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第3話 7
『ことばをくれてありがとう』
天使様は宝物みたいに一文字一文字を丁寧に綴っていた。
言葉を紡ぐ間、天使様の表情は愛しいものをみるような穏やかな表情だった。
「僕はただ教えただけです。天使様が頑張って覚えたからですよ」
『それでもうれしい』
天使様はそれを書くと、何かを探すみたいに檻の中を見渡した。
石で囲まれたそこには空虚さだけが漂っていて、あるのは天使様を繋ぐ鎖くらいか、クモの巣しかない。
天使様は少し項垂れた様子で、また言葉を書き始める。
『なにもあげられない』
『僕』はお返しなんて要らないですよと言おうとしたが、やめてしまった。
天使様の言葉はまだ続いていて、その言葉に少し驚いてしまったからだ。
『だから、にがしてあげる』
『こえをとられたわたしに、あなたは言葉をくれた』
『あなただけはにがしてあげる。あなたはにげてもいいの』
天使様の言葉はそこで終わる。
『僕』はぱっと顔をあげると、天使様は少しだけ悲しい笑顔で、静寂を促すよう唇の前で人差し指をたてた。
出られるならここから出たいが、それはこの人もだ。
それに、『僕』が逃げてもまた別の誰かがこの人を縛るためだけに選ばれる。
『僕』だけが逃げても意味がない。




