第6話 8
ただそれが選ばれなかったのはきっと『僕』が知っている桃太郎では、桃太郎は"鬼が村へ来て悪さをする"と言うおじいさんとおばあさんのセリフのみで、実際悪さをする場面は描かれていないこと。
シンデレラでは継母達が意地悪してはいたが、絵本では王子様と結ばれて終わっているので、継母達の"その後"が描かれていなかったことだ。
もちろん、まだ幼い当時の『僕』はここまで気がついてはいなかった。
共通する終わり方なだけで、きっとただの偶然だろうと当時は思っていたのだ。
"今の『僕』"がふと思い出しただけに過ぎず、この考えも偶然かどうか今となっては答える人間もいない。
『えほん すごくどきどきする』
『かなしくて いたいこともある でもみんなしあわせになる』
『それがうれしい』
天使様は小さな子供のように無邪気に笑う。
絵本の終わり方は残酷だと思われなくて良かった。
「今度外の人……鍵守さん?に、こんな本が読みたいというのがあればお願いしてみましょうか」
『こんなほん』
天使様は首をこてんと傾げる。
"こんな本ってどういうこと?"と言いたげだ。
「例えば、眠れない子供のもとにお化けがやってくるような怖い本。
動物が大きなお菓子を作る本があるんです」
『僕』は昔読んだことのある絵本を思い浮かべてみれば、天使様の不思議そうな顔はぱっと花開くように明るくなった。
こくこくと何度も頷いて、急かされるように指を動かした。




