第6話 2
「天使が読めるようにか」
「僕用です、学校で習ってない漢字はわからないので」
相手は天使様の本だと気づいているが、最初に「天使の物ではなく自分の物と誤魔化せ」と言う彼の言葉に従う。
正解だったのか、彼は「それでいい」と答えてメモ帳を懐に納めた。
「あの!」
彼が去ろうと背中を向けたところで『僕』は呼び止める。
男は緩慢な動きで振り返った。
「な、名前はなんですか?」
再び沈黙が流れる。
顔が見えないので、呆れているのか怒っているのかどうかすらわからない。
ここから出るには、きっと彼がヒントになるかも知れないと思った上での質問だ。
『僕』が変なことを聞いたかも知れないと、後悔し始めたが、男は重い口をようやく開いた。
「鍵守」
「かぎ、もり?」
聞きなれない名前をなぞる様に口にする。
男は再び背中を向け、こちらに向こうとしない。
「お前と同じだ、御使い縛り。お前が天使を縛る鎖なら、俺はお前を止める杭だ」
「どういうことですか」
「俺もふざけた"お役目"を背負っている同類というだけだ」
鍵守と名乗った男はそのまま去ってしまった。
その背中を見送りながら、『僕』はこれ以上の意味はないと悟り小窓を閉める。
飛び起きて、話をしていた『僕』を心配していたんだろう。
天使様はそわそわと檻の前をうろついている。
「おはようございます。天使様」
天使様はにっこり笑って頭を下げた。
『僕』は荷物を持って檻の前に座る。




