表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/30

猫の日SS


「あーっ!ねこちゃんだー!」


 街道沿いを歩いているとき、オレたちの横を通り過ぎようとしていた荷馬車から、唐突にそんな声が聞こえた。


 オレは耳をピクリと動かす。


 ...ん?こどもか?


 荷馬車はスピードを落として、オレたちと並走し始める。


「こんにちは。良い天気ですね」


 中から女性が顔を出して言う。


「ああ」アレンの短い返事。


「あのねー?きょうはねこちゃんの日なんだよ!」と女の子。


 猫の日?なんだそれ。


「...ねこちゃんの日、か?」


 アレンが少し目を細めつつ問う。


 女性が補足する。


「ええ、そうなんですよ。私たちの故郷では今日は猫の日。大昔に先祖が猫の姿をした神様、猫神様に命を救われたとかで。猫に感謝する日なんです」


 へー。面白いなそれ。


「その子、黒猫ちゃんだよね?」


 女の子は目をキラキラさせながら尋ねる。


「そうだな」アレンは短く答える。


「わあ!今日は移動の途中だし、ねこちゃんには会えないと思ってたけど……会えてすごくうれしい!」


 そう言いながら、女の子は小さな肩掛けカバンをごそごそし始めた。


「これ!ねこちゃんも食べられるおやつなの!」


 そう言って、手作りらしい布袋を取り出した。中には乾燥させた小魚のようなものが見える。


 袋から一つ取り出し、「はい!どうぞ」とオレに向かって差し出す。


 好奇心に駆られて近づいてみると、それは確かに香ばしい匂いがする。少しばかり警戒しながらも、口に入れてみた。


(うまっ!!)


 思わずしっぽが左右にゆらゆらと揺れる。オレの瞳が輝いているのが分かったのか、アレンもふっと笑う気配がする。


「美味しかったみたい!」


荷馬車の母親が笑う。


「本当ね?良かったわね。うちの実家で作った手作りのお菓子なんです」


「にゃぁ」

(ありがとな!)


 オレは一度鳴いてみせる。


「おかわり欲しいのかな?」


 女の子が首を傾げる。アレンが一歩前に出て、


「礼を言っているのだろう」


 チラリとオレを見下ろしながら言った。


「どういたしましてーっ!気に入ったならこれ袋ごとあげる!」


 オレはじっと袋を見上げて見つめたままだった。


「クロ」


 アレンの低い声が頭上から降ってくる。


「さすがに申し訳ないだろう」


 わかってるけど……もう一口食べたかったな……


 荷馬車の女性が穏やかな笑顔で言う。


「たくさんあるから遠慮しないでください。黒猫ちゃんの目を見てると、すごく気に入ったみたいですから」


 その間にも女の子は「ほら!ほら!もうひとつ食べる?」と次々と小魚をオレの目の前に差し出してくる。良い匂いがする。


 結局オレは鼻先で袋をちょんちょんとつつく真似をしてみせた。


 アレンは小さくため息をつきながらも、軽く会釈をして袋を受け取った。


「ありがとう」


 荷馬車は再び走り始める。女の子は窓から身を乗り出し、「またね!黒猫ちゃん!」と元気よく叫ぶ。オレは大きく尻尾を振って応えた。


 街道に風が吹き抜ける。


 アレンは無造作に袋から小魚を取り出すと、オレの口元に差し出した。


 ぱくっ!

(うまっ……!やっぱり最高だ)


「……よほど気に入ったようだな」


 アレンは少し呆れたような声だが、表情は柔らかい。


「良かったな」


 アレンの低い声が優しく降り注ぐ。


 猫の日、めちゃくちゃ良い日だな...猫神様?に感謝しとこっと。


 空を見上げると雲ひとつなく晴れ渡っていた。


 オレたちは再び街道を歩き始めた。尻尾がいつもより高く上がってるのが自分でも分かった。


今日は2/22。にゃーにゃーにゃーで猫の日ですね。つまりはクロの日。


本日はこのSSの他に、もう1話夜に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ