第6話 3
「天使様、"鍵守"って知ってますか?」
天使様は聞き慣れないのか首を傾げた後、首を横に振る。
天使様が手を伸ばしてきたので、『僕』は自分の手を天使様に差し出した。
『そとのこと しらない』
『そとのひと おはなししたことない』
天使様は外に出ることなく牢獄にいるため、知らないのは当然だ。
それはそうか、と『僕』は納得した。
天使様は俯いて、何もわからなかったからなのか申し訳なさそうに目を伏せる。
『僕』は明日お話してみますねと、天使様に伝えるとこっくりと頷いた。
事実、話が出来ない相手ではなかったので本人に聞けば言い。
『僕』はひとまず今はどうにもできないので"鍵守"の件は置いておき、荷物の封をとく。
天使様は『僕』の荷物を興味深そうに見て、中から出てきた平たく大きい本を目にして首を傾げた。
その本を差し出すと、天使様は不思議そうな顔で受けとる。
「絵本です。文字を覚えたならまずはこう言う本から読んだ方が良いかと」
天使様は裏表をくるくる見回して、絵本特有の固い本をめくった。
じぃっと大人しくページに書かれた文字を目でなぞる。
天使様は何か言うでもなく、絵本を眺めていた。
「読めますか?」
天使様は面白いのか、こくこくと何度も頷いて、また絵本に視線を落とす。
その姿をぼんやり見守っていると、天使様は絵本を閉じた。
大事そうに絵本を持って、にこにこ満足そうだ。
天使様はいそいそと『僕』の手のひらをねだる。
差し出した手のひらに、いつもよりも早い手つきで文字を書いた。




