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sheath‐鞘姫‐  作者: 肇川 七二三
Only Stage(ドラゴニスタ総会編)
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旅支度 (あとちょっと)

箸使いも上品になってきた。

今までも満足に使えてはいたものの、「品のある」箸使いにはトリシアも苦戦していた。

ローリエは和食を食べる時の箸使いが一番上品だと言ってどこから持ってきたのか習字道具一式を引っ張り出して墨痕鮮やかに「箸先五分長くて一寸」と書きあげリビングに張った。もちろん、トリシアが食事している時に見える位置に。

「五分?一寸?どのくらいなの!もうちょっと分かりやすく教えて!って言うか私字ぃ読めない!」

食事中にされる駄目出しに耐えかねて悲鳴を上げることも日常茶飯事。

和食の箸使いは色々と細々としたルールがあり、それも一からローリエに所作を叩きこまれ苦しんだ。

食事をボイコットしようとすることもあったが、それだけはさせまいとギアとレイの二人がかりで無理やり食べさせられ散々。

安息の食卓を取り戻すためか、トリシアの箸使いは驚くべき速さで上達したのだった。


トリシアは一度箸を置いて口を開いた。

「レイ、聞きたい事があるんだけど聞いてもいい?」

「珍しいなそんなに行儀よく」

彼女は少し思い詰めた顔をしていた。

「もうしたんでしょ。保護飼育士ガーディアン3級の合格発表」

トリシアは試験自体を受けなかった。そして今日も塾に行ったが3級の試験の合否は自分がいる時にはされなかった。

気を使ってもらってありがたかったけど、どうしても気になった。

聞いてはいけないのだろうかとも考えて今日まで黙っていた。膝の上で拳をギュッと握りしめた。

レイは思い詰めたトリシアの顔をどうしたらほころばせられるか、すこし考えを巡らせて笑いかけた。

「おいそれで笑ってるつもりか、そんな顔だと女の子泣かすぞ」

ギアが苛立たしげに横肘をついて凍て着いた眼差しでレイを睨みつける。

「う、うっさい!黙れ!おれの精一杯はここまでが限度なんだよ!」

「じゃあ笑いかけてやろうとか馬鹿なこと考えずにさっさと言っちまえ!」

きまり悪そうにトリシアに向き直ると、ぷるぷると震えて彼女は笑いをこらえていた。顔が真っ赤だ。笑ってはいけないと自分に言い聞かせているのだろう。

そうして気負いがなくなって、素直に言葉が出た。

「安心しろ全員無事合格。半分はお前のおかげ、だと言っていい。夏にでっかい目標が出来て士気も上がったしな。3級以降は各々の専攻する分野の有資格者を目指す」

「じゃあ、私だけか。良かった」

良かった、と心の底から嬉しそうに笑うトリシアを見てレイは少し複雑な気分になった。横にいるギアをちらっと見ると彼も何とも言えない顔をしていた。たぶん自分も似たような顔をしているのだろう。

そうして彼女はまた黙々と箸を動かして食事を再開した。


「早いもので、もう5月か」

春はあっという間にやってきて、茶色い草原はあたり一面緑に覆われ色とりどりの花が風に揺れていた。

最近の日課はシュトと草原に出かけること。「花はこれだよ」と教えてあげた時のシュトの騒ぎ様と言ったら控えめに言っても飛んで跳ねてのお祭り騒ぎだった。

いい匂いがする、色がきれい、食べられるのか、春とはこんなに温かいのか…。

そして同時にしょげていた。花束作戦が失敗していたことを知ったからだ。

春はシュトにとって初めての事ばかりだった。鹿の親子が草を食んでいたり、野兎が出てきたり、鳥がさえずったり。トリシアにとっては2度目の春だったがシュトといると目に映る全てがまるで初めて見たような景色のようだった。

ここで暮らし始めてもう1年経つのかと感慨深げに草原に立つ。

「7月にはけーりんだね」

幼い声にトリシアは追想から引き戻された。

「そうだね、もう荷造りも済んで送っちゃったし」

積み上がった段ボールは先週信頼できる筋の運び屋に任せると言ってローリエが送ってしまった。気の早い人間はもうすでに妨害工作に手を染めているらしい。

それもこれも、すべて他人事のようだ。

「ドラゴニスタ総会って、ドラゴンのための集まりじゃないのかなあ…」

何故、人間の手前がちまちまとこのような事をしているのか、時々ため息が出る。

ローリエがやや伏せ目がちに言い正す。ドラゴニスタ総会の印象を悪くしたのだとしたらそれは自分の言葉のあやの所為だ。

ドラゴンたちはそんなことのために集まっているわけではない。

「トリシア、総会は人間にとっては道具や手段に思えるかもしれないが、我々ドラゴンはそのようには使っていない。龍墨四霊の議、は神々が集まり話し合うという意味で我々は世界の修復のために集まってる。だからどうか、未熟な『神』の手助けをしてほしい」

「ごめん、私自覚が足りなかった」

トリシアは未熟な神であるシュトに向かってかしこまった風に頭を下げた。

「どうもすみませんでした」

シュトはちょっとキョトンとした目で瞬きして、分からないくせに偉そうにした。

「うん、許す」

トリシアは下げた頭のまま笑いをこらえきれず噴き出してしまった。

ああ、この子のこういうところに救われてるんだなあ。


ずうっと気になってたのが箸

アジア圏だけの文化で外国では使う人いないのかなと思ってたら大間違いでした

海外でも普通に使ってるらしいですね!

なので外国人の方に「箸使うのうまいですね」って言ったらマナー違反らしい

…という事を知った


なのでトリシアもフツーに箸使えます

ただ、和食の箸使いは難しいという話、実際私も自信ないもん

それから、ローリエが習字道具をどっから引っ張り出してきたんだろうとか

突っ込まないでくださいね!ご想像にお任せします!


では今回も読んでくださってありがとう!

次話も乞うご期待☆

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