第2話 9
「まず、"あいうえお"から頑張りましょう。えっと、"あ"の書き方はですね……」
『僕』は初めてひらがなを教わったときを必死に思い出しながら、書き順をノートの隅に書く。
天使様はそれを見て、『僕』の真似をしようと書こうとするものの、握りこぶしで強く持ったまま書こうとして、線を引く前に、ぺき、と小さく儚い音を立てて芯は早々に折れてしまった。
天使様は呆然と芯だった欠片を見つめ、しょんぼりと肩を落としてしまう。
「だ、大丈夫ですよ。まずは鉛筆の持ち方からですね!」
『僕』は筆箱から新しい鉛筆を用意して、天使様にまずは持ち方から教える。
天使様はぎこちなく鉛筆を持って、力を入れすぎないようにそうっと紙に線を引き始めた。
ぐにゃぐにゃとまともに線を引くことすら覚束ないものの、折らずに線を引けたことが嬉しいようだ。
天使様はほうっと息を吐く。
天使様は見本を見ながら、ゆっくりゆっくり文字を書きすすめた。
まずは基本のあいうえおを書きはじめ、書き順で行き詰まったりしたようなら『僕』が横から描いて見せる。
最初から五十音全部を書くのは無理があると言うのに、天使様は沢山時間をかけていくつも失敗した文字を書き綴って行く。
『僕』は文字の音を書きながら教えて、天使様はそれを真剣そうに聞いていた
多分何時間かたったのだろう。空で燦然と輝く太陽が浮かぶ位置を変えている。




