ギブミーエナジー
「それじゃあ行ってくるけど、本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、流石に三日間くらいなら平気だよ」
時は八月前半のある日の朝。わが孫たる渡辺幸樹が幼馴染の京極直美ちゃんに、本当に旅行に行っても大丈夫か最終確認をしています。
実は渡辺家ではパパとママが帰ってくるたび、二泊三日の家族旅行に行くのが恒例となっています。旅行先は国内の良い感じな観光名所、温泉に入ったり水族館でエイを見たり、家族の思い出を稼ぐイベントなのです。が、今回は心配事が一つ、その間ぼっちになる直美ちゃんのことです。
「ちゃんと好きなだけウチに居座れるよう、直美ちゃん両親にも話は通してある。少なくとも親に悩まされることは無いさ」
「そうそう、パパとママでちゃ~んと話は通してあるから安心せい!」
直美ちゃんのトラブルは案の定パパが何とかしそうです、我が息子ながらマジで便利だなコイツ。
「そういうことだから、幸樹も安心して旅行に行ってくるがよい」
「まあそれなら、寂しかったら電話とかしてね?」
「はーい、んじゃほらギュッとして! ハグミープリーーズ!!」
ギュっとされた直美ちゃんがいつも通り奇声を上げて、いつも通り誰もツッコミません、パパとママもスルーかぁ……
そして元気と愛情を摂取した直美ちゃんに見送られて、渡辺一家が毎年恒例家族旅行へと出発しました。
「直美さん?」
「やっ」
「さすがに二十分はやり過ぎじゃない?ちょっと休憩しよう?」
「やーっ!」
そして旅行から帰った姿がこちらになります、見事な即落ちニコマですね。帰宅した渡辺一家を出迎えた直美ちゃん、雑談もそこそこに幸樹が手洗いうがいを済ませた瞬間「それじゃ、幸樹借りるんで」と言って、彼を彼自身の部屋へと引っ張って行ってしまいました、その結果がこれです。
直美ちゃんは三日間のぼっち生活で構ってもらえなかった分の栄養を取り戻すため、背もたれクッションと孫の間に挟まって様々な鳴き声を上げています、ちなみにさっきまでは「みゅぃ~……みゅぃ~……」とマスコット妖精の寝息みたいな鳴き声を出していたんですよ、かわいいですね。
「いや俺はいいんだけど、流石に飽きてこない? あと俺の体重かなりかかってるよね、そろそろ痛くなってくるよね」
「飽きてこないよ? それに飽きたらスマホ持ってきて続行するよ。それにさっきから言ってるけど体重かかってる方が幸せだから、是非そのままでお願い」
「なんか直美……やっぱり癖歪んでない?」
「今更だね~、ハグされて「もっと強く」なんて言ってる時点で分かり切ってたことでしょ」
「まあそれはそう」
それは本当にそう。
「とはいえ、やる側としては良さがあんま分からないのよ」
「まあそうだよねー」
距離が縮まったせいで会話の中でエロい話への遠慮が無くなりつつありますね、言い出せずやきもきするよか百倍良いです。
しかしまあ孫はレベルが低いですねぇ、本当にレベルが低い、抱きしめるだけで満足するなぞ生娘のような初々しさよ、男ですけどね? せっかく長い付き合いで好感度積み重ねまくってるんですから、もっと倒錯的な方面へ走るべきだと私は思うんですよ。とりあえずメイド服・哺乳瓶・縄の不道徳三種の神器は必須ですよね。三種の神器に謝れ? それはそう、ごめんなさい。
さて謝ったので話を続けます、とにかくこういうのは倒錯的であればあるほど「それを許されるほど愛されてるんだ」って感じで多幸感が増すのですよ。そりゃ程度問題はありますけども、せっかく恋人ができたのですからそのへんを満喫しないのは本当に勿体ないと思うんですよ私。現代日本ではエロ=悪みたいな風潮がありますけどね、だからこそ信頼できる相手に受け止めてもらうべきなんだろうと、その背徳感でハイになるべきだろうと思うのですよ、背だけに。あと今(お前の若い頃にメイド文化無いだろ)って思いましたよね? 昭和生まれナメんなよお前、主従ごっこなぞ太古の昔からある一般性癖じゃい。使用人とか女中とかそういう文化はあの頃にもありましたからね、当然私もそのあたりの萌えには理解がありますとも。
まああんま話し過ぎて十八禁認定されても困るので、話を孫たちに戻しましょう。ちょうど今直美ちゃんが自分の好みを理解してもらうため、適切な言葉を探しているところです。
「うーん、どう言えば伝わるかな? なんというかあれ、「お菓子の山に埋もれたーい」みたいな、好きな物に沈みたい願望ってあるじゃん?」
「あるな、札束風呂とかビール浴びるとか」
「そうそう、そういう感覚。好きな物でペチャンコになりたいっていう……あっ良い例え思いついた! あれだよあれ、美女に抱きしめられて窒息死したいってヤツ! あんな感じ! 幸樹だって私の胸で窒息死するなら本望みたいなとこあるでしょ!」
「あーなるほどそういうことか、完全に理解した」
適切な言葉選びにより直美ちゃんは性癖への理解を獲得しました、やったね。
「えっ、私の胸に関しては冗談で言ったんだけど…………キミこんな貧相な物で喜ぶの? マジ?」
おっと直美ちゃんが"真実"に気づいてしまったようですね。そうですあなたは気を使われてるだけと思っていたようですが、孫はあなたの最低限の柔らかさだけはある胸を性的な目線で見ていたのです。孫から見た自分が胸を押し付けまくるタイプの女だと知ってしまった直美ちゃん、混乱と羞恥心を抑えてこの話を先送りにする努力を始めました。
「いや喜ぶが、だからハグはヤバいって昔から自制してたんだが、それをお前はよぉ~ゴリ押しで抱き着いてきてよぉ~~」
「ちょちょちょっ、ちょっと待って、その話先送りにして! 1ターン休みして!」
「そんな慌てる? 今更じゃない? 「成長期を過ぎた女子がハグはヤバイって」とか俺言ってたでしょ」
「気を使ってるだけだと思ってたんだよぉ! ちょっとあのっ、色々話したいとは思うけどとりあえず告った後にして! そしたら全部聞くから! ね!?」
「はーい、そこまで動揺するとは思わなんだ。それじゃあほら、早く離れなされ、密着しては恥ずかしかろう」
「…………それは続ける、ほら、ギュっとしろ」
「続けるんだ……しかも正面に来るんだ……」
直美ちゃんがしれっと正面に移動して抱き合い始めました、その卑しさは評価点です。ただ付き合ってないのにこの距離感の近さなのが少し心配です、このままダラダラと告るのを先送りにして関係が変わるのを怖がるような段階に入ってしまった場合、またNTRの可能性が発生してしまいます、マジでやめてくれよ……
しかしそんなおばあちゃんの心配はこの後、息子夫婦の手によって一瞬で解決されたのです。




