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第4話 寄り戻したいのに、何するの?

 

 結城と久しぶりに食べるピザ美味しすぎるんですけど。


 これまで空虚だった心が満たされていく気分だわ。




「そ、そうだったのね。全部私のために動いてくれていたのに、私ったら勘違いしていたのね。ごめんなさい」


「良かった。やっと誤解が解けて……やっと分かってくれたか。つうか、アイシャは俺の話をもっと冷静に聞いてくれよな。付き合ってた頃からの悪いくせだぞ」


「ご、ごめんなさい。結城のことになると感情が抑えられないのよ。私」


「………そうか」


 ピザを食べながら、結城の話を大人しく聞いたわ。


 中学三年生の頃にすれ違った夏の日のあれは、私の勘違いだったみたい。


 ……でも、そこから関係がこじれるようになった原因は結城にもあると思うのだけど。そんなことは今どうでもいいわね。


「ご、誤解も解けたことなんだし……結城」


「ん?」


「………………」


 い、言うのよ、私。


 もう一度付き合ってほしいって、ちゃんと結城に伝えるのよ。早く!


「こ、これでまた私たちお友達として、仲良くできそうね。結城」


 違うわよ。私のおバカさん! もう一度寄りを戻して、これからは一緒に暮らしましょうって伝えるのでしょう? 私〜!


「………お友達?…………そうか……そうだな。これからは、清く正しい隣人同士仲良くしていこうか。宵宮さん」


「へぅ!? 宵宮……さん?」


 なんだか結城の表情が怖いわ。それにそれに、なんだか冷たい態度だし。


 私の呼び方も変わってるじゃない! なにしてるのよ。私のおバカさ~ん!


「とりあえず。誤解も解けた、お友達として仲直りもできたと。宵宮さんも一人暮らしなんだよな?」


「ちょっと! なんでいきなり他人行儀な呼び方になってるのよ。結城! 怒るわよ!」


「いや、実際もう他人だろう。……いや、お友達だったか。悪いけど、これから買い物に行かないといけないんだ。帰ってもらっていいかな?」


「買い物? それなら一緒に行ってあげてもいいわよ。春休みで私、暇だもの。ピザも奢ってもらったし、ゴデュバのチョコレートアイスでもご馳走するわよ」


 久しぶりに結城と2人のデートになるものね。それにこのデートで結城の機嫌を直してもらうんだから。 


「……今日は遠慮しとく。じゃあ、そういうことで帰ってくれ」


「ちょ、ちょっと! なにするのよ! 私を部屋から追い出して何をする気なの?」


「買い物に行くんだよ。アホの子」


「だ、誰がアホの子よ!」


 背中を両手で押されてる。ジリジリと玄関口に追い込まれていってるわ。このままだと本当に追い出される。


 まずいは、このままだと結城に部屋から追い出されちゃう。抵抗しないと……


「ていうか、前よりも力強くなってるじゃない? 卑怯よ。結城」


「これでも鍛えてるからな。いいから一旦自分の部屋に帰れ。ハウスハウス」


「誰が犬よ!」



 も、元カノを犬扱いするなんて、なんて元カレなのかしら? 許せないわ。


「ま、まさか、私をさっさとこの部屋から追い出してさっきのツーバーリーツの女の子を連れ込むつもりなのね? それから(クンクン)……この椿の香水の匂い。とっくに女の子を連れ込んでるじゃない! 浮気者!」


「誰が連れ込むか! それに椿の香水の女の子は、ハウスキーパーで雇ったアルバイトのメイドさんだ!……あっ」


「メイド?……なに、自白してるのよ! ていうか、別れて数週間もしないうちに新しく女の子とフラグ立ててるんじゃないわよ。浮気者!!」


「いや、俺たち。別れたんだろう。……はぁ〜、分かった。スペアキーの合鍵渡しとくから、それで機嫌直してくれよ。アイシャ」


「あ、合鍵? い、いいの?」


「…………勿論だ。これで今日は帰ってくれ。買い物に行きたいんだ」


 結城はそう言って私に小さい鍵を渡してくれたわ。


 小さいね。まるで自転車のロックの鍵の形をしているわ。


「それじゃあ、さようなら。宵宮さん、また会う日までな」


「う、うん。また今晩にでもお邪魔させてもらうわね。結城、ありがとう」


「……できるといいけどな」


 いつの間にか部屋から追い出されていた私は、笑顔で手を振りながら結城の部屋から出ていったわ。


 ふふん〜♪ おバカさんね、結城。まさか元カノの私に合鍵を渡すなんて、これじゃあ寝込みを襲われても文句は言えないんだからね。


「あいつ。渡された合鍵の《《大きさや形》》も確認しなかったな。俺と仲直りできて浮かれてたのかな?……まさかな」



 

 その日の深夜。私は早速行動を開始したわ。



「ニャフゥ〜♪ 待ってなさいよ。結城〜♪ 久しぶりに元カノの添い寝をお見舞いしてあげるんだからね」


 結城に貰った合鍵を、結城の部屋の玄関ドアの鍵口に差し込んで……


ガチャッ!ガチャッ!ガチャッ!


「あ、あれ? 開かない?……てっ! これ、自転車のスペアキーじゃない! わ、私を騙したわね。結城〜!」


 その日の深夜、私は結城の部屋に侵入できなかったのだわ。とほほ。



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