第28話
スーパーでアイスを買い込み、三人で仲良く食べながら家へ帰る頃には、空はすっかり群青色へと変わっていた。
夕食は簡単にカレーライスにした。疲れた日はカレーに限る。鍋いっぱいに作ったつもりだったのに、二郎丸がおかわりを三回、るかにが二回した結果、ほとんど残らなかった。
「二人ともよく食べるね。」
「いっぱい戦ったワン!」
「お腹ぺこぺこだったの〜。」
食後にお風呂へ入り、洗濯機を回し、ようやく一息つく。時計を見るとまだ九時前だった。
「今日はステータス見ようか。」
「ワン!」
「見る〜。」
居間の座卓に三人で並んで座り、まずは僕から確認することにした。
「ステータス。」
「ぼや〜。」
半透明のウィンドウが目の前に浮かび上がる。
名前:クワナ シュウ 性別:男 職業:冒険者 レベル:5(3→5)
HP:71 MP:34 SP:8
力:13(11→13)
体力:10(9→10)
かしこさ:12(11→12)
素早さ:10(9→10)
器用さ:14(12→14)
魅力:10 運の良さ:85(80→85)
固有スキル: 「従魔の気持ち」「精神耐性」「世界を変えた者」「鑑定」
スキル: 「罠感知1」「剣術2」
称号: 「備えし者」
「おっ。」
剣術がレベル2になっている。
「やっぱり木刀を振って戦うと上がるんだ。」
鑑定を見てみたが、まだレベルは1のままだった。今日は戦闘中にほとんど使っていないから当然と言えば当然だ。
「ご主人〜、どうだったワン?」
「剣術が少し上がったくらいかな。あとはステータスが全体的に少しずつ伸びてる。」
「じゃあオイラも見るワン!」
二郎丸も胸を張ってステータスを開く。
名前:二郎丸(柴犬) 性別:男 職業:桑名家の忍犬見習い レベル:5(3→5)
HP:58 MP:31 SP:8
力:11
体力:10
かしこさ:16
素早さ:20
器用さ:8
魅力:30
運の良さ:16
固有スキル: 「シュウの加護」「忍犬」
スキル: 「噛み付き2」「気配察知1」「遠吠え1」
忍犬: 「軟化2」
「素早さがもう20か。」
「オイラ速いワン!」
実際、今日のムカデ戦でもかなり動きが速くなっていた。軟化もレベル2になっているから、体の柔軟性もかなり上がっているのだろう。
「でも噛み付きは2になったけど、それ以外はまだなんだね。」
「遠吠えいっぱいやったのにワン……。」
「熟練度が結構必要なのかもね。」
「ワン……。」
少ししょんぼりしている。
「でも素早さ20はかなり凄いよ。」
「本当だワン?」
「本当。」
「やったワン!」
立ち直りが早い。
「次はるかにだね。」
「は〜い。」
るかにも前足をぴょこんと上げてステータスを開いた。
名前:るかに(ハリネズミ) 性別:女の子 職業:桑名家のまほ〜使い レベル:5(3→5)
HP:55 MP:45 SP:8
力:4
体力:7
かしこさ:29
素早さ:10
器用さ:12
魅力:41
運の良さ:28
固有スキル: 「シュウの加護」「ハリネズミまほ〜」
スキル: 「丸くなる1」「トゲトゲ1」「バランス感覚1」
ハリネズミまほ〜: 「毛針2」
「かしこさ29……。」
「高いの〜?」
「めちゃくちゃ高い。」
毛針2の威力を考えると納得ではあるが、それでも凄い。
「スキルはあまり上がってないけど、ちゃんと強くはなってるね。」
「えへへ〜。」
三人ともSPが8ポイント貯まっていた。
「今日はどう振ろうかな。」
少し考える。
僕は前衛に出ることも増えてきたので、HPと器用さを伸ばしたい。
二郎丸は前衛だから力と体力。
るかには後衛だからHPとかしこさ。
「よし、こんな感じでどう?」
二人に説明すると、
「お任せだワン!」
「私も〜。」
といういつもの返事が返ってきた。
僕はHPに4ポイント、器用さに4ポイント。
二郎丸は力に5ポイント、体力に3ポイント。
るかにはHPに4ポイント、かしこさに4ポイント。
ポイントを振り終えた三人は何となく満足そうな顔をしていた。
「なんか強くなった気がするワン!」
「気がするじゃなくて強くなってるよ。」
「よ〜し、オイラもっと修行するワン!」
「今日はもう寝なさい。」
「ワン。」
返事だけは素直だった。
二人が布団へ向かったあと、僕は居間のパソコンを開いた。
Qちゃんを覗いてから寝ようと思っただけだった。
しかしトップページを見た瞬間、思わず目を見開いた。
【速報】政府、例の鉱石について『調査中』とだけ発表
【考察】ダンジョン予言、ガチで政府が動いてる件
【画像】山の異変報告スレ Part12
【備蓄】お前ら何買った?
【ダンジョン】もし本当に出現したら何職選ぶ?
「Part12……。」
昨日Part5くらいじゃなかった?
恐る恐るスレを開く。
1 名前:名無し
政府が『現在専門機関で調査中』って発表したぞ
2 名前:名無し
あの短いコメント逆に怖い
3 名前:名無し
否定しないってことは何かあるんじゃね?
4 名前:名無し
普通なら『悪質ないたずらでした』で終わるよな
5 名前:名無し
それな
6 名前:名無し
大学関係者だけど教授が急に東京出張になった
7 名前:名無し
うちの叔父自衛隊だけど今日から待機命令出たらしい
8 名前:名無し
ソースは?
9 名前:名無し
ソースは叔父
10 名前:名無し
解散
11 名前:名無し
でも最近そういう話多くね?
12 名前:名無し
うちも警察の知り合いが慌ただしいって言ってた
13 名前:名無し
デマかもしれんが全部同じ方向なんだよな
14 名前:名無し
偶然にしては揃いすぎてる
15 名前:名無し
これもう何か起きる前触れだろ
16 名前:名無し
俺は信じない
17 名前:名無し
俺も半信半疑
18 名前:名無し
でも水と米だけは買った
19 名前:名無し
賢い
20 名前:名無し
何も起きなくても食うだけだからな
21 名前:名無し
災害対策と思えば損しない
22 名前:名無し
お前らトイレットペーパー買うなよ
23 名前:名無し
お約束だから
24 名前:名無し
また紙が消えるのか
25 名前:名無し
近所のホームセンターで保存水売り切れてた
26 名前:名無し
マジ?
27 名前:名無し
マジ
28 名前:名無し
早いな
29 名前:名無し
ネット見た奴らが動き始めたんだろ
30 名前:名無し
終末ビジネス始まったな
31 名前:名無し
山の異変報告まとめ
北海道:鹿の群れが移動
長野:猿が消えた
岐阜:猪が住宅街
千葉:熊目撃
福岡:鳥の渡り変化
32 名前:名無し
千葉の熊はガチ
33 名前:名無し
最近ニュースでも見た
34 名前:名無し
いや待て、熊は普通に怖い
35 名前:名無し
魔物より先に熊対策しろ
36 名前:名無し
確かに
37 名前:名無し
例の送り主って何者なんだよ
38 名前:名無し
未来人
39 名前:名無し
異世界帰り
40 名前:名無し
国家機密漏らした一般人
41 名前:名無し
善意の一般人だったら逆に怖い
42 名前:名無し
「世界滅びます」って手紙送る善意の一般人
43 名前:名無し
想像したら笑う
44 名前:名無し
でももし本当だったら英雄だよな
45 名前:名無し
まだ笑い話で済んでるうちが花
46 名前:名無し
それ言うな
47 名前:名無し
なんか急に怖くなってきた
48 名前:名無し
俺、明日備蓄してくる
49 名前:名無し
保存食おすすめある?
50 名前:名無し
缶詰、パスタ、米、塩、砂糖、乾麺、カセットボンベ
51 名前:名無し
ありがとう
52 名前:名無し
なんか防災スレになってきたな
53 名前:名無し
それでいい
54 名前:名無し
何も起きなければ笑って終われる
55 名前:名無し
頼むから笑って終わらせてくれ
画面を閉じる。
「少しずつ変わってきてるな……。」
昨日までは半分ネタだった。
今日は違う。まだ誰も信じ切ってはいない。
でも、誰も完全には笑えなくなっていた。
部屋の明かりを消す。
布団へ入ると、いつものように二郎丸が右側へ、るかにが左側へ潜り込んできた。
「おやすみだワン。」
「おやすみ〜。」
「おやすみ。」
外では虫が鳴いている。暑い・・・。
世界は静かに動き始めていた。
だけど今夜も、この小さな家だけは穏やかな時間が流れていた。暑いけど・・・。




