歓迎会でのかわいがりは伝統
ずいぶんと久しぶりに感じる剣の重さ、振り抜くことを妨げる抵抗。砕けるでもなくひしゃげた剣で両断すれど、流体の闇は何か痛打を受けた様子もなし。はっきり言って、苦戦していた。
ブロックが上がればレベルも上がる。その言葉の通りに手荒な歓迎を受けた私を含めた繰上り組は、クラス替え初日のオリエンテーションにおいて既に私を残して脱落していた。というか私と残り一人を除いて全員が地に伏していた。
上位属性である闇属性。下のクラスで見たときは氷属性に改名すべきと思っていた攻略済みの属性と高をくくっていたが、なかなかどうしてその本性は私との相性が実に悪い代物であった。触れたものを静止させる超重量の流体の津波など、質が悪いどころの騒ぎではなかった。
無論力任せに術者を狙いに行けば、次の瞬間にはミンチより酷い状態にも銀髪/幼女状態にも出来るだろう。防御に回されたところで振り抜くことは可能なのだから。問題はその場合手加減が効く保証が無いことと、現状が実に修練に最適ということである。
未だに斬れないなんだかよくわからないアレ、最近は次元だとか世界そのものだとか時間の流れだとか運命だとかそんな感じの概念っぽい感じが伝わってくる奴ほどの抵抗もなく、100も斬らない内になんとなく斬り方はわかって来たものの、完璧には程遠く。
つまり、まだまだ成長の余地が具体的に確認出来る巻き藁のようなものである。これ以上の増量はないのか斬り分ければ十分被弾しないだけの隙間も確保できるし。体力と集中力、要は根気比べに近いものである。それはまあそこそこ得意な部類だ。
そんな訳で斬り続ける事半日、遂に力尽きたのか銀髪幼女が意識を失う。まあこちらは腕を振っているだけに近く、向こうは魔法なる奇特な力を大盤振る舞いしていたのだ。きっと精神的にも負担は大きかったに違いない。
というわけでやはり上のブロックはレベルが違うなどと感心していた次の日の事である。教室の席に着いた私の下にとてとてと近寄る影。お礼参りだろうか、などと考えながら挨拶をしようとすると、何故か知らないが膝の上にすっぽりと収まる。
脈絡が無さすぎる行動に周囲も含めて唖然とする。降りてもらえるか聞いてみたらむっとした表情で断られた。ジト目に加えて栗みたいな口しやがって。なんだアレかまた新しいヒロインか今度はいったいどんな理由だよなどと心情が荒ぶるものの、肉体の制御には一切の乱れなし。
最近かませだけでなく解説兼情報通っぽいポジションを確立し始めたカズラ―君にそれとなく聞き出したところ、入学当時は最上位ブロックに入ったが、属性のポテンシャルこそ高いものの前回の試験で実技系の試験を手でも抜いたようにして下のクラスに入ってきたステラちゃん同い年とのことらしい。
属性系全滅の男に実技不良ガールがくっついているというと聞こえが悪いが、異常な実技点だけでブロックを上げた化け物に才能抜群の幼女が引っ付いているというと事案の香りがして聞こえが悪い。なんにせよ私の外聞はボロボロになるだろう。
幼女といってもペド枠ではなく、小柄というだけでそこまでの犯罪臭はないが、その代わりに作者の性癖がこれでもかとちりばめられたかのようなデザインは後から出てきた不利を一切薙ぎ払いヒロインレースで独走するタイプの雰囲気を醸し出している。
私とここまで張り合えるおもちゃを見つけた系バトルジャンキーかと思えば、むしろ小動物的な被保護対象オーラをぶつけてくるあたり年季の入った代物だ。銀に近い若干紫の入った星のように綺麗な瞳などは、青緑と来ていたカラーリングに次は赤か黄色という予想を外してくる。
ヒロインよりも早くパワーアップイベントの方が欲しいと思うのは、贅沢なのだろかなどと考えながら、心を無にするのであった。




