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ハグミープリーズ!-ウチの孫が美少女幼馴染を抱きしめて優勝する話-  作者: 自爆霊


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アイライクユー

 そうして時は流れ現在帰宅後、並んでクッションに背を預けた二人が、テレビに映るアニメを眺めています。本日のドリンクはシンプルに麦茶、どれだけ飲んでも身体に優しい気の利くナイスなBarley tea(ネイティブな発音)です。この麦茶を切らさないよう定期的に作っていることこそ孫が丁寧な生活をしている証左、直美ちゃんに水道水を飲ませるわけにもいかないでしょう? あなたはこれからも労力を払って健康に良くカフェインも含まれないこのナイスな飲料を作り続ける運命なのですよククククク……


「いやー古いアニメもいいねぇ、味がある」

「ヌルヌルじゃないからこその良さ、あるよな」

「なー」


 エンディングが流れて二人が雑談を始めました、今日は既に三話ほど見ているのでエンディングにも慣れてきたようです。そうそう、昔のアニメ特有の良さがあるというのはおばあちゃんも同意しますよ、フレームレート(一秒あたりに流れる絵の枚数のことです)が少ないから視聴感が漫画に近いんですよね。うまく伝わるか分からないですけどなんというか、映像と画像のちょうど中間で、両方の良さが同時に存在しているんです。インターネットに存在する『静止画MAD』という物を知っていますか? 作品の名シーンを集めてスライドショーにした二次創作物なのですが、これが意外と、映像とはまた違う良さがあるのです。最近のヌルヌル動く映像と動きのない静止画、古き良きアニメからはその両方の良さを摂取できると、私は思うのです。


「あ~……いいなぁコレ、なんというかこうしてだらだらしてると、人生を満喫している感じがする」

「わかる、ものすごい青春スコア稼げてる感じがするわ」


 青春スコアですか、中々のパワーワードですね。河川敷で殴り合ったら荒稼ぎできそうです。


「青春スコアってなんか良いね。スコア稼ごうぜスコア、私は膝に乗って手を握るからそっちは頭撫でて」

「はいはい、そうやって言い終わる前に乗ってるんだから全くもう」


 のっそのっそと孫の膝に乗った直美ちゃんが両手を握って動きを封じます、撫でれないでしょそれ。


「……これ両手握られたら撫でられねえな、右手解放してくれ」

「しょうがないにゃあ、左手だけで勘弁してやろう」


 そうこうした結果、最終的に直美ちゃんの腹に左手を回してグッと抱き寄せ、そしてその手を直美ちゃんが掴む感じになりました。当然頭はナデナデてます、楽しそうな顔してます。


「そうそう、そんな感じでナデナデお願い、青春スコア稼げてるよ~」

「こんな簡単にスコアを稼げるとは……青春、チョロいな」


 青春を完全攻略した二人は「「フハハハハ!」」なんて笑っています、楽しそうですね。そうそう、こういうので良いんですよ、こういうので。こうやって馬鹿なこと言ってゲラゲラ笑うのが人生を豊かにするんです、そうやってこれからもイチャつくがよろしい、私もおじいちゃんに似たようなことしてるから。


 ……そういえばこうして遊んでますけど、直美ちゃんの家ってどうなってるんですかね? なんかヤバそうな雰囲気出てましたけど、ここ数日特に辛そうにしている素振りもないんですよね。あそっか私幽霊だから見て来ればいいじゃん、よし行こうそれ行こう、いざ鎌倉。






 直美ちゃんの家に誰もいなかった……特に食器が散らかってたりも無いですし、見た感じ普通の家でした、マジ無駄骨。仕方ない二人が話題に出すことを待ちましょう、時間はあるしそのうちシリアスな話も混ざるハズ。


 そうして待つことしばらく、具体的にはアニメを更に二話見終わってエンディングが流れ始めたタイミングで、ついに孫が直美ちゃんの家庭環境について切り出しました。


「そういや直美、言いたくなかったら言わないで良いんだけど……あれから、家ってどうなってる?」

「あー、そういや言ってなかったね。最近人生充実してるから、そのへんどうでも良くてさ」


 ほう、孫は順調に直美ちゃんを浄化できているようですね。


「家はアレ、なんか冷め始めた感じ、私が家に居ないから親としての意識とか薄れ始めたのかな? 仲悪いから話さないって感じになってるよー」

「ヤベェな、いやマジでヤベェな」


 ダメなヤツですやん、マジで手の付けようが無くなったヤツですやん。


「直美? 辛かったら無理しないでね?」

「いやぁ別に無理はしてないよ、私としては無駄なケンカが無くなったから過ごしやすくて助かってるし。まあ、こうしてこっちに居場所があるからそう言えるんだけどね?」

「……俺は支えになれてるか?」

「なってるよ、それはもう本当に助かってる」


 うんうん、無条件に信頼できる味方ってのはそれだけで支えになりますからね。


「話す相手の居ない家は寂しいね、おばあちゃんの死んじゃった幸樹の気持ちがちょっと分かったよ。今の私がこうしてずっとリラックスできる場所はここだけだからさ、本当に助かってる」


 安心できる相手、安心できる場所。人生の土台ですね。


「学校は居心地がいいけど、ずっと居座るわけにもいかないじゃん? だから幸樹がいなかったら、本当にどうしようもなくなるところだった、とっても助かってるよ」

「そっか、それなら良かった」


 私としても本当に、本当に良かったです。


「そうそう、それにこれは幸樹も同じでしょ? 幸樹は昔から寂しがり屋さんだから、家に一人だと辛いよね? こうやって一緒にいれば、私だけじゃなく幸樹も幸せだもんね~?」

「まあそれはそう、マジで助かってるからこれからもよろしくな」

「おうおう任せるが良いぞ、そして感謝の念を込めて思いっきり力入れて抱き締めるが良いぞ」

「はーいぎゅっとしちゃおうねー」

「んにぇぇぇ~~……」


 久しぶりに聞きましたねその奇声、今日は猫が伸びしてる時に上げそうな声です、そして相変わらず孫は何も言いません、これが普通なのかな……

 あと直美ちゃん家ヤベェな、最悪離婚でしょこれ、万が一引っ越しにでもなったら目も当てられない。頼むから大学行って一人暮らし始めるまでは持ってくださいよ、孫の人生にはこの子が必要なんですよ、マジ祈りますからね、私幽霊だから祈られる側ですけど……あっこれ天丼か。

 とはいえ気にしすぎても仕方ないので一旦「まあなんとかなるべ」と流すことにしましょう、なーに最悪幸樹のパパがなんとかしますよ、あの子はなんというか、ちょっと怖いレベルで口が上手いですからね、やろうと思えばなんとでもできるでしょう。いや本当に怖いんですよウチの息子、誰とでも仲良くなれるというか人とトラブルになる度に必ず円満解決するというか、多分相手の言って欲しいことを見抜くのがうまいんですよね、どうやってるかは知りませんが人から好感を得る方法を心得ているのでしょう。そのクセ身内にはそういう小細工を使ってこないのが小賢しいんだから全くもう。


 それからの二人は静かにアニメを視聴して──上下を入れ替えて孫を膝に乗せようとした直美ちゃんが数分でギブアップしたりしていましたが──まあそうやって、テスト後のボーナスタイムを楽しんで過ごしました。おばあちゃんも若者の恋愛を眺められて大満足ですわぞ、この調子でよろしくね。

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