第3話 2
「いつか見せてくださいね」
今は読まれたくないだけのようで、天使様はこくりと頷く。
天使様は今は勉強を中断しているようで、いよいよやることもない。
「今何時なんだろう」
ここは時計もなくカレンダーも勿論ないので、まだここへ来て恐らく1日めだけれども時間の感覚はとうに無くなっている。
『僕』はせめて日付だけでもと荷物にあった手近な紙に"正"を途中まで書いた。
書いてから、どうせ出られないかと正気に戻る。
目覚めたばかりで眠くないけれど、寝台に乱暴に横たわった。
「天使様はいつも何をしているんですか?」
天使様は鉄格子のついた窓を指差す。
小さな窓枠の外には闇が広がっていて、その向こうには星や月が浮かんでいた。
まるで絵画のようだ。
冷たい石で囲われた牢獄で輝く星は一際美しく目に移った。
「星を見てるんですか?」
天使様はちょっと悩んだあと頷く。
若干ニュアンスが違ったのだろうか。
空かと聞くと、あっているようで天使様は嬉しそうだ。
「退屈じゃありません?」
首を横に振る。
『僕』は天使様の近くに座って、同じように星を見上げた。
吸い込まれそうな宙の闇。
果てを見ようと目を凝らしてもどこまでも闇が広がっている。
思えばしっかりと空を見上げるのは始めてだ。
ぼんやりと時間を忘れて見ていられる。
「天使様はあの空から来たんですか?」
こちらを見ずに頷いた。
懐かしいものを見るような目で空から目を離さない。




