第5話 2
「大丈夫、僕は天使様とここを出ますよ。天使様を縛る人間は、僕が最後です」
『僕』は死ぬつもりなど毛頭無く、天使様にこれ以上悲しいものを見せるつもりも無い。
手をぎゅっと握って真っ直ぐ目を見つめると、天使様はふにゃりと気の抜けた笑みを浮かべた。
天使様が安心したかはわからないが落ち着いて、そこからは他愛無い話や手遊びを繰り返した。
途中昼食を取るなりしたが、遊んでいる内に夜になる。
また食事や荷物が届く前に、『僕』はふと思い立ち、メモ帳にいくつか欲しいものを書いた。
『僕』もそうだが、天使様が退屈しない為の物を書き記す。
それからしばらくして、鉄の扉が大きく叩かれた。
「は、はい!」
毎度この前触れの無い訪問は心臓に悪い。
『僕』はびっくりしながら、食器とメモ帳を渡した。
「ありがとうございます」
反応はないと言うのに、届けられた夕食に対して反射的にお礼を述べてしまう。
ただいつもは用事が住めば帰るこの人が、今日は小窓も開けっ放しで直ぐそこにいることが伺えた。
「この絵本はお前が読むのか」
初めて口を開かれた。
メモ帳に必要な物として「絵本」と書いていた事だろう。
『僕』は内心驚きながらも、小窓からでは顔が見えない向こうの人物に、咄嗟に首を横に振った。
ただそれでは見えないことに気付き、「えっと」と要領得ない声が漏れながらも答える。




