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第25話

遅くなってすいませんでした。

その日の夜。


焼肉をたらふく食べてお風呂にも入り、二郎丸は既に僕の布団の上でへそ天になっていた。

るかには僕の枕を半分占領している。まだ夜の九時なのに二人とも眠そうだ。子供か。いや、子供だった。精神年齢的には完全に子供だよね。


お風呂を終えた僕は麦茶を片手にパソコンの前へ座った。


今日は裏山ダンジョンで久しぶりに戦った。

ダンゴムシ相手とはいえ、前よりずっと余裕があったし、二郎丸もるかにも確実に強くなっている。


でも、その分だけ気になることも増えていた。

ダンジョン。

魔物。

そして九十日という期限。


少しだけ現実逃避したくなって、いつものように九ちゃんねるを開く。すると今日もトップページが大変なことになっていた。



【速報】謎の鉱石、ついに海外メディアでも報道される


【考察】ダンジョン予言って本物なんじゃね?


【画像】例の鉱石、どう見てもゲームのアイテム


【急募】世界が終わる前にやっておくこと


「増えてる……。」

昨日よりスレが増えている。恐る恐る開いてみた。



1 名前:名無し


もう世界中でニュースになってるぞ。

日本政府がコメント出さないから余計に怪しまれてる。



5 名前:名無し


あの石の見た目、完全にRPGの魔石なんだよな。

ゲームやり過ぎって言われそうだけど、あんな都合よく紫色に光る石なんて現実にあるか?



8 名前:名無し


大学で鉱物学やってるけどマジレスすると存在しない。

画像だけならCGと言われても納得するレベル。



12 名前:名無し


でも政府が本気で調査してるんだろ?

それだけでもう普通じゃない。



18 名前:名無し


仮にダンジョンが本当に出るなら会社辞めて冒険者になるわ。



20 名前:名無し


だからお前はまず就職しろ。



27 名前:名無し


真面目な話すると、もし魔物とか出たら警察で対処できるの?

熊一頭でも大騒ぎなのに。



35 名前:名無し


自衛隊が戦車出して終わりだろ。



41 名前:名無し


ゲーム脳ですまんが、もし物理効かない系だったらどうするんだ?



43 名前:名無し


やめろ。

夜眠れなくなる。



56 名前:名無し


俺オカルト好きなんだけどさ。

最近うちの猫がずっと窓の外見てるんだよ。

なんか関係あるかな。



60 名前:名無し


猫はいつも何か見てる。



61 名前:名無し


猫「人類終わるにゃぁ……」



62 名前:名無し


猫「備蓄しとくにゃ」



63 名前:名無し


猫賢すぎて草。



79 名前:名無し


俺、田舎なんだけど最近マジで山が騒がしい。

鹿が昼間から出てくるし猿も増えた。

いつもと違う感じがする。



82 名前:名無し


うちもだ。

猪が住宅街まで下りてきた。



90 名前:名無し


ちょっと待て。

そういう報告増えてないか?



91 名前:名無し


増えてる。



92 名前:名無し


増えてるな。



93 名前:名無し


やめろ怖くなる。



110 名前:名無し


もし本当に何か起きるなら今のうちに水と食料だけは買っといた方がいいかもな。

何も起きなかったら普通に食えばいいだけだし。



111 名前:名無し


これ。

災害対策だと思えば無駄にならん。



117 名前:名無し


保存食とカップ麺買ってくる。



121 名前:名無し


俺もトイレットペーパーだけ買っとくわ。



122 名前:名無し


お前らすぐトイレットペーパー買うのやめろ。



134 名前:名無し


結局のところ、これを送った奴が何者なのかなんだよな。



140 名前:名無し


未来人説。



141 名前:名無し


異世界転生者説。



142 名前:名無し


厨二病説。



143 名前:名無し


俺は善意の一般人説を推す。



144 名前:名無し


そんな一般人いてたまるか。



「……。」


麦茶を飲みながら画面を見る。

思った以上に勘の良い人が増えてきている。まだ誰も真実には辿り着いていない。だけど確実に違和感を覚え始めている。

そして少しだけ驚いた。


備蓄を勧める人が増えていることだ。

危機の匂いを嗅ぎ取る人はちゃんといるんだな。


「……。」


その時だった。

「ご主人ー!」

「シュウ君〜!」

後ろから二人の声が聞こえる。振り返ると、二郎丸とるかにが布団を引きずりながらやって来た。


「今日は一緒に寝るワン!」

「川の字で寝るの〜。」

「えっ。」

「ダメ?」

「……。」


上目遣いで見られる。

ズルい。とてもズルい。


「……いいよ。」

「やったワン!」

「わ〜い。」


世界では今この瞬間も、政府や研究者が頭を抱え、ネットでは終末論が飛び交い始めている。


だけど僕の家だけは。今日もいつも通りだった。

二郎丸は僕の右側。

るかには左側。

そして僕は真ん中。


「狭い……。」

「安心するワン。」

「ぽかぽか〜。」


二人の体温が妙に心地いい。

窓の外では虫の鳴き声が聞こえていた。世界は少しずつ変わり始めている。

だけど今だけは。この小さな幸せを、もう少しだけ味わっていたいと思った。

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