表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/13

第7話 元カノと久しぶりに出かけた件

《結城 視点》


「ホテル楽しみね。結城〜!」


「ホテル内のレストランな。宵宮さん」


 俺の隣には、超ご機嫌の元カノ《アイシャさん》が立っている。


 本当にどうしてこうなった?


 こいつ。俺を逃がすまいと、俺の右腕をがっちり掴んで離さないし。胸当たってるんだが!


 駄目だ、意識するな。平常心平常心……平静を装え。俺《結城》〜!


「……マンション近くにあるホテル『ニューガーデン』。こんな時間じゃレストランの予約が取れないと思ってたけど、案外いけるもんなんだな」


 しかも、高校生にもなってない学生がだ。何でだろうか?


「あら? 私の家の名前を使えば良かったじゃない。それなら、直ぐに一番良い席を用意してくれるもの」


「……家の権力を直ぐに使おうとするなよ。俺たちまだ子供なんだぞ」


「そ、そうね。ごめん………???」



 アイシャの奴、あんまり分かってないって顔してんな。


「俺たちは親が《《たまたま》》お金持ちの家に産まれたラッキーな奴らなんだよ。だから、家の影響力を外であまり使わない方がいいんだよ。迷惑になることだってあるんだからな」


「!……確かにそうだわ。結城の言う通りね! 分かったわ。私、結城のために今後は宵宮家の権力を使わないでいくのだわ」


「なんで俺のためなんだよ」


「……言いたくない。ていうか、言わせようとするんじゃないわよ! 恥ずかしいわね! ふんっ!」

 

 う〜ん。これは理不尽な。


 アイシャの実家である「宵宮家」は超が付くほどのお金持ちだ。俺の家とは比べ物にならないくらいの本物のお金持ち。


 兄妹も多いらしく、アイシャは美人三姉妹の長女で、一般常識にかけた世間知らずなお嬢様に育ってしまったとか、アイシャ専属のメイドさんが昔言ってなげいていたな。


 …………つうか。アイシャのご両親は、アイシャに生活力もないのに1人暮らしをよく許したな。本当。



《ホテル『ニューガーデン』》


「ふ〜ん。あれがアイシャを振った男ですのね。遠くからじゃ上手くお顔が見えませんね……今回はアイシャのために何もしませんけど。あの娘に辛い思いをさせた罪は、いつか払わせてあげますわ」


「あ、あの〜! 有栖川様。本当に一般用の個室で宜しかったのでしょうか? それに部屋は取らなくていいも部下に聞きましたが」


「まぁ、貴方は『ニューガーデン』のオーナー様。えぇ、結構ですわ。それよりも、予約が満席なのに席をご用意頂きありがとうございます。感謝致しますわ」


「い、いえ、とんでもございません。有栖川財閥の皆様にはご贔屓ひいきにさせて頂いておりますので」


「それでも、こちらのお願いを聞いてもらって、そちら側が忙しくなったのは事実。……そうですわ! 来月の星夏高校の入学式パーティーは『ニューガーデン』で行うように学園長に進言しておきますわ。それで今回の穴埋めとさせて頂いても宜しいでしょうか?」


「そ、それは本当ですか!? あ、ありがとうございます! 従業員一同、誠心誠意込めてお出迎えさせていただきます!」


「フフフ、ありがとうございますわ。…………申し訳ありませんが。わたくし、とある方たちが来る前にお手洗いに行ってきますわ」


「は、はい。畏まりました。有栖川様」


(アイシャたちが来るまでの間に林檎りんごジュースを飲み過ぎましたわ………漏れちゃいますわ)







 ホテル内のレストランへとやって来た。


 予約した俺の名前を言うとすんなり個室へと通され、メニュー表を手渡されて食前酒……ではなく、ノンアルコールの飲み物を選ぶ。


 ここまで俺たちが中学校を卒業したばかりの子供だということを、誰も突っ込まないのは流石に可笑しくないだろうか?


「お料理楽しみね。結城〜!……その後のこともね」


「………そう」


 なにを楽しむ気なのか分からないが。


 アイシャの奴、なにを企んでるんだ? 気になり過ぎるな。


 ……まさか俺が別れを切り出したことを、本当はまだ根に持っていて仕返しに今夜俺になにかする気なのか?


 いやいや、アイシャに限ってそんなことするわけないよな。強がりなだけで、中身は弱々なアイシャさんだぞ。


「失礼致します。アミューズの「春キャベツのキッシュ」になります」


「あ、ありがとうございます」


 なんどと考えていたら料理が運ばれてきた。


 最高級ホテルのレストラン。

 テーブルマナーは大事、粗相は駄目だ。


 実家が芸能関係だと、ここら辺が厳しいんだよな。どこから誰の目が光っているか分からない。


「今夜は、楽しむわよ。結城」


「……なんで君は、獲物を狙うような目で俺を見てるんだよ」



 ………2時間後。



「結城〜! 頭がボーッとするわ〜!………少し眠るわね………」


「…………アイシャ、なんでジンジャーエールで酔うんだよ。……聞いてないし」


 本当に眠っている。


 料理の中に入っていた微量の料理酒で酔ったかな?


 ……そういう俺もトイレが近くなってきた。


「すみません。彼女、少し体調が悪いようなので、横になれるように椅子を用意して頂いてもいいですか?」


「は、はい。直ぐご用意致します。少々お待ちをっ!」


 サービス(女性)の人たちがソファーを担いで持ってきた。いや、どんなサービスだよ。


「……うぅ……俺もアイシャが寝ている間にトイレトイレと……」


 眠っているアイシャを残していくのは、申し訳ないが膀胱が破裂しそうなんだ。許してほしい。





「…………ここはどこですの? 迷いましたわ」


 そしてトイレの後、ホテル内で迷子になった女の子と遭遇した。艶やかな銀髪の女の子に。


「どうしたんですか?」


「え?……貴方は……(綺麗なお顔の方ですわね。一瞬、見惚みとれてしまいましたわ)」


「?」


「は、はい。少し迷ってしまいまして、途方に暮れていましたの。最上階にある「百合の部屋」に行きたいのですけど。分からなくて」


「そうなんですか。それは困りましたね。……少し待ってて下さい。ホテル内の地図を見てみますね」


「ホテル内の地図ですの?」


 俺はポケットからスマホを取り出すと、『ニューガーデン』のサイトを検索。ホテル内の地図が掲載されているブラウザを開いた。


「あぁ、ここか。「百合の部屋」でしたよね? ここから近いんで案内しますから、付いてきて下さい。お嬢さん」


 どう見ても身分が高そうな高貴な人にしか見えないんだよな。この女の子。



「まぁ、紳士的ですわね。今時いませんわ。貴方みたいな方」


「ハハハ……でしょうね。じゃあ、行きましょう」


 ……紳士的に扱わないと怒る猛獣アイシャさんと付き合ってたからな。


 その後、お嬢さん……有栖川葵さんを「百合の部屋」へと無事に連れて行った。



「ここまで案内していただきありがとうございますわ。シラキさん」


「ん〜! いや、俺はシラ……」


 いや待て、この娘の些細な間違いを否定して怒らせるのもよくないか。


 もう、会うこともないだろうし。名前の間違いくらい指摘しなくてもいいか。


「シラキさん? どうされましたの?」


「あ、いえ。君を無事に送り届けられてよかったよ。それじゃあ、今度から迷子には気をつけて、有栖川葵さん。さようなら」


トュンクッ!


「え、ええ、さようならですわ。……シラキ様。……あら? わたくし……どうしたのでしょうか? 心臓の鼓動が……」




 その後、有栖川さんとは別れ。


 アイシャの居るレストランに戻ったが……


「むにゃむにゃ……結城。今夜こそは〜!」


「完全に寝落ちしてしまいまして。どうされますか?」


 困り果てた顔をしたサービスの人が、俺を出迎えてくれた。


「……あ〜、取り敢えず料理は全部出して下さい。残しても勿体ないので、俺が全部頂きます。それと支払いはクレジットカードで」


「か、畏まりました。す、すぐにお持ち致します」


 運ばれてくる料理を食べつつ、アイシャの寝顔を見ながら優雅な夜食を1人で堪能したのだった。


「高級レストランでの、静かな食事もいいもんなんだな。また新たな知見を得てしまったな」


「……今夜はハッスルよ。結城〜!……むにゃむにゃ……」


「同じお嬢様でも、アイシャは愛嬌がある「おもしれえ女の子」枠だよな。……アイシャは」


 俺は、そんな「おもしれえ女の子」の寝顔を見ながら、幸せな気分に浸っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ