15/51
第2話 8
『僕』のやることが気になるのだろうか、天使様は物珍しそうな目で『僕』のノートを覗き込んでいた。
ペン先をじぃっと見つめていたかと思えば、天使様は牢の隅に転がっていた小石を拾って、石畳に何かし始める。
チラリと見やれば、石畳にがりがりとよくわからない線や図形を書いていた。
へろへろと曲がりくねって、かと思えば変にまっすぐだったりと安定しない。
よくよく眺めてみればそれは文字のようで、恐らく『僕』のしていることの真似だろうか。
言葉はわかっても、文字は書けないらしい。
村人はずうっとずうっと昔に前に天使様を捕まえたと言っていた。
もしそうなら、何人もの「御使い縛り」から言葉は覚えても、文字は知る機会が無かったのだろうか。
『僕』はノートにあ、い、う、え、おと努めて丁寧に五十音を書き綴る。
今は文字が書けなくても、覚えればきっと天使様もお喋りできるにちがいない。
幸い時間は沢山あるから、『僕』は手作りのひらがな表とノートと鉛筆を手に、天使様の目の前に座り込んだ。
「天使様、お勉強しませんか。字を覚えれば、これを書いてお喋りできますよ」
『僕』の言葉に天使様はぱっと顔を上げて、お喋り出来ると言う言葉に反応したかわからないが、大きくぶんぶん頷く。
檻の向こうにひらがな表とノートを差し出し、鉛筆を握らせた。




