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第24話

翌朝。

目が覚めると窓の外は既に明るくなっていた。


昨夜は二郎丸とプリンを巡る攻防戦が長引き、結局半分ほど食べられてしまったのだが、本人は全く反省していなかった。

むしろ朝から元気いっぱいである。

「ご主人!朝だワン!」

「気持ちの良い朝だね。」

「今日はダンジョン行くワン!?」

「うん行くよ。」


「ワォォォォン!!」

 

朝っぱらから遠吠えを上げるのはやめて欲しい。

近所の人が心配するし近所迷惑だよ。

するとるかにも眠そうに目を擦りながら居間へやって来た。

「おはよ〜。」

「おはよう。」

「今日は〜ダンジョン〜?」


「うん。今日は実戦の日だね。」

るかにの目が少しだけ真剣になる。

二郎丸も嬉しそうではあるが、前回のゴブリン戦以降は無茶をしなくなっていた。あの戦いで自分達だけでは勝てない相手がいるかも知れない事を理解したのだろう。

朝食を済ませると三人で裏山へ向かう。


五月の山は緑が濃く、朝露を含んだ葉が陽の光を反射していた。空気は澄み、鳥の鳴き声がそこかしこから聞こえてくる。

とても穏やかで平和な朝。これからダンジョンへ入ろうとしているとは思えないほどに。

裏山ダンジョンへ到着すると僕は木刀を握り直した。

白銀色へ変化した霊剣は今日も静かに輝いている。

「よし。今日は無理しない。危なくなったらすぐ逃げる。」

「ワン!」

「は〜い。」


三人で階段を下りる。

石造りの通路は相変わらず薄暗く、少しひんやりしていた。

罠感知を発動しながら慎重に進んでいく。しばらく歩いた所で二郎丸が鼻をひくひくさせ始めた。

「ご主人。」

「どうしたの?」

「いるワン。」


僕も耳を澄ませる。

カサカサという音。何かが壁際を動いている。

現れたのはダンゴムシ型の魔物だった。以前戦った相手と同じ種類である。

だが今回は違った。

「二郎丸。」

「ワン!」

二郎丸が飛び出す。

以前なら恐る恐る近付いていたのに、今は迷いが無い。ダンゴムシが丸まるより早く噛み付きが発動した。


ガギィッ!!硬い外殻に牙が食い込み、そのまま横へ振り回す。

「おぉ!」

思わず声が出る。強い。前より明らかに強い。

そこへ、るかにの毛針が飛んだ。

ドドドドドッ!

針が同じ場所へ集中して突き刺さり外殻に亀裂が走る。

「今だ!」

僕も木刀を振り下ろした。

ゴンッ!!

鈍い音と共に魔物が砕け散り、黒い煙となって消えていく。

三秒。戦闘時間はたったの三秒だった。


「・・・。」

「・・・。」

「ご主人!」

「うん。」

「楽勝だワン!」

確かに楽勝だった。以前は命懸けだった相手が今では訓練用の木人みたいになっている。

成長している。特に二人が物凄い勢いで成長している。


それから二時間ほど探索を続けた。

ダンゴムシ。巨大ムカデ。角ウサギ。


何種類かの魔物と遭遇したが、以前ほど苦戦する事は無かった。

二郎丸が前衛。

僕が中衛件兼補助。

るかにが後衛。

役割も自然と固まり始めている。特にるかにの毛針は恐ろしかった。本人は相変わらずのんびりしているのに威力だけはどんどん上がっている。まさに砲台。絶対に怒らせてはいけない。

 

探索を終えて外へ出る頃には昼を過ぎていた。心地良い疲労感がある。レベルも少し上がったらしく体も軽い。

「お腹空いたワン。」

「空いた〜。」

「今日は何食べたい?」


二人は顔を見合わせた。そして同時に叫ぶ。

「「お肉!!」」

即答だった。そんなに魚が嫌だったのだろうか。少しだけショックだ。


その頃――

防衛省では全く別の意味で疲労が蓄積していた。

魔核の解析チームは二十四時間体制へ移行し、警察庁では桑名秀に関する調査報告書が既に数十ページを超えている。

だが肝心の結論は変わらない。分からない。何一つ分からない。

唯一分かった事は、送り主が危険人物ではなく真面目で人当たりが良いという事だけだった。


報告書を読んだ担当官が思わず呟く。

「この人、本当に何者なんだ・・・。」

その疑問に答えられる者は誰もいなかった。


そして当の本人はというと。

「それじゃあ今日は焼肉にしようか。」

「ワン!!」

「やった〜。」


世界の未来を左右するかもしれない人物達が、わいわい夕飯の献立を話しながら軽トラックを軽快に走らせてた。

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