第2話「涼音おばあちゃん、異世界の勇者だった」
音ゲー勇者!!
⻆谷 春那
第二話
「涼音おばあちゃん、異世界の勇者だった。」
「あー、ごめんね?まさか、嫌がるとは思っていなくて…。」
「うー。こんな癖公開処刑の体で、これから生きていけと…?」
地面に突っ伏している元老婆と、それを見て困惑する女神。何やら、一通り暴れた痕跡も伺える。先程より、家具が散らかっている。
「あー、そうね。・・・無理?」
この反応。どうやら、チェンジは無理そうだ。
「無理ではないですけど…。」
流石108年生きてきただけはある。飲み込みと覚悟が早い。
「・・・悪意はないのは、分かっていますので。」
「あー、良かれと思ってやったのよ。」
どうやら上位存在は、人間の「羞恥心」についてあまり理解が進んでいないらしい。誤って、インターネット上の姿を、異世界での身体として与えてしまった。
「・・・ところで、何故に私?こういうのって、トラックに轢かれて死んだり、過労死したり、強盗とか通り魔に殺されたりした人の特権じゃないんですか?老衰の婆には縁もゆかりもない話と言うのが、お約束と言うものですよ…。」
「あー、それね。あれでしょ?
『今生が不幸だったから、憧れの剣と魔法のファンタジー世界に、チート能力付きで転生させてあがるよ。』
的なやつでしょ?・・・あれ、犯罪なのよ。」
「マジですか。」
「大マジ。」
「どのくらいのヤバさですか。」
「・・・借りてきたDVDのコピーガードを外して、複製・転売するレベル。」
「殺せぇぇぇ!!!」
何か、強烈な恨みを持っているようだ。関係者だろうか、ファンなのだろうか。
「そうね、許せないわね。と言うか、魂にも規格があるからね。行っても、規格外の魂は次第に摩耗して、最期には異形に成り果てるのが関の山。」
衝撃の異世界転生の新事実(死後の世界で使えるライフハックその2)
「ブワッ。夢を壊さないで下さいよ。死人が出ますよ?ショック死。南無阿弥陀仏。」
「どのくらい?」
「コ〇ケ戦士一日分。」
「滅亡じゃん!!」
「それっくらいですよ!・・・と言うか、私、異形に成り果てますか?!酷い!!」
今話された事が真実なら、そうなる。世界の闇(爆)。
「・・・落ち着いて聞いて下さい。」
「あ、余命を宣告されそうな雰囲気。」
「貴女は元々、この世界の魂です。」
ここに来て、衝撃のカミングアウト。成程、元々異世界基準の魂なら、摩耗しない。即ち、異形にならないという事だ。めでたしめでたし。
・・・ん?無理がある。流石に、100歳越え老人にも受け入れがたい、衝撃の新事実。寧ろ、ショックで心臓が止まってしまう(もう止まっているが)。
「・・・え?」
「この世界のt」
「いや、聞こえますよ。若返って、難聴治ったし。・・・え?ちょっと。もうちょっと、ためましょうよ、そう言う大事な事は!!」
やはり神は、分かっていない。
「後に言うと、詐欺になるじゃない?鬱展開のフラグ立っちゃう。」
「にしても!!」
「えっとね。本当に、家の世界の阿呆が申し訳ないんだけどね?」
何だか、お洒落な菓子と紅茶が乗ったテーブルが出された。寝室らしき部屋なのは変わりが無いが、寝具から少し離れた場所に、机とテーブルが爆誕。いや、訂正。元からあった。「寝室兼書斎」的な部屋だったらしい。
「わぁ、高そう。」
「それがね、ただなの!」
「あ。怪しい臭い。」
「違うから!ただの信者からの貢物だから!!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「えっと。じゃあ私は元々、この世界の人間として産まれる予定だったんですか?」
「そうなのそうなの!!もう、思い出すだけで怒りが…!!!」
「あぁ、鎮まり給え、鎮まり給えー。」
何やら、人為的(神為的)なトラブルの臭い。
「・・・気づいた時にはもう、妊娠が発覚しちゃってたし。呼び戻したら、何の罪もない夫妻が悲しむし。しょうがないから、貴女が天寿を全うするのを待ってから、呼び戻す事にしたの。」
しれっと恐ろしい話。「七つまでは神の子」とは言うが。
「・・・何か、ありがとうございます。」
「もう、大変だったんだから!!貴女の魂が摩耗しないよう、現地の神様に頭下げまくったし!!もう、思い出しただけで怒りが沸々と…!!」
「自分は悪くないのに、何故か尻ぬぐいをさせられる」。神でも人でも、ストレスが溜まらない筈がない。
「・・・ちなみに、誰に怒っているんですか?」
「同業者!!同業者に一人、カスがいるの!!!!!気を付けてね、貴女も!!皆、アイツにやられてるの!!滅びろ!!」
おっと、触れてはいけなさそうな話になってきた。
「何だか、複雑な人間模様、もとい神模様…。」
「・・・多分、私のところに勇者が来るのを防ぐためだと思うの。私、こう見えて有名で、今をときめくタイプの神様だから。」
「はぁ…。」
「あ!信じてないわね!!」
「いや、『今をときめかない神』とは…?」
まさかの、そこ。
「あ、そうね。ちょっとこの世界は、複雑だから。えっとね。この世界は、沢山の神がいるの。色んな神。それこそ、『八百万の神々』の概念。」
「あぁ。あ…(察)。」
「まぁ、しょうがないわよね…?人気が上昇する神もいれば。・・・まぁ、その神が必ずしも、悪いと言う訳ではないわ。ちょっと司るものが時代とのミスマッチ起こしてたり?皆のイメージとの乖離が起こってたり…?あ!!次が多分、一番多い理由!!」
「・・・それは?」
「他でもない!件の阿呆のせい!!もう、妨害工策も良い加減にしやがれ此畜生!!」
やらかしすぎである。いや、もはや故意なのだろう。そろそろ、追放されてもおかしくないのでは…?
「何か、難しい話…。」
「いや、一人は居るでしょう?『自己中心的で、他人が嫌い。すぐに他人のせいにするから皆に嫌われているけど、人気者と思い込む』って言うタイプ。」
「やけに具体的過ぎますが…。まぁ、似たような人は居なくもなかったですね。」
「そいつの仕業以外、考えられない!!こんな事出来るし、してくれやがる奴!!」
「落ち着きましょう。お茶でも飲んで。」
豊富な人生経験が生かされる。
「これ以上話させちゃいけない」
「聞いちゃいけない」
と、長く波乱万丈な人生で培った、勘が働いた。
「あぁ、そうね。ありがとう。・・・って、私が出したお茶なんだけど?!」
「まぁまぁまぁ。」
「・・・まぁ、裏を返せば。【勇者】である貴女の存在自体が邪魔だったという事。つまり!!貴女がこの世界で生きているだけで、奴への嫌がらせになるという事!!」
素晴らしい逆算。「嫌よ嫌よも好きの内」の対義語。
「成程…。ところで、『勇者』とは?」
「あぁ。簡単に言うと…『神の力の一部を持った人間』、かしら?勇者は、その『力のルーツとなった神』の数だけ居てね。貴女の【勇者】としての力は私―【音楽の女神】の力を源流にしているから。貴女は、【音の勇者】ね。・・・何か、青ざめているけど。大丈夫…?」
「いや…。って事は、私の人気や、ゲームの上手さとか…歌とか楽器とか。あれ、その…『勇者の力』って事、ですか?」
そう。鈴木 涼音(108)。生前はVチューバーをしていたのだが、元々音ゲーで有名になった女なのだ。音ゲーでとにかく有名になり、次第に音ゲーに自作の曲が収録されるのを夢見出し―作曲を開始→それが叶っちゃった人なのである。この今の、狐耳ガールの身体―「雅客」は、涼音おばあちゃんの、V体。まぁとにかく、「今をときめいていた音ゲー系Vチューバー」をやっていたのだ。
「そう、そこよ!一番の見どころは!!」
「は、早く結論を...!」
「え?溜めた方が、良いんじゃないの?」
やはり神は(2回目なので以下略)。
「いや、もう。じらしちゃいけません、これは。言っちゃいましょう。言っちゃってください。」
「あら、そう?・・・まぁ、結論から言うとね?貴女の音楽の才は、【勇者】の力とは関係ないわ。」
「・・・マジで。」
「マジで。」
「と見せかけて…?」
「マジ。」
「・・・マジ?!」
「マジ!!」
「マジ」とは、多彩な言葉だ。涼音おばあちゃんが若い頃からあった言葉だが、晩年にもある程度使われていた言葉だ。舐めちゃいけない。
「マジで貴女、凄いよ!!」
「え、嬉しい!!ありがとうございます!!ってか、良かった~!!」
「もう、【勇者】の力って、魔力的な何かで動くの!で、地球には無いの!!と言うか、世界が違うから、力が届かないの!!」
「え、フィジカル(?)で?!」
「そう、貴女の努力と才だけで!!もう、【勇者】として覚醒したら、どのくらいになるか!!もう、ぎゃふんと言わせてやれるわ!!」
「・・・でも、何かチートみたいで、嫌です。」
「贅沢な悩み~。」




