別に矯正力なんて無い
学園に帰ってきてからも、メリーの猛攻は留まるところを知らなかった。休み時間にはまるで当然のように私のクラスに来ているのだが、ここで一つ何とも言い難い状況が生まれる。いわずもがなリィンを含めた状況である。
古来より創作物のヒロインといえば主人公に対する好意の向け方やスタンスこそ違えど基本的にはライバル関係にあたり、モノによっては壮絶にドロドロとした女同士の争いなどが発生することすらあるだろう。その全てをえ? なんだって? でやり過ごす覚悟は決めていた。
故に、異常に仲良くなっている二人が朴念仁である私の攻略に共同戦線を張ってくるなど、いったい誰が想像できただろうか? 火と水は交わらないんじゃないのかよ倫理観仕事しろとつい頭の中で悪態をついたのは致し方のないことだろう。
しかし考えても見てほしい。仮に一度人類が9割以上死滅するとしよう。それが元通りに発展するためには何が必要だろうか? 高度な技術力? 潤沢な資源や食料? そんなことよりももっと根本的なものがある。人口だ。
まして魔物などという脅威がある世界、それこそ昔であれば好き嫌いなど関係なく強者が大勢侍らせるというのは義務にも近いことだったそうで、その意識は消えることなく現代にも残っているそうな。簡潔にまとめれば、重婚などという概念の存在しないハーレムな世界である。
こんな世界を考えたやつは童貞か下半身に脳味噌がはいっている糞に違いない。ラブコメ描写が書けないからいっそハーレムにしてしまおうという技術力の無さすら透けて見えるほどだ。全くもって唾棄すべき人間であることは明白だろう。
神を呪いたくもなったがこの世界では神というものが実在して人類に恩恵をもたらしている。全知全能の神というものはいないが少なくとも人前で罵ればよほど頭を心配されるほどだ。あれ、私その恩恵貰ってないんだが。やっぱり糞だな。
修羅場というよりは針の筵だろう。正直好意に答える気もない人間がまるで気が付いていないように振舞う様は、傍から見れば完全に女を弄ぶ糞である。しかし好かれているからと好き勝手するのも糞ではないだろうか。
そもそもエリーはまだマッチポンプとはいえ好かれる理由にも心当たりがあるが、リィンに関してはご都合主義以外の言葉が思い至らないのである。世界の矯正力などと言ってはいるが、悪質な洗脳と一体何が違うというのだろうか。
つまり、主人公だからすわ据え膳と屑丸出しの行動を取るならば人間として終わっているし、好意に答えない現状や相手の気持ちも考慮に入れずただその気持ちはまやかしだと決めつけるのも人間として終わっているというわけである。
進むも戻るもとはよく言ったものだが、はたしてどう転んでも糞野郎とはいささか酷くはないだろうか。やはりハーレム物の主人公など糞という作者の思想が透けて見えるようだ。全部そいつが悪いんだ。




