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第3話 8
「だめですよ、天使様だって逃げなきゃ……。天使様が、誰よりも逃げ出したかったはずで……」
天使様は首を横に振る。
『みんな、さいしょはしあわせになりたかっただけ。いまはわたしがこわいからとじこめてるだけ』
続けて天使様が文字を綴る。
『だからあともどりができなくなった』
天使様の言葉の通り、村では天使は繁栄をもたらす存在と語られている。
ただそれが今は"捕らえてしまった天使を逃せばどうなるかわからない恐怖"が底に潜んでいるのだ。
その声を奪ってしまったのが仇になり、この人の御心を知る術がなくなったばかりに
『にげてもいいの。むらからもわたしからも』
だがこれはたとえ本心でも天使様に言わせていい言葉ではない気がして、『僕』は言いきれない想いだけが溢れた。
言葉を聞かないためか、『僕』いつの間にか天使様の手を握っている。
それから、今さらになって合点がいった。
天使様を出してあげる、あるいは出たいかと聞くたびにこの人は首を振り、『僕』を指差していた。
あれはきっと、本当に逃げたいのは『僕』で、村からも天使様からも逃げていいという意味だったんだ。




