第2話 6
「天使様、髪を綺麗にしますね」
『僕』はこの人が「天使様」と呼ばれているにも関わらず牢獄に閉じ込められているだけでなく、村人が「御使い縛り」には最低限住める環境を用意するが、天使様に与えられたのは石の牢獄と重く冷たい枷だけで髪や翼を整えるものも、それこそちゃんとした衣服すら与えない不当さが嫌だった。
天使様は喜んでいるのか、驚いた表情だったが嬉しそうに笑ってくれた後に、『僕』が髪を鋤きやすいよう鉄格子によってくれて、目を閉じた。
天使様の、人間ではあり得ない色の髪に触れて、ぼさぼさになったままの髪を少しずつ解かしていく。
天使様の喉元からひゅうひゅうと音が聞こえた。
笑った声なのかもしれない。
現に髪の間から覗く天使様の顔はくすぐったそうだ。
乱れた髪は櫛を通す度にまるで絹糸のように輝く。
「はい、後ろ向いてください」
前から出来る分は解かし終えて、後ろを向いて貰えば気分は美容師さんだ。
天使様の表情は見えなくても、心地いいと思ってくれているのは確かなのですこし嬉しい。
絡んだところは痛くないようにゆっくりゆっくり解いて、埃まで被っていたのでそうっと払う。
放置されて雑草のように伸びた髪は陽光に煌めいた。
「終わりました、もういいですよ」
『僕』が櫛を片付けると、天使様はこちらへ振り返り、ゆらゆら揺れる自分の髪に触れる。
指で鋤いてみたり、肩口から流れる自分の髪を眺めていた。




