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ハグミープリーズ!-ウチの孫が美少女幼馴染を抱きしめて優勝する話-  作者: 自爆霊


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ミートトゥーマミー!

 幸樹たちの話がひと段落してパパの旅行話が始まろうとするタイミングで、『ガチャリ』と、鍵の開く音がしました、ママの帰宅です。


「ヘイヘイ息子と娘予定の直美ちゃんよー、お前らのママである渡辺香織ちゃんが帰ってきたぞぉ……って……何で■■■■してんの?」

「っ~~!?」

「痛ッ!? ちょっと直美ビックリしたのは分かるけど痛いって!」

「ごめっごめんね!? だってセ「言うな言うな分かってるから」う~~……」


 ママ、圧巻のセクハラです。


「おうママ、まずお帰り、変わらず元気かつ楽しそうで何よりだよ。そしてヤってねえよ何色ボケ極めてんだ、その目玉は飾りか?」


 そうそう、ママはこういうフリーダム極めてる人です。今まで直美ちゃんの前では(比較的)猫を被っていましたが、今日は全てを曝け出してますね、幸樹とくっついたことで身内判定したのでしょう。その点幸樹は慣れているのでちゃんと雑に扱っています、急に口が悪くなって読者の皆様は驚いたでしょうが、ママの悪ノリを相手するならこれくらいが丁度良いのです、というかそうやってディスられる前提でママも話してますから。


「人差し指はむはむさせてるのにそう言い張るのは無理があるだろー……まいいや、パパがいるってことは真面目な話は終わってるべ?」

「終わってるぜー」

「よしよし、んじゃあこっからはママによるフリートークタイムだ、ゲストはいつも通りパパね」

「はい、実質レギュラーなゲストのパパです」


 そしてここからはママの一方的なトークタイムが始まります、孫たちがさっきの発言で混乱していることもあり、ママが完全に会話の主導権を握りました。

 一応彼女の名誉のために弁明しますが、いつもこんな感じじゃないんですよ? 少なくとも普段だったらちゃんと会話して相手にもターンを渡します。ただほら、今日は一年ぶりの息子にテンション上がってますから。しかも実質彼女ができたとなってしまってはスーパーハイテンションモード、おばあちゃん直伝のフリートークを始めてしまうのも仕方ないことでしょう。


「さて二人は現在幸樹の告白待ちということだが、察するに腹を括るまでの間に他の女が盗まないよう口約束をした形だろう? それ自体はとても良いぞ、とても良い。なんせ何も言えずNTRされるのが恋愛漫画における幼馴染キャラの定石だからな、少なくとも今の時点でも直美ちゃんは、立場に胡坐をかいて無様晒した凡百のチキンガールたちを大きく上回っている」


 その通り、何も言えないまま意中の相手を横取りされて部屋ですすり泣いている一般幼馴染ガールたちとは違うのですよ。


「しかし、しかしだ、それだけでは足りない。さて、パパは何が足りないと思う?」

「速さが足りない」

「その通りだパーパー、良いか二人共、今からとても大事なことを言う、本当に大事なことだからしっかり聞くように」

「へーい」「はーい」


 大事なこと(ママの自称)を聞くのに相応しいテンションです。


「────大事なこと、それは、付き合うのは早ければ早いほど良いということだ。無論『無理のない範囲で』という話ではあるがな」


 あなたはちょっと早すぎましたけどね。なに小学二年生の段階で男見つけて付き合ってるんですか。

 おばあちゃんビックリしましたからね? 幼いパパを引っ張ってきたあなたが「しょうらいむすこさんとけっこんします、これからよろしくおねがいします」なんて言ってきたんですから、しかも子供のごっこ遊びだと思ったら普通にガチですし。息子が覚悟できた瞬間にサクサク次の段階へ進めますし、挙句の果てには就職した一年後に本当に結婚しますし、何者なんですかあなたは、人生三周目とかだったりします?

 まあ息子としっかり幸せになってるからおばあちゃんたちは一向に構いませんけどね、幸せならオッケーです。


「あのな、今ってのは今だけなんだ」


 当たり前体操?


「世のパパとママたちがなんで子供の写真をたくさん撮るか分かるか? この瞬間の子供は今しか見れないからだよ、赤ん坊にミルクをやったり三歳児を肩車したり、人間っつー生き物は『今しか見られない姿』が多すぎるんだよな。」


 それは本当にそう、年がら年中限定ピックアップ状態ですよ。


「で、これは恋人関係にも同じことが言える。例えば直美ちゃん? 小学生の頃の幸樹、その抱き締め心地を覚えてる?」

「そりゃ覚えてるよー、幸樹も覚えてるでしょ?」

「そうだな、今より頭身が低かった」

「幸樹もねー」


 成長期の前後ではビジュアルがガッツリ変わりますからね、十四歳までのレアスキンですよ。


「そう、二人は昔から知り合ってるからその辺知ってる。じゃあ二人が知り合ったのが高校になってからだったらその感触を知ることは出来たか?」

「あー、できないな」

「できないね、そういうこと?」

「そういうことだ、知り合うのが早ければ早いほど思い出が増える、それはメチャクチャ大きいアドバンテージなのよ」


 うんうん、昔の姿は写真でも見れますが、フレーム越しの姿とその眼で実際に見たのでは大きな差があると言わざるを得ません。


「で、ここからが本題、二人は小学生の頃のキスの感触、口の中の味を覚えてる? そりゃ知らないよね、キスしてないんだもの」


 ママのフリートークは止まりません、女であるのを良いことに触れにくい話題にもガンガン突っ込んでいきます。重ね重ね彼女の名誉のために言っておきますが、彼女はちゃんと相手を見てこういう話をしています。孫たちにはここまで踏み込んだ話をしても良いだろうとちゃんと判断して、こういう話をしているのです。ほら、実際二人共ちゃんと話を聞けていますから大丈夫なんですよ、ママは昔からその辺のバランス感覚が上手いのです。


「つまり私が言いたいのはそういうことよ、腹括るのに時間かけるのは良いけど、早けりゃ早いほど良いってことも覚えときなさいな。実際私は小学二年生のパパの唇の感触を知っている事実だけで自分が全人類トップクラスに良い人生を歩んでいるという確信を得ているわよ、二人もそういう優越感を得るべきだと、私は思うの」

「以上、ママにしれっと尊厳を切り売りされたパパがお送りしました」

「かわいそう……」「いつものことだから、かわいそうだけど」


 しれっと幼少期の話を暴露された息子がかわいそうですね、楽しそうだから問題はありませんが。


「必要だから仕方ないでしょ、ほらほら後で何でも一つ言うこと聞いたげるから、許して? な?」

「しょうがないなぁ」

「そうそう、幸樹がちゃーんと直美ちゃんに構ってるか抜き打ちテストするからちょっとこの子借りてくわよ、ガールズトークしようぜ直美ちゃーん」

「はーい、んじゃちょっと行ってくるねー」


 直美ちゃんがママに連れられて彼女の部屋に入っていきました。

 そして食卓には尊厳を切り売りされたパパと、それに同情の目線を向ける幸樹の二人が残ります。


「……ココア、飲む?」

「飲む……」


 優しさの籠ったココアが、パパの傷心を癒してくれることを祈ります。まあママがこんな性格になったのは私のせいなんですけど、ママがやったことですから。ワタシ、ワルクナイ。

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