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第5話 3
「いえ、天使様が退屈しないようにで……」
「字が読めるのか」
感情のわからない声。
怒っているのかすらわからない相手に、『僕』は少しだけ萎縮してしまう。
何か不味いことをしたのではないかと、背中をイヤな汗が伝った。
「僕が教えました。天使様は話せないみたいだったので……」
沈黙が流れる。
顔が見えないことが不安を駆り立てる。
数秒の間が永遠にも感じられた。
しばらくして小窓から相手のため息が聞こえた。
「ここには俺以外がくることは無いが、もしも俺以外が来ることがあれば自分のものだと誤魔化せ。村の老いぼれ共は天使の変化を嫌う」
「えっ……」
天使様に勝手なことをするなと怒られると思っていたが、予想と違ってかけられた言葉は以外にも忠告だった。
『僕』が聞き返すよりも前に小窓は閉じられてしまう。
「待って!」
閉じられた小窓を叩き、扉の向こうに叫ぶが反応は無い。
帰ってしまったと悟ったのは、呆然と立ち尽くす『僕』を天使様が呼んだあたりだった。
届けられた物を机に置いて、檻の前に座る。
『だいじょうぶ』
表情を見ると、天使様は心配していることがわかった。
おそらく疑問系で、天使様なりに撫でようとしても『僕』は檻の外にいるから届かない。




