第3話「涼音おばあちゃん、(怪しい)説明を受ける」
音ゲー勇者!!
⻆谷 春那
第三話
「涼音おばあちゃん、(怪しい)説明を受ける」
「ってまぁそんな感じで、多分『才能』って感じの能力じゃないと思う。ただ~、何て言うの?『ある程度の土台を持ったままスタート出来る』と言うか~…。『強くてニューゲーム』?」
「意外と、不便なんですね~。」
「そうね~。それに、貴女の場合…。生前に触れた事のある楽器は、その基準を既に超えてる気がするのよね。だから、この世界にしかない楽器でくらいしか、『サポート』的な効果は出ないと思う。それに、ほんの初歩の初歩の上げ底だしね。『ドレミファソラシド』全部弾ける程度?まぁ、管楽器じゃあ便利か?」
そう言いながら、紙―先程の新聞紙のようなものではなく、良質で、艶と光沢がある―を持ちながら、説明している。
「凄いですね。一体、どなたのお仕事ですか?」
「えっと…『ダチュラ』は本名じゃないし…。」
「…おっとぉ?」
「いや、違うのよ?ただ、本名が私達にとってはちょっと、聞き馴染みのなくてね?異国の人なのよ。えっと、本名は何だったかしら…?あ!思い出した!!『アミハナ』!!気を付けてね?あの人が居るって事は、多分あの世だし。」
「え…?」
「この人、ナチュラルにあの世の神の一人だから。彼女が居たら、速攻逃げた方が良いわ。あ、本人もそう言ってるからね?」
「マジか…。」
「良い人だから、帰り道も教えてくれるはずよ?ただ、猛ダッシュで逃げなきゃいけない状況だけどね?」
「あの世もあるんだ、この世界…」
「勿論よ。ただ、繋がりにくいけどね。冥界。安心してね。滅多な事しない限り、迷い込まないはずよ?」
「何か、フラグが立っているような…。」
「…確かに、今のは大いにフラグね。」
「…ヤバくないですか?」
「…ヤバいわね。」
「どうしてくれるんですか?!」
「まぁまぁ、落ち着きなさい?私の経験上、フラグが見事に回収されるケースは、お話の中だけ。因果応報にならないのと一緒。」
「確かに。」
「…あ、説明説明。えっと…?あ、魔法が【勇者の力】に、組み込まれているそうよ?何も、『イメージを共有する魔法』とか。」
「えっと…?」
「つまり、壮大な風景を想像しながらやったら、そのまま具現化したり、しなかったりす、る…?え、最強じゃん!!」
「わ、チートだ!!」
「あ、でも。本人の技量次第…技量…?ハンデがハンデになっていない?」
そう。何を隠そう鈴木 涼音(108)。音ゲーをプレイヤーの方で極めたら、次第に高難易度曲を自分でも作りたくなっちゃった人なのである(山本 涼音14才時点)。しかも、そのために楽器や歌唱をひたすらに極め、その才を十二分に発揮―結果、作詞・作曲・編曲で食べて来た人間である。正直、Vチューバーの方が副業の節もあった。と言うか、音ゲーマー兼作曲者の方を先にやっていたので、逆なのだ。
つまり、ハンデがハンデをしていない。一般ピーポーならハンデだろうが、鈴木 涼音(108)にとって、何の問題もないのだ。おい、誰か下方修正入れろ。
「…まぁまぁまぁ。」
「…って事は、あれ?海をイメージして楽器を弾いたら、海が出てきたり出なかったり…?」
「ワ、ワ、ワァ。」
「え、まだある…?えっと?『リズム感が良くなります。(戦闘に活かせるくらい)』?…ここまで来るともはや、恨まれそうね。大丈夫?…って、あぁ。そんなに頭を抱えないで…」
「…秘匿しましょう。」
「まぁ、それが妥当かしらね…って、あ。結構なハンデがあったわ。その、『イメージの具現化』の方。多分貴女、魔力が足りないわ。一回出せるか、出せないか。出せても、バタンキュー確定レベルの魔力量が必要ね。…これじゃ、宝の持ち腐れになっちゃうわね。」
「あ、ようやくマトモなハンデが。やっぱり、ケモミミ種族って、魔法が苦手だったりするんですか?」
「あー、貴女の世界の異世界の定番に、
『獣人は魔力が少ない』
とか、
『魔法に不向きな種族』
って、あったわよね?まぁ、貴女の種族は獣人じゃないけど。この世界だと逆に、
『魔法使い=獣人』
レベル。魔法に秀でた種族として人気なのよね。まぁつまり、魔法の適正は豊かなはずなんだけど…?あー、本当に。桁間違えてない…?」
「…もう、誰が使えるんですか。そんな魔法…。」
「じゃあ実戦?だと、その『リズム感』で戦えと…?」
「まぁ、そういう事じゃない?」
「と言うか、戦う必要がある世界だったりします…?」
「あ、結構風評被害がありそうね。こっち、かなり発展してるわよ?医療とか、統治とか。治安だって…まぁ、まちまちか。でも。」
「でも?」
「民主主義の国が半数以上ね。」
「現代的だ!!!」
「…社会保険も、発明されてるわ。宗教的な意図が強いけど。」
「マジで?!」
「…麻酔も手術もワクチンも、相当昔からある。」
「え、これ現代日本レベル?」
「まぁ、電気が発見されていないけどね。だから、風景とかはイメージ通りかも。だけど、魔力があるから。結構、元居た世界の『精密機械』と似たような魔道具が、いっぱいあるはずよ?」
「…つまり?」
「戦う必要、(一般人なら基本)ほぼナッシング!!」
「マジで?!」
「大マジ。」
「と見せかけて…?」
「…まぁ、ヤバい集団がいるから、気を付けてね☆」
「マジか~。」
「何か、ヤバいカルト集団が居てね?結構、各国も目を光らせてるけど…まぁ、自衛を身に着けておいた方が身のためね。」
「女神様がカルト教団って言って良いんですか…?」
「しょうがない。アイツらの信仰神、あってないようなものだし。まぁ、何?『解釈の違い』ってやつ?何だろう。
『ファンが勝手に暴走してます』
って言う感じ。マジ迷惑。」
「…ちなみに、どんな活動をしてるんですか?」
「…テロ。」
「wow」
「誘拐。洗脳。殺人。」
「…え~。」
「ありとあらゆるトラブル・犯罪にその【デウス】あり。他の宗教団体への焼き討ちもやってて、家も何度やられた事か…。糞!…もう、
『デウスを見たら、そっと離れて、通報しましょう。』
がこの世界の常識。覚えてね。マジで。あ、【デウス】って言うのが、その教団の名前。穏健派は別に、悪くないのよ?ただ、過激派―【デウス】はもう、殺した方が良いかも。と言うか、神が良くない!!」
「…貴女も神なのでは?」
「なんだろう。彼らの信仰神がさ?さっき話した、同業者のカスなのよ!!助長するな!!止めやがれ!!!カース!!!!!」
「お口が悪いですよ?」
「しょうがない。カスにカスと言って何が悪い?!事実陳列罪は、存在しません!!オブラートに包めば詐欺になる!!!」
「まぁまぁ。お茶でも飲んで落ち着いて下さい。」
「その流れ、さっきもやった!!…まぁとにかく。【デウス】に気を付けてね?貴女の誕生を阻害した奴を信仰してる、クレイジー集団だから。きっと貴女を狙うのは、確実ね。だから、覚えた方が良いかも。護身術。」
「えぇ…?」
「本当に、これに関しては申し訳なく思ってるわ。もう、出来る限りの事もする。しっかり警備もつけるし。私達も、この世界のどの国も。【デウス】は許さない。」
「…で、私はこの世界で、何でもして良いんですか?」
「そう!!何でも!!貴女の望むままに!!…正直、こっちには思惑がある。その。さっき言った通り。…私も、【デウス】―と言うより、奴らの信仰神が、大っ嫌い。もう、何度も、何度も。最悪な事をされてきたわ。正直、復讐したい。…私、貴女―【音の勇者】がこの世界に生まれるの、とっても楽しみにしてたの。それも、奪われるところだった。それ以前に。何度も何度も。奪われて来たわ。…あ、ごめんなさいね。こんな辛気臭い話。ミュージカルに書き換えましょうか?」
「何故ミュージカル?!」
「え?楽しい方が、良いかなって。」
「いや、別に良いですよ?伊達に、百年以上人生経験積んでませんし。」
「それを言われると、私の方が、年上よ?」
「見えませんけどね。」
「それは、貴女もじゃない?…貴女がこの世界で生きれば、奴の思惑が打ち砕かれる。これは一つ、確かな事。奴への嫌がらせになる。…あ、別に、そのためだけに呼び戻した訳じゃないの!!」
「大丈夫、分かってますよ?さっき聞きましたから。」
「世界が異なる魂は、規格の差により摩耗し、やがて異形に姿を変える」。恐ろしい事実である。つまり、その「女神が本当に憎んでいる神」は、一人の人間を、異形に変えかけた訳だ。それが真の目的であるかはさておき。
「異界に飛ばされた」
と聞いた時の女神の心境は、容易に察せられる。
「…貴女、思った以上に老けてるわね。内面が。おばあちゃんみたい。」
「そりゃあ、おばあちゃんですから。」
「…違和感しかなくない?私達。おばあちゃんと孫みたいになっちゃう」
「まぁ、もう
『お姉さんよ』
と訂正できる歳じゃあ、ありませんしね。」
「ちょっと~?それ、私にもダメージが来るんだけど~?」
「まぁまぁ。」
「…今生は、長いわよ?と言うか、私が離してあげないわ。せっかくの、私の勇者だもん。もう、長生きしてね。スズネ。」
「…えっと。『ムリカ』様。」
「『ムジカ』よ!?」
「そうそう。ムジカ様。」
「…今生は、どう生きるつもり?」
「長いんですよね?」
「えぇ、とっても。」
「種族的に?」
「それもあるかもだけど、【勇者】は長命種だから。」
「…じゃあ、とりあえず。いろんな国を、旅したいですね。」
「終活の続き?」
「…確かに、そうなりますな。」
「まぁ、心機一転に旅は、定番ね。それで?」
「まぁ、この世界の文化を知りたいですね。出来れば、サブカルチャーとかの方ですけど。後はそれから、考えます。」
「貴女、思ったよりは現実的ね。」
「酷くないですか?!」
「いやいや。あれだけ『起起承転承起転承起承転結』みたいな人生、送ってたら。ねぇ?」
「いや、あれはなりゆきなんで。」
「なりゆきで済ませられるの~?」




