トークトゥースクール
皆さんこんにちは、おばあちゃんです。本日は夏休み明けの登校に挑む孫たちを野次馬しちゃおうと思いまーす。
いや待って、聞いてください。これには理由があるのです。だからどうか終わる終わる詐欺と言うのはやめてください。
まずですね、おばあちゃんは人の恋バナが大好きなんですよ。他人の恋愛模様を覗くこと、そしておじいちゃんにちょっかいかけて返り討ちに遭うのが私は大好きなんです。そして皆さん、死後の世界に初々しいカッポゥ(ネイティブな発音)がいると思いますか? そう、殆ど居ないのです。
死後の世界には恋人関係が大まかに三種類あります。大多数を占める「生前死別した人たち」、事故等で一緒に来た「そのままカップル」、そして死んでから恋に落ちた「冥婚(合意)夫婦」の三種類です。
そして死後の世界でも仲良くしてる人たちの大半は生前に恋愛イベントの大半を済ませて落ち着いていますから、あんま見どころが無いのですよね。貴重な冥婚組にしても話しかける理由が作りにくいですから、やっぱり雑かつ手軽に覗ける孫たちが好都合なのですよ。
まあ要約すると「気が変わったから続き書くよ!」ってことですね、くっついた後のラブコメに需要があるかは不明ですが、それでも良ければ是非読んでねー! あと完結したり完結しなかったり紛らわしくてごめんなさいね。
「幸樹、幸樹、ちょっといい?」
「はーい」
時は夏休み最終日。いつも通り渡辺宅にいる直美ちゃんが我が孫、渡辺幸樹に話しかけています。
「本日をもって夏休みが終わるワケですが、私は一つ大事なことに気づいてしまいました」
「大事なこと? 課題やってないとか?」
「それは先週に終わらせた」
直美ちゃんは計画的に課題を進めていましたので、夏休み終了の一週間前に無理なく完了させました。偉い子です。孫? 四日目で九割終わらせてましたね。
「冗談冗談、それで何さ? 大事なことって」
「それはね、学校で付き合ってるのを黙っておくかってことよ」
「……あー、なるほど?」
もちろん世の中には不純異性交遊という言葉がありますし、学校でそのようなことを公表するべきではありません。しかし教師とはとても忙しい仕事です。出来の良い生徒に関する無駄に仕事が増えるだけの噂話を、その耳が偶然聞き逃してしまうことは往々にして在るものです。
つまり直美ちゃんが言っているのは、恋愛トークを重ねてきた友人たちにそれを話すかどうかということですね。
「良いんじゃない? 流石に堂々と言いふらすのは不純異性交遊がどうこうでアレだけど」
「ふむふむ。話聞いてもらいまくった友達が居るから、勝利報告しても良い?」
「大丈夫だよー、というか俺もしていい? 松本たちに話聞いてもらったので」
「おっけー」
そんなわけで、二人が付き合っていることは野次馬グループの皆様に知れ渡る予定となりました。これで直美ちゃんに告る話したことも無い男も減ることでしょう。
「それじゃあ学校ではいちゃつかないようにしないとね、最低限建前は守らないと」
「うーん、いや……別に良いんじゃない?」
「えっなんで?」
直美ちゃんが真っ当なことを言ったのに孫に却下されてしまいました、これには困惑です。
「いやまあイチャイチャするのはダメだけどさ? 直美、今までの俺たちが学校でどう過ごしていたのか振り返ってみて」
「今までの……私たち……」
直美ちゃんの脳裏に中学校から今までの学校生活が浮かびます。意味もなくほっぺをつまんだり、頭を撫でられて「ムフー」と喜んでいたり。お腹をグリグリした仕返しに頭をワシャワシャされたり、髪形をツインテールにされたこともありましたね。
そしてそれらの記憶を総括した直美ちゃんは、結論にたどり着きました。
「……もしかして私、メッチャ人前でいちゃついてた……?」
「まあ、そうなるな」
「マジか」
うむ、そうなるな。
「もしこれで夏休み明け急に余所余所しくなったら、変に勘ぐられた挙句「ヤッたな」とか「倦怠期……?」とか言われることになるぞ。多分」
「確かにそうだね、同じ立場だったら私も同じ事言うもん」
おばあちゃんも同じ事を言うでしょうね、夏休み明けで急にギクシャクしだすとか、どう考えても付き合った直後の初々しいアレじゃないですか。そりゃあもう遠巻きにじーっと野次馬もとい見守る姿勢に入りますとも。
「そんなわけで、何も無かったかのようにするのが一番ってワケよ」
「いつも通りってワケだ」
というか別に付き合おうがあんま変わってないですしねぇ、元から付き合ってる距離感でしたから、傍目に見ても特に分からないでしょう。
「じゃあ大体そんな感じで、いつも通り行こう」
「はーい。久しぶりの学校だし、明日は友達と外で昼飯を食べるとするよ」
「りょ、俺もそうするわ。もし家で食べることになったら冷蔵庫の焼きそば食べといてな」
「あいよー」
なんかちょっと所帯染みてきましたね、ウケる。




