第4話 1
「だめ、ですよ……」
『僕』は天使様の手握ったまま、か細く震える声で唇を開く。
強い力で握ってしまっているのに、天使様が痛がらないのは『僕』が非力な子供だからだ。
「やっぱり僕だけが逃げても意味なんてない。天使様がいるから僕みたいな御使い縛りが生まれる、生まれてきたんです」
天使様が残ったところで、村人は『僕』の代わりに誰かを宛がうだけだ。
そんなことに何の意味もない。
それに結局はこの人が取り残されるだけで何も解決しない。
村人は平穏でいられ、『僕』は外に出られるきっと幸せな話なんだろう。
天使様の存在を無視すれば。
「こんな牢獄で泣くのは僕で最後にさせてください。言葉の対価と言うのなら、これが僕の望む対価です」
天使様はその言葉に迷いを見せた後、『僕』の手のひらに言葉を綴った。
『わかった』
『僕』はほっと安心したが、天使様の言葉はそこで終わりではない。
『ただ おねがいがある』
「お願い?」
天使様はずっと迷っているような悲しい顔をしていた。
白い指先が『僕』の手のひらに"お願い"を綴ろうとするが、伝えて良いのか分からないかのように、指先は空をなぞる。
『むらのひとたちを うらまないで』
やっと綴られた言葉は、『僕』を迷わせる言葉その者だった。
天使様を閉じ込め、何人もの人に御使い縛りという役目を与え、『僕』を閉じ込めた村の人達。




