとある小さな村落付近に露営、翌朝まだ明ける前に出発準備完了し、大隊の行軍序列に従い待機、その出発を待つ霧の深い夜明け前だった。
時計を煙草の日にかざして見れば、定刻もかなり過ぎているがまだ前進する気配がない。不審に思っていると前方のMG中隊の方が俄かに喧騒になり、やがて「敵襲敵襲」の声がする。わが中隊に前進命令が下り何事かと現場近くに行って見ればMG隊の駄馬はキリキリ舞になっており、友軍の中に中国兵の姿がちらりと見える。そこから夜明けと共に一日中激戦を展開し又、尊い犠牲者を多数出すという戦闘の幕が徐にあいたのだった。
これは部隊が一列縦隊で目的地に向かい前進している時にたまたま敵の小部隊がMG隊の弾薬馬のところに、味方と思って紛れ込んできた為に引き起こされた混乱であった。一列縦隊であったために先行した本隊と連絡が取れず、そのため本隊はそのまま前進してしまった為結局MG隊のおよそ半数と我らの中隊、その後ろの中隊が取り残されることとなった。
我々は速やかに前記侵入した敵を蹴散らし、西側の小高い丘に駆け上がって陣を敷いた。夜が明け霧が晴れ日が昇り逐次視野が良くなるにつれ敵の様子が判明、その姿が見え始めた。山頂より正面の集落及び田畑一面に昨夜露営したと思われる敵の大部隊が何千か何万かウンカの如くとはよく言ったものだ、まさにその通り。いるわいるわ我々の数十倍の兵がうごめいているのが見える。我々はすぐに配置につくも、敵の主力はいまだ我々に気づいていない様子だった。
朝の静寂を破り、友軍のMGが先ず火を吹く。引き続いて我々のLMG及び小銃が猛然と射撃を開始する。真っ黒い敵の固まりが右往左往して逃げ回っているのが掌上の出来事のように見える。視野一面に相当数の敵がおり重なって倒れるのが見える。敵方は不意を突かれてしばらくは隊伍を乱したが、どうにも数が多く、やがて陣容を立て直し猛烈に反撃を加えてきた。手旗を持った指揮官が前後左右に旗を打振ると兵も又前進したり伏せたり射撃したりと鮮やかな指揮のもと、二段三段と波状攻撃を仕掛けて来たものの、我々の目の前二,三百メートル位の丁度良い射程距離の為射撃には絶好、MG、LMG、小銃が見逃す筈がない。銃身が焼けんばかりに撃って撃って撃ちまくる。二段目、三段目程の敵が折り重なって倒れる。生き残った若干の敵兵が後方に逃げていくのが見える。しばらくすると逃げた兵が後方からの督戦隊の射撃によりまた引き返してくると共に新手の一隊がまた増えて攻撃してくる。このような事を6.7回繰り返した為敵の方にも相当数の損害を与えたが、我が方にも3.4名の犠牲者が出始めた。




