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「て、天下を…」
それがこの暁城の落城と共に燃え尽き一度は死んだが、天空より飛来せし緑の石によって生き返りを果たした惨鬼義盛という男の二度目の最後の言葉となった。
義盛の二つになった身体が左右に裂けると同時に緑色の光が飛び出し、空中を渦巻いて漂った。
一時、その場に浮遊した光は、今度はすさまじい速さで外に出て、静香の胸へと突っ込んだ。
静香の全身が緑色に発光する。
周りに居た城兵たちは義盛の死の瞬間に倒れ、崩れ散っていた。
静香は体内に取り込まれていく義盛の力を楽しみ、味わうように両眼を閉じた。
しばらくして、発光が収まった。
静香が眼を開く。
強烈な緑の光が、その双眸より洩れ輝いた。
静香が先ほどの斬撃で、縦に割られた天守閣をにらみつけた。
瞳が輝きを増す。
斬っ。
天守閣が、今度は横一文字に一瞬で切断された。
続けざまに巻き起こる巨大な斬撃に天守閣は散々に斬り刻まれ、がらがらと地響きを立てて崩壊した。
静香は折れた刀と鞘を捨てた。
もはや、無用である。
父の形見であることさえ、どうでもよくなっていた。
「斬りたい」と念じるだけで斬ることが出来るからだ。
「斬れる、斬れるぞ!!」
静香が天を仰いで大笑いした。