トークトゥートラベル
皆さんこんにちは、おばあちゃんです。今日は前回の一日後、家族+直美ちゃんがそろって朝食を食べています。
今日の朝食はママが作りました、買ってきた良い感じの味噌を使った味噌汁にベーコンエッグと白ご飯。幸樹が作る目玉焼きと白ご飯だけの朝食を、一段階レベルアップさせた感じですね、息子に普段より良いものを食べさせたい親心が見て取れます。そうそう、親の帰ってきた家では普段のご飯をパパとママが作ります、これは普段料理している息子への労いでもあり、家事の負担が減った分、幸樹に手の込んだ料理を作ってもらうためでもあります。
やっぱり子供の作った料理を食べるのって親の夢みたいなところあるじゃないですか? ただいつも頑張ってる幸樹に更に頑張らせるのも違うじゃないですか、その中間を取ったのがこの料理当番システムなのです。普段の幸樹は楽するために簡単な料理しか作ってないだけで、やろうと思えばしっかりした料理も作れるんですよ? その気になればチーズインハンバーグもラザニアも思うがままです、ただ能ある鷹は爪を隠すと言うように、彼も普段その爪を隠しているのです。
「いやぁ、やっぱり親に料理作ってもらうとおいしいね、人の作った飯はうまい」
「そうだろそうだろ、私の味噌汁はうまかろう、こだわってるからな」
「うん、本当においしい、ママすごい」
直美ちゃんも絶賛です、流石の美味しさですよ。
「ガッハッハ! 褒めるが良い褒めるが良い!」
そういえば直美ちゃんがママの味噌汁を飲むのは初めてでしたね、そうだろうそうだろう、私の子の味噌汁はうまかろう。ママは昔から味噌汁が大好きな子でした、ウチに遊びに来るたびに「ギブミー味噌汁」と小学生の彼女が言ってくるのですから、おばあちゃんは「趣味が渋いな……」と困惑していました。なんでそんなにハマったのか聞いてみたら「おばあちゃんの味噌汁がすごいおいしかったから」らしいですよ、別にそんな手の込んだものは作ってなかったんですけどね? なんか好みに刺さったらしいです。ママはメチャクチャ高い味噌も試していたのに、結局は私が買ってる味噌に落ち着いたのだから驚きです、余程好みにドンピシャだったみたいですね。
「ママの味噌汁へのこだわりはすごいからな、一時期味噌汁研究のために朝昼夜、毎食味噌汁生活してたくらいだ」
「まー結局おばあちゃんの使ってた味噌に落ち着いたんだけど、やっぱ年の功は強い」
「幸樹、おばあちゃんはそんなすごい味噌使ってたの?」
「そう思うだろ直美、あれスーパーで売ってる普通の味噌なんだよ、なのに高級味噌使った時よりおいしくなるんだから謎なんだ、ママの超技術」
使い終わった食器は食洗器に放り込んで、一家団欒の時間が訪れます。ママが旅先で買ったお菓子を自慢したり、パパが撮ってきた絶景の写真をみんなで眺めたりして、家族の時間が流れていきました。
さて、時間は流れて昼食後。パパとママが面白みのない諸々の買い出しへ行ったため、家には幸樹と直美ちゃんだけです。まあ買い出し以外に遊んでくる可能性もありますが、夕食までには帰ってくるでしょうから問題はありません。
「いやぁ、身内って感じで幸せだよぉ」
「思った以上に直美が馴染んでて驚いた、なんというか、本当に家族って感じ」
「それな、安心感がすごいよ安心感が、私いつの間にか『幸樹パパ・幸樹ママ』じゃなくて普通にパパとママって呼んでたもん、親パワーがすごい」
「最初は「ご挨拶だ」ってビビってたけどうまくいってよかったよ、ホント」
「幸樹も緊張してたクセに~、大丈夫って言おうとして噛んでたの私覚えてるからね~?」
いやぁ直美ちゃんが幸せそうでおばあちゃん嬉しいです、ヒエッヒエの家庭環境を聞いてからずっと心配してたんですよね、この調子なら安心して見守れそうです。
正直なところ、場合によっては直美ちゃんが昔のおじいちゃんみたいな子になっちゃうかもしれなかったから、何もできない幽霊としては本当に怖かったんですよ。ちょっと語らせてもらいますけど、昔のおじいちゃんは本当に酷い感じだったんです、口先だけの愛情に縋りついて必死に現実から目を逸らす様は雨の日に飢え死にしようとする子犬のようでした。しかもそんな拗らせ切ってるクセに優しさだけはあるんですから始末が悪い、散々私に優しくして勘違いさせた挙句「俺は許嫁がいる、お前と付き合うことはできん」なんぞぶっきらぼうに抜かしおったんですよ? ふざけんなよと、聞いてるだけでもお前の家クソカスだろうと、そんな家のために好きでもない女と結婚するなぞ馬鹿かと。そうやって三年間かけておじいちゃんの洗脳を解いて無事ゴールインした結果が今の、そば打って死後生活を満喫しているおじいちゃんなのです。
そんな感じでおじいちゃんは私が責任をもって浄化しましたけど、直美ちゃんには孫しかいませんから、万が一失敗した日にはバッドエンドまっしぐらです、だから「早くくっつけー」とか「おらっとっとと同衾しちまえ!」とか私が言っていたわけなのですよ。
そうして私が脱線している間にも、二人はとめどない会話をして幸せを噛みしめています。長々と話しているうちに、旅行の話に話題が移りました。
「これから旅行に行くんだよね、なんか現実感湧かないや」
「急展開だったしなぁ、俺も現実感湧いてない」
「だよね~、旅行……旅行かぁ、どんな感じかな」
「遊園地行ったときみたいな感じじゃない? ほら、昔おばあちゃんに連れられて行ったじゃん」
私が幼児時代の二人を連れて行ったときですね、うつらうつらと眠そうな二人を頑張って家まで連れて帰ったのが懐かしいです。
「あの時は楽しかったねー、確かに同じ遠出だし、きっとあんな感じだね」
ええ、ええ。きっと今回も楽しいですよ。
「うん、いいなぁ、それ、すごい楽しみ」
「だな、きっと今回も楽しい」
昔のことなのにちゃんと覚えてくれていて、おばあちゃん嬉しいですよ。私がはしゃぎ過ぎて二人がヘロヘロになるまで連れ回してしまいましたが、楽しかった思い出になっているようでよかった良かった。孫を連れて遊園地なんて全祖父母の夢ですからね、私がはしゃぎまくってしまうのも仕方ないことなのです。
いやいやちゃんと二人の行きたい場所を巡りましたし、引率としてしっかり子供たちに遊園地を満喫させてやりましたとも。しかしそれとおばあちゃんが一番はしゃいで、最後まで元気だったことは両立できるのです。二人の言う通り、今回の旅行も今までのように楽しいハズです、間違いありません。キッチリ最高の告白を決めてくるが良い。
「……なあ、きっと今回の旅行も楽しいよな」
「そりゃそうだよ、一緒に行けるんだから、絶対に楽しい」
「だったら、三日間キッチリ満喫したいよな」
「……? そうだね、せっかくの機会なんだし、思いっきり遊ぼう」
「…………そうだな、よしっ」
うん? なに最終決戦前の会話イベントみたいなこと言ってるんですかね、この孫は。あれか? 怖気づいたか? 絶対に避けられない大決戦を前に腰が引けてしまったか?
残念ながらあなたに退路は残されてないんですよ、残されたコマンドは前進だけ、すでに賽は投げられたのです。というかこの状況でダメだったらあなた一生恋人出来ませんからね、世の男女を見てみなさい交際が続くか以前に成否すら分からない状態でアタックして玉砕してるんですよ、あなた勝ち確で好感度も貯めまくってる恵まれまくった状況なんですからちゃんと根性見せなさい。仮に失敗しても「次に期待してるよ?」とか言ってもらえるような状況なんですから、ほら、頑張れ頑張れ、そうそう、そうやって深呼吸して、ちゃんと腹を括るのです。
「直美、直美」
「はいはい直美だよ」
「好きだ、付き合って欲しい」
「ほーん…………へぇぁ?」
えっ




