第4話 2
『いまはうらんでもいい』
『もしもでられたのなら どうかゆるしてあげて』
天使様は『僕』の手を握りしめ、祈るように額に当てた。
その言葉の返事を、『僕』は出せないでいる。
『僕』自身、育ててくれたこともあって気持ちの整理がついていないのだ。
「わからないです、そんなこと言われたって……」
『それでいいの ただおぼえていて』
当時の『僕』はその言葉にひどく困惑したのを覚えている。
何故、囚われた天使様が村の人を庇うのか。
何故、『僕』にそんなことを言ったのか。
今なら少しだけ、あの人の言葉の意味がわかるが、生憎と当時の『僕』にそんな事を考える余裕なんてなかったのだ。
朝のシン、と静まり返った冷たい空気に包まれ『僕』は"覚えておきます"とだけ答える。
天使様は何も語ることなく、安心した様子で微笑んだ。
「でも、出るにしたってどうやって出ましょう。お願いして出してくれる訳がありませんし」
きっと色々考えることはあるから、まずは朝食を手早く片付けてからそう切り出す。
『僕』は現状を整理するためにも、この牢獄の中を見渡した。
四方を固い石で作られ、天窓はあっても鉄格子がはめられている。
天使様のいる牢の鉄格子も、『僕』くらいの子供がようやく通れる程度の幅しかない。
それに、天使様には首枷、鉄格子の幅では通れないほどの手枷、遠くへ行くことの出来なさそうな足枷が嵌められている。




