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第35話

おはようございます。

今日明日と関東等台風が接近の予報。被害がありませんように。皆さまもどうか御安全にお過ごしください。

翌日。


僕たちは朝食を食べながら、第二階層にあったゴブリンの集落をどう攻略するか話し合っていた。


昨日見た限りでは普通のゴブリンだけではなく、武器を持ったゴブリンソルジャーにゴブリンメイジまで混ざっていて、数は少なくとも十匹以上。正面から三人で突っ込めば勝てる可能性はあるのかもしれないが、そんなものを試す気には到底なれない。


一匹ずつなら勝てる。


三匹でも昨日勝った。


だからといって十匹でも勝てるだろう、とはならない。


一対一で勝てる相手でも十人に囲まれれば普通にボコボコにされる。まして相手には剣も槍も魔法もあるのだ。


「というわけで、作戦会議を始めます。」


「ワン!」


「は〜い。」


テーブルの上には紙とボールペン、それから僕の記憶を頼りに描いたゴブリン集落の簡単な見取り図を置いてある。


そして何故か、その横にコーヒーとプリン。


二郎丸の前にはジャーキー。


るかにの前にはイチゴ。


「……何だろう。」


「どうしたワン?」


「会社の会議より楽しそうだなと思って。」


僕が昔参加していた会議には、プリンもジャーキーもイチゴも出てこなかった。


もっとも、犬とハリネズミも出席していなかったけど。


「まず昨日見た感じだと、ゴブリンは最低でも十匹くらい。」


紙へ丸を書く。


「普通のゴブリンが……五匹くらいだったかな。それからゴブリンソルジャーが三匹か四匹、ゴブリンメイジが一匹。」


「いっぱいだワン。」


「いっぱい〜。」


「そう。だから正面から戦うのは無し。」


二郎丸が前足を上げた。


「はい、二郎丸君。」


「全部まとめて倒すワン!」


「今、正面から戦うのは無しって言ったよね?」


「正面じゃなくて横から行くワン!」


「そういう意味じゃない。」


「後ろからならいいワン?」


「場所の問題じゃないんだよ。」


二郎丸は納得出来ないらしく首を傾げている。


「だってオイラ速いワン。こうやってビューンって走って、ゴブリンをババババって倒すワン!」


「ババババのところを詳しく説明してください。」


「そこは勢いだワン!」


「却下。」


「早いワン!」


「作戦になってないから。」


二郎丸が不満そうにジャーキーを齧る。


「じゃあご主人はどうするんだワン?」


「一匹ずつ誘い出す。」


「どうやって?」


「そこを今から考えるんです。」


「考えてないワン。」


「だから会議してるんでしょ。」


するとイチゴを食べていたるかにが、ゆっくり前足を上げた。


「はい、るかに君。」


「イチゴもう一個〜。」


「作戦じゃなかった。」


「食べたら考える〜。」


「しょうがないなぁ。」


もう一個渡す。


モグモグ食べる。


待つ。


「……。」


「……ワン。」


「……。」


モグモグ。


「るかに?」


「美味しい〜。」


「感想じゃなくて。」


「もう一個〜。」


「会議を利用してイチゴ増やそうとしてない?」


「えへへ〜。」


賢くなったなぁ。


変な方向に。


「イチゴは後。何かいい方法ない?」


るかには少し考えてから、僕が描いた見取り図を見る。


「ゴブリン〜ここにいるの〜?」


「うん。」


「シュウ君たちは〜ここから来るの〜?」


「そうだね。」


るかにが小さな前足で入口付近を指す。


「じゃあ〜ここにゴブリン来てもらえばいいんじゃない〜?」


「だから、それをどうやって……。」


言い掛けて止まった。


るかには普通の顔をしている。


「毛針〜。」


「……え?」


「遠くからチクってする〜。」


僕は見取り図を見る。


集落。


岩場。


通路。


そして、るかに。


「あ。」


二郎丸も何か気付いたらしい。


「るかにがゴブリンのお尻に毛針を刺すんだワン!」


「何でお尻限定なの。」


「痛いから追ってくるワン!」


「いや……でも。」


考えてみる。


理屈は合っている。


るかにの毛針はかなり遠くまで届く。昨日の戦闘を見る限り、距離があり過ぎると威力も命中率も落ちるが、倒す必要はない。


一匹に当てればいい。


怒らせて追わせる。


こちらは岩陰へ隠れる。


ゴブリンはるかにを追って集落から離れる。


そこを三人で囲む。


「……これ、いけるんじゃない?」


「オイラもそう言ったワン!」


「言ってない。」


「横から行くって言ったワン!」


「全然違う。」


「似てるワン!」


「似てない。」


るかにが前足を上げる。


「イチゴ〜。」


「はい、軍師殿。」


「わ〜い。」


今日の作戦が決まった。


我が家で一番賢いのは、どうやらハリネズミらしい。


・・・


第101ダンジョン第二階層。


昨日と同じ階段を下り、僕たちはゴブリン集落の少し手前まで来ていた。


第一階層にはやはり魔物が再出現しておらず、階層主の部屋も空っぽのままだった。少なくとも短期間で再生成されるわけではないらしい。


「二郎丸。」


「ワン。」


「お腹大丈夫?」


「大丈夫だワン!」


「今日は鳴らさないでよ。」


「昨日は卵焼きが足りなかったんだワン。」


「今日は朝ご飯いっぱい食べたでしょ。」


「食べたワン。」


「じゃあ大丈夫だね。」


「唐揚げならまだ入るワン。」


「聞いてない。」


るかにが小声で言う。


「プリンも入る〜。」


「君も聞いてない。」


緊張しているはずなのに、どうして食べ物の話になるんだ。


でも。


悪くない。


僕も昨日よりずっと落ち着いている。


岩陰から集落を覗く。


いた。


昨日とほぼ同じ。


普通のゴブリンが五匹。


武器持ちが四匹。


メイジ一匹。


合計十匹。


「増えてないね。」


「十匹だワン。」


「いっぱい〜。」


「じゃあ作戦通り。まず普通のゴブリンから。」


るかにが前へ出る。


「届く?」


「たぶん〜。」


「無理に倒さなくていいよ。一匹に当てるだけ。」


「どこに〜?」


「どこでもいい。」


横から二郎丸が囁く。


「お尻だワン。」


「お尻〜?」


「るかに、二郎丸の話聞かなくていいから。」


「お尻狙う〜。」


「何で採用するの。」


るかにの背中から数本の針が浮き上がる。


狙う。


集落の端にいるゴブリン。


距離は二十メートル以上。


「毛針〜。」


シュシュシュッ!


飛んだ。


一本。


二本。


外れる。


三本目。


プスッ。


「ギャッ!?」


刺さった。


お尻に。


「本当に当てた!」


「やったワン!」


「お尻〜。」


ゴブリンが振り返る。


こちらを見る。


正確には、岩陰から顔を出しているるかにを見る。


「ギギャァ!」


怒った。


走ってくる。


「るかに下がって!」


「は〜い。」


るかにが僕のところまで戻る。


ゴブリンが岩陰を回り込んだ。


そこには。


僕。


二郎丸。


るかに。


三人。


「ギ?」


ゴブリンが止まった。


何となく。


「あ。」


と言ったような顔をした。


「……ごめんね。」


「ワン!」


「毛針〜。」


三対一。


二十秒ほどで終わった。


「……。」


黒い煙になるゴブリンを見ながら、僕は少し複雑な気持ちになる。


「何だろう。凄く悪いことしてる気分。」


「魔物だワン。」


「そうなんだけどね。」


「次〜。」


軍師殿は気にしていない。


二匹目。


毛針。


プスッ。


「ギャッ!」


追ってくる。


三対一。


終了。


三匹目。


「毛針〜。」


外れた。


「もう一回〜。」


プスッ。


「ギャァ!」


終了。


「……簡単だな。」


昨日まであんなに苦労していたのは何だったんだ。


「オイラたち強いワン!」


「強いというか、ずる賢くなった気がする。」


「賢いワン!」


「物は言いようだね。」


四匹目を倒したところで異変が起きた。


「ギギャ?」


集落のゴブリンたちが騒ぎ始めた。


「まずい。」


さすがに気付いたらしい。


仲間が一匹ずつ出掛けて戻ってこない。


ゴブリンでも不審に思うようだ。


「どうするワン?」


「もう一匹だけ。」


残っている普通のゴブリンを狙う。


るかにが顔を出す。


「毛針〜。」


シュッ!


外れた。


「もう一回〜。」


シュッ!


「ギャッ!」


当たった。


しかし。


「ギャァァァ!」


そのゴブリンが叫んだ。


集落全体がこちらを見る。


「あ。」


「バレたワン。」


「バレた〜。」


「逃げる?」


「逃げるワン?」


「……いや。」


残り六匹。


普通のゴブリン一匹。


ソルジャー四匹。


メイジ一匹。


さっきまでの十匹とは違う。


「やれるかも。」


僕は木刀を抜いた。


「ただし、ここで戦わない。昨日の広い場所まで下がる。」


「ワン!」


「は〜い。」


走る。


背後からゴブリンたちが追ってくる。


でも全員同じ速度じゃない。


普通のゴブリンが一番速い。


次に剣を持ったソルジャー。


槍。


盾。


最後に。


「メイジ遅い!」


「お爺ちゃんだからだワン!」


「違うと思う!」


狙い通り。


勝手に分かれてくれた。


広い場所へ出る。


普通のゴブリンが最初に来る。


「二郎丸!」


「ワン!」


体当たり。


僕が木刀。


るかにが毛針。


すぐ終わる。


次。


剣持ち。


「ご主人、右だワン!」


「分かってる!」


剣を避ける。


木刀を手首へ。


ゴッ!


剣が落ちる。


「二郎丸!」


「噛み付きだワン!」


足へ。


倒れる。


「るかに!」


「お尻〜。」


「もうそこじゃなくていい!」


毛針が背中へ刺さる。


終了。


次は槍。


昨日なら怖かった。


今も怖い。


でも。


動きが分かる。


「突いてくる!」


半歩横。


槍が通過。


木刀で柄を叩く。


二郎丸が横から入る。


るかにが毛針。


倒す。


「次!」


「盾だワン!」


「分かってる!」


「実況だワン!」


「実況いらない!」


戦っているのに。


何故か喋っている。


昨日まではそんな余裕なんてなかった。


攻撃を見る。


避ける。


仲間を見る。


声を掛ける。


それが少しずつ自然になっている。


盾持ちが僕へ突っ込む。


「二郎丸、後ろ!」


「ワン!」


僕が正面。


二郎丸が後ろ。


ゴブリンが迷う。


「るかに!」


「真ん中〜。」


「真ん中?」


毛針。


プスプスプスッ。


「ギャァァ!」


なるほど。


真ん中だった。


どことは言わない。


「るかに……。」


「当たった〜。」


「うん。凄く効いてる。」


二郎丸が何故か後ずさる。


「怖いワン。」


「僕もちょっと怖い。」


「何で〜?」


「何でもない。」


盾持ち終了。


残り二匹。


斧持ちソルジャー。


そしてメイジ。


「ここから注意!」


「ワン!」


斧持ちが来る。


その後ろ。


ゴブリンメイジの杖が赤く光る。


「火球!」


「散って!」


三人が左右へ分かれる。


火球が床へ。


ドォン!


熱い。


でも昨日経験している。


怖いけれど、もう未知ではない。


「メイジのMP削るよ!」


「オイラ走るワン!」


「五メートル以内禁止!」


「分かってるワン!」


二郎丸が横へ走る。


メイジが杖を向ける。


火球。


外れる。


その間に僕は斧持ちと戦う。


ガンッ!


木刀と斧。


重い。


「ぐっ!」


押される。


でも。


「昨日より軽い!」


一度経験した相手だ。


力比べしない。


流す。


避ける。


手首。


ゴッ!


斧が落ちる。


「るかに!」


「毛針〜!」


斧持ちの顔へ。


「ギャッ!」


怯む。


「二郎丸!」


「今忙しいワン!」


「そうだった!」


二郎丸はメイジの火球から逃げていた。


「自分でやる!」


踏み込む。


木刀。


一撃。


二撃。


斧持ちが黒い煙へ変わる。


「あと一匹!」


メイジ。


「ご主人! いっぱい撃たせたワン!」


「何発!?」


「分からないワン!」


「数えてよ!」


「走るので忙しかったワン!」


そりゃそうか。


鑑定。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【ゴブリンメイジ】


Lv8


HP:41/41


MP:8/32


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「残り八!」


「少ないワン?」


「少ない!」


火球一発。


魔力弾一発。


それでゼロ。


「るかに、撃てる?」


「まだ撃てる〜。」


「じゃあ僕と二郎丸が左右から行く。るかには後ろから援護。」


「ワン!」


「は〜い。」


三人で動く。


ゴブリンメイジが迷う。


僕。


二郎丸。


どちらを狙う。


「ギギャァ!」


僕だった。


「何で僕!?」


火球。


横へ飛ぶ。


熱風。


「今だワン!」


二郎丸が走る。


ゴブリンメイジが杖を向ける。


白い光。


魔力弾。


「二郎丸!」


「ワン!」


横へ。


外れた。


MPゼロ。


「行ける!」


僕も走る。


二郎丸が先に到着。


「体当たりだワン!」


ドンッ!


ゴブリンメイジが転ぶ。


「るかに!」


「毛針〜!」


ドドドッ!


「ギャァ!」


「僕!」


木刀。


ゴンッ!


黒い煙。


終わった。


「……。」


静かになった。


三人で周囲を見る。


いない。


「終わり?」


「気配ないワン。」


「終わった〜。」


「……本当に?」


二郎丸が集落の方へ行き、しばらくして戻ってくる。


「誰もいないワン!」


「やった?」


「やったワン!」


「やった〜!」


思っていたより。


ずっと簡単だった。


もちろん疲れた。


怖かった。


火球だって飛んできた。


一歩間違えれば怪我もする。


でも昨日のゴブリンウォリアー戦ほど苦しくなかった。


「作戦って大事だね。」


「オイラの作戦だワン!」


「違う。」


「るかにの〜。」


「そう。今日はるかにがMVP。」


「えむぶいぴ〜?」


「一番頑張った人。」


「るかに一番〜?」


「そう。」


「オイラは?」


「二番。」


「ご主人は?」


「三番かな。」


「昨日と同じだワン!」


「うるさい。」


るかには嬉しそうに僕の足元をくるくる回っている。


「一番〜。るかに一番〜。」


「はいはい。」


「ご褒美〜。」


止まった。


「……何がいい?」


「プリン〜。」


やっぱり。


「帰ったらね。」


「大きいの〜。」


「普通の。」


「大きいの〜。」


「じゃあちょっと大きいの。」


「わ〜い。」


二郎丸が前足を上げる。


「オイラもMVPになりたいワン!」


「じゃあ次頑張って。」


「頑張るワン! 唐揚げだワン!」


「君たちのMVP、食べ物しかないの?」


そんな話をしながら、僕たちはゴブリンの集落を調べ始めた。


近くで見ると本当に簡素なものだった。


焚き火。


粗末な木箱。


動物の皮らしきもの。


石や木で作った器。


「生活してたんだな。」


少し変な気分になる。


ただ配置された敵じゃない。


少なくとも、生活らしきことをしていた。


木箱を開ける。


中には。


「……何これ。」


赤黒い塊。


鑑定。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【干し肉】


ゴブリンが保存用に加工した肉。


原材料:不明


食用可能。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「食用可能……。」


二郎丸が来た。


「肉だワン!」


「ダメ。」


「まだ何も言ってないワン!」


「食べる顔してる。」


「一口だけだワン。」


「原材料不明だよ。」


「肉は肉だワン!」


「ダメ。」


「ケチだワン。」


これは持って帰る気にもならない。


その隣の箱。


今度は小さな石。


いや。


「魔核?」


五個ほど入っている。


鑑定。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【魔核・微小】


低位魔物から生成された魔力結晶。


蓄積魔力量は極めて少ない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ゴブリンも魔核を集めるのか。」


これは面白い。


何に使うのか。


メイジが使う?


それともダンジョン内で何か用途がある?


分からない。


「持って帰ろう。」


袋へ入れる。


さらに集落の奥を調べると、岩壁の向こうに細い通路があった。


「道あるね。」


「行くワン?」


「うーん。」


時計を見る。


まだ昼過ぎ。


体力も残っている。


るかにのMPだけは少し気になる。


「今日はもう少しだけ行ってみようか。ただし強い敵が出たら戻る。」


「ワン!」


「行く〜。」


通路へ入る。


今までより狭い。


少し進むと下り坂になり、その先から水音が聞こえてきた。


「やっぱり水あるね。」


「川だワン!」


二郎丸の尻尾が上がる。


「泳がないよ。」


「まだ何も言ってないワン!」


「三回目だよ、それ。」


通路を抜ける。


そして。


「うわ……。」


本当に川だった。


地下とは思えない広い空間。


天井は高く、淡い青色に光る苔のようなものが岩肌を照らしている。その中央を幅五メートルほどの川が流れていた。


向こう岸にも道が続いている。


ただし。


橋がない。


「どうやって渡るんだろ。」


水深も分からない。


流れも結構ある。


「オイラ泳げるワン!」


「ダメ。」


「まだ何も――」


「言ってないワン、でしょ。」


「先に言われたワン……。」


二郎丸が悔しそうだ。


るかには川をじっと見ている。


「どうしたの?」


「魚いる〜。」


「え?」


見る。


確かに。


青白い水の中。


何かが動いた。


結構大きい。


「魚?」


「魚だワン!」


二郎丸が川へ近付く。


「待って。」


嫌な予感がする。


鑑定。


水の中を動く影へ意識を向ける。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【ケイブピラニア】


Lv6


地下水域に生息する肉食性魔物。


群れで獲物を襲う。


鋭い歯を持ち、血の匂いに敏感。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……。」


二郎丸の首根っこを掴む。


「何するワン?」


「戻って。」


「魚だワン。」


「ピラニア。」


「ピラニアだワン?」


「肉食。」


「……。」


二郎丸が水面を見る。


水面の下を影が一つ。


二つ。


三つ。


五つ。


十。


「……帰るワン。」


「うん。」


「今日は帰ろ〜。」


三人揃って一歩下がる。


今日の僕たちは賢い。


ちゃんと学習している。


無理なものには手を出さない。


「でも向こう岸に行かないとダメだよね。」


「どうするワン?」


「次までに考える。」


るかにが川を見る。


そして。


「毛針いっぱい落としたら〜魚いなくなるかな〜?」


僕はるかにを見る。


川を見る。


もう一度るかにを見る。


「……軍師殿。」


「な〜に?」


「次回もお願いします。」


「プリン〜。」


「成功したらね。」


「大きいの〜。」


「だから普通の。」


「大きいの〜。」


「……ちょっと大きいの。」


「わ〜い。」


二郎丸が僕を見る。


「ご主人。」


「何?」


「オイラも作戦考えるワン。」


「お、いいね。」


「川に唐揚げ投げるワン。」


「……。」


「魚が唐揚げ食べてる間に渡るワン!」


「却下。」


「何でだワン!?」


「僕たちまで食べられるから。」


「じゃあ唐揚げいっぱい投げるワン!」


「そういう問題じゃない。」


今日のところは、やっぱり我が家の軍師は一匹だけで良さそうだった。

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