蛹を脱ぎ捨て
レイは、トリシアのこんな顔を見たことがなくて、戸惑っていた。
しっかりしていて、明るくて、自立した女の子。
そして、はじめてトリシアに会った時彼女の人格や感情さえも無視した時にギアに罵倒されたことを思い出した。
両親に甘えたい盛りの年頃で、でもその両親が彼女にはいなくて、頼れる大人も傍にいるのに自立を求められて、彼女が誰より孤独だったことを思い知らされた。
苛立つ自分がいた。なんであの顔を見るのが自分じゃないのだろうか。なんで出会ったばかりのあの女に感情をさらけ出して、自分はそれを見ているのだろう。
何で自分の言いたい言葉を全部あの女に盗られているんだろう。
自分の方が、ずっと彼女の近くにいて、ずっと長く時間を共有していたはずなのに。
「若造、トリシアを担いでくれないか。どうにも私には手加減が出来なくてな」
松葉づえはトリシアには酷だと判断したのだろう。
そしてレイを見て一言
「私に嫉妬しているようではお前もまだまだだな」
「なんっ!」
顔が赤くなるのが分かった。
「おや、図星か。君は分かりやすいなあ」
「ほ、ほっといてください!」
なんだか色々見透かされている気がして、腹立たしくて、声を荒げた。
彼女は笑った。
「やっと、普通に話してくれた。素直に嬉しいよ。ギアには頼むから態度を変えないでやってほしい」
「あ、…」
ああ、そうかこの人は歩み寄りたかったのだと今更分かった。ただ不器用なだけで。
「骨折したのって膝より下ですか?」
「ああ、単純骨折だから治りも早いだろう」
その後も細々としたやり取りを交わしながらトリシアに近寄る。
「今回は、見逃せよ」
何を?と聞く前にすくいあげられふわっと体が浮いた。
お姫様だっこ…!
しばらく声にならない悲鳴を上げて悶絶する。
しかし開き直って受け入れる。
「い、いいもん!どうせ気を失ってる間にマーティもしたし!ギアにだってされたことあるし!いま、今更女の子ぶってもしょうがないし!レイなら別にいいかな!」
「あのなあ!人が珍しく気を使ったのにお前ってやつは親切心を何だと思ってるんだ!やましくないなら目を見て話してみろ!」
ほら!と急かすと彼女は慌てふためき頬を真っ赤に染めた。
そんな反応を望んだわけではない。断じてない。可愛いとか思ってしまうだろう!
「あー、ほら!あのな!冗談だし本気になんてすんな…」
少し上目遣いで、彼女はちゃんと自分の目を見た。
正確には一瞬合わせて、すぐにぱっと顔を背けた。
あー、こういうことを無意識にするからやたらめったら「可愛い」んだろう。
そして無防備だから、男は困るんだ。
「…お前らは夫婦の約束でもした仲なのか?」
「「違いますっ!」」
ほぼ同時に全力否定するあたりが息があってる。
何だ違うのか、どことなく二人を興味深そうに見ているローリエに気付いて二人は急によそよそしくなった。
トリシアには足元を歩くシュトが冷やかにレイを見つめているのが見えて余計肝が冷えた。
シュトはギアに何を仕込まれているか分からない、いや多分この様子はギアには筒抜けのはずだ。ギアなら「レイにはちょっとくらい手心を加えてもいい、いいや、むしろするべきだ!」とか言ってそう…。
どうしよう!
ますます顔が火照る。
この顔の火照りと心臓の脈が早まりは何の所為だろうか。
レイにお姫様だっこされているから?それとも見られているから?ギアの事が気になるから?
ああもう!どうして急に女の子ぶった気持ちになってるんだろう!
女の子だけども!
いままでそんなこと気にしてなんかいなかった。
必要性も感じ無かったし、異性を好きになるという気持ちがよく分からなかった。
そもそもギアの事を異性と意識する事も無かったし、塾にいても艶めいた事なんて無かった。
ゲーム好きの友人に近況を話したら「何よその逆ハー状態わっ!三角関係がホイホイ出来るじゃないの!」とか言われそう…、と初めて自分の立ち位置を客観的に意識した。
恋、かあ…
悶々と考えている間に自分の家がもう間近の所まで来ていることに気がついてあわててレイを止めた。
「レイ!ここで降ろしてちょうだい!」
「えっ、どうし…そんなに嫌だったか?痛かったのか?」
「違うよ!いいから、ローリエさん松葉づえ貸してください」
うむを言わさぬ態度でやや強引にレイの腕から逃れて、松葉づえをついて立ち上がった。
よし、これで大丈夫。
ただでさえギアは翼を打ち抜かれて療養中で、これで外出を許したその日に「殺されかけた」なんて事があれば、彼は卒倒しかねない。
いや、卒倒ならまだいい。きっと延々悔やんで自分の所為だとか言い始めて出家してしまってもおかしくない。出家は駄目だ。絶対反対!
彼は放任主義でありながら少し過保護なところがある。
どのみち伝わっているだろうし、隠しきれないけれど、せめて「ただいま!」の挨拶くらい明るく振舞いたかった。
松葉づえを使いこなすのは少しコツがいる。
それよりも思ったより、折られた足が痛んだ。脂汗が額に滲む。
「トリシア、なんなら私が担いでもいいんだぞ?」
「…今は痛み止めが切れてるだけです。薬を飲めば大丈夫なはず!」
ローリエは、さあ来い!と腕をひろげて見せるが、その華奢な腕が折れてしまうのではないかと逆に心配だ。ドラゴンだから大丈夫的な部分はあるだろうけど、トリシアは丁重に断った。
本当はローリエにお姫様だっこされている状態をリアルに想像してしまって、噴き出しそうになった。
いくらなんでも間抜けすぎるわ…!
もう玄関を開ければいいだけ。
少し、本当に明るく笑えるか、笑っているように見えるか不安になったけど、勢いだと気合を入れた。
がちゃんとドアノブに手をかけた。スッと息を吸っていつも通り、と心がけた。
「…ただいま!」
こんにちは、思っている以上に自分の小説に恋愛要素があると言うことに気づいて
小説のジャンルに追加するべきか否か悩んでます
「入れた方がいいと思うよ!」って言う人がいたら気軽に「ノ」挙手コメくれたら
「おお!やったろう!」とすみやかにジャンル追加します(笑)
でも、わりと真面目に言ってるんだからね!
さて、うちのキャラクター達は何故色恋にはしらないのか疑問です
あれか、朴念仁の集まりなのか
「恋人はドラゴンです」とかサラっという野郎どもの集まりなのか
(トリシアの発言にすると色々支障をきたす)
とにかく、地道に書いて行きます!応援よろしく!
では次話乞うご期待☆




