第6話 1
何度めかの朝を迎えた。
いつものように鉄の扉を叩かれて、静まり返った牢獄に大きな音が反響する。
「は、はい!おはようございます!」
昨日遅くまで天使様に色々教えていた『僕』はその音で目を覚ました。
慌てて小窓を開けて、返すものも渡す物も準備していなかった『僕』は"ちょっと待っててください"と急いであれこれ用意する。
まずは荷物と食事が差し出されてそれを受け取った。
荷物の方はそれなりの厚さと大きさがあって、絵本が入っていることがすぐにわかった。
「絵本は適当に選ばせて貰った」
低く素っ気ない声に素直にお礼を述べると、今度は必要な物を書いたメモ帳を渡す。
扉の向こうの人物はその場でそれを確認している様で、小窓からメモ帳を開く姿が見えた。
その時、彼の腰にいくつも連なった古びた鍵束が下げられているのが目に映る。
この牢の鍵だろうか、そんな事を考えていると、"おい"と感情の読みづらい声を投げ掛けられた。
「お前でも読める本、と言う書き方は分かりにくい。また子供向けの本を選べば良いのか」
「最初に貰った本は漢字がいっぱいあって読めなかったんです。なので読み仮名が沢山ある本が欲しいです」
嘘は言っていないが、扉の向こうの男は黙り込んでしまった。
沈黙が流れ、閉ざされた牢獄からすればいつもの事だが、代わりに心臓が脈打って嫌に落ち着かない。




